睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年10月27日読了目安時間: 5

【医師監修】自律神経失調症による日中の眠気|原因と5つの改善方法を徹底解説

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

日中の眠気に悩まされ、仕事や勉強に集中できないとお困りではありませんか。その症状はもしかすると自律神経失調症が原因かもしれません。日本では推定約5%の650万人が潜在的にこの問題を抱えている可能性があります*1 この記事を読むと以下のことが分かります。

  • 自律神経失調症とは?
  • 自律神経の乱れが引き起こす眠気のメカニズム
  • 自律神経失調症による日中の眠気のセルフチェック方法
  • 自律神経失調症による眠気を改善するための具体的な対策

自律神経失調症とは?

私たちの体の内側では普段から自律神経(活動する時に働く「交感神経」とリラックスする時に働く「副交感神経」の2つの神経)が自動的に働いて、心拍・血圧・体温・消化・睡眠などを無意識のうちにコントロールしています。自律神経失調症はこの交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、全身にさまざまな不調が現れる状態を指します。ストレス、生活リズムの乱れ、ホルモン変動、過労などが原因となり、切り替えがうまくいかなくなると、動悸・めまい・頭痛・不眠・倦怠感など多彩な症状が現れます。検査をしても明確な異常が見つからないことが多く、心身のバランスの乱れとして総合的なケアが必要とされます。

 

自律神経失調症で眠くなる3つの原因とメカニズム

日中の耐えがたい眠気は、仕事や生活の質を大きく低下させます。「なぜこんなに眠いのか」と悩んでいるなら、その原因自律神経失調症にあるかもしれません。自律神経失調症で眠くなる3つの原因とそのメカニズムを詳しく解説します。

1. 脳の血流低下による慢性的な眠気の可能性

自律神経は血管を縮めたり広げたりすることで全身の血流を調整する重要な役割を担っています。自律神経失調症になると、このコントロール機能が乱れ、脳への血流が不安定になることがあります。 原因がはっきりしない不調(不定愁訴)としては、動悸・めまい・頭痛・全身倦怠感などがみられることがあります。

また脳への血流が十分に保てない状況では、脳は機能を維持するために活動レベルを下げ、集中力の低下や強い眠気が生じうることが示唆されています。*2。これは、十分な睡眠をとっても改善しにくい、慢性的な眠気の原因となりえます。

2. 交感神経優位による睡眠の質の低下

私たちの身体は、日中は活動モードの「交感神経」が、夜間はリラックスモードの「副交感神経」が優位になることで、心身のバランスを保っています。しかし、自律神経失調症ではこの切り替えがうまくいかず、夜になっても交感神経が活発なままの状態が続くことがあります。

交感神経が優位な状態では、心拍数や血圧が高いままで身体が興奮状態にあるため、心身を深く休ませる「深い睡眠(ノンレム睡眠)」が妨げられます。

睡眠の「量」だけでなく「質」も重要です。ぐっすり眠れた感覚(睡眠休養感)が大切です。交感神経が優位だと「睡眠の質」が著しく低下します。そのため、十分な睡眠時間を確保しても疲労は回復しません。結果として、翌日に強い眠気や倦怠感が現れるのです。

3. ストレスによる睡眠リズムの乱れ

慢性的なストレスにさらされると、体内ではコルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌されます。このコルチゾールは、自然な眠りを誘うため夜間のメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌リズムが乱れたりその量が低下させたりします。*3その結果、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりと睡眠リズムが崩れてしまうのです。乱れた睡眠リズムは体内時計を狂わせ、日中の眠気やだるさを引き起こします。

 

自律神経失調症によるセルフチェック

自分の眠気が単なる疲労からくるものなのか、それとも自律神経失調症によるものなのかを見極めることが重要です。

自律神経失調症では、眠気以外にも多様な症状が現れるのが特徴です。これは不定愁訴(原因が特定しにくい体の不調)と呼ばれます。

以下の項目に「はい」がいくつ当てはまるかを確認してみましょう。

睡眠・眠気に関する項目

□ 朝起きても疲れが取れていない
□ 夜になっても頭が冴えて眠れない
□ 日中に強い眠気があり、仕事・勉強に集中できない
□ 休日も眠気や倦怠感が続く

身体のサイン

□ 手足の冷えやほてりを感じる
□ 動悸・息苦しさ・めまいがある
□ 肩こり・頭痛・胃腸の不調が続く

精神・生活面

□ ストレスを強く感じている
□ 気分の浮き沈みが激しい
□ 睡眠時間や起床時刻が不規則

 

それぞれのカテゴリーで1項目以上当てはまる場合は、自律神経のバランスが乱れている可能性があります。
もし生活習慣の改善を2週間以上続けても症状が持続する場合、何か自律神経失調症以外の体の病気やあるいは場合によっては心の病気も隠れている可能性もあります。

まずは内科や婦人科などで、身体的な異常がないか検査を受けましょう。それでも原因が不明で症状が続くなら、心療内科の受診も検討します。

自律神経失調症による眠気を改善するための具体的な対策

自律神経失調症による日中の強い眠気は、体のSOSサインです。生活習慣に少し工夫を加えることで、そのつらい症状は改善が期待できます。ここからは、自律神経のバランスを整え、睡眠の質を高めるための具体的な対策をお伝えします。*4

規則正しい生活リズム:体内時計を整える

自律神経失調症による眠気を改善するには、規則正しい生活リズムを確立し、体内時計を整えることが欠かせません。

体内時計を整える3つの方法 

  1. 起床後はカーテンを開けて太陽の光を浴びる
  2. 就寝・起床の時間をほぼ一定にする
  3. 1日3食をできるだけ同じ時間帯に摂る

特に重要なのが、朝の光を浴びる習慣です。起床後に太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされます。そして脳が覚醒モードに切り替わるのです。日中に光を浴びると、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が促されます。これは夜の自然な眠りを助け、スムーズな入眠をサポートします。

また就寝・起床時間も一定にして、休日も2時間以上ずらさないことが理想です。両方の時間を固定することが難しい場合、まずは起床時間を優先しましょう。

適度な運動習慣:自律神経を活性化させる

自律神経失調症による日中の眠気や慢性的な疲労感を改善するには、適度な運動習慣がとても効果的です。運動は乱れがちな交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにし、自律神経全体のバランスを活性化させる働きがあるからです。

厚生労働省の資料でも、運動の効果は報告されています。定期的な運動は入眠を促し、中途覚醒を減らすなど睡眠の質を高めるのです。

運動を取り入れる際は、タイミングと種類が重要です。就寝の数時間前に、ウォーキングや軽いジョギング、ヨガといった負担の少ない有酸素運動を行うのがおすすめです。これにより、一時的に上がった深部体温が就寝時にスムーズに下がります。これが自然な眠りを誘うのです。ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経を興奮させ、かえって寝つきを悪くするため避けましょう。

まずは週3回程度を目安に、無理のない範囲で継続することが大切です。習慣的な運動は、自律神経を整え、質の高い睡眠を取り戻すための力強い味方となります。

睡眠の質を高める食生活のポイント

自律神経のバランスを整え、日中の眠気を改善するには、毎日の食生活を見直すことが不可欠です。食事は体内時計を正常に保ち、睡眠の質を直接左右する重要な要素となります。

以下のポイントを心がけ、質の高い睡眠を目指しましょう。

  • 1日3食、特に朝食を大切にする 決まった時間に食事を摂ることは、生活リズムを整え、自律神経を安定させます。特に朝食は、朝の光を浴びるのと同様に、乱れがちな体内時計をリセットする重要なスイッチです。
  • 栄養バランスを意識する 自律神経の働きをサポートするには、栄養バランスの取れた食事が基本です。心身の調子を整えるビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物を積極的に取り入れましょう。
  • 睡眠を妨げる食事を避ける カフェインやアルコールなどの刺激物は交感神経を興奮させます。その結果、自律神経の乱れを招く可能性があります。また、就寝直前の食事は深い睡眠を妨げるため、夕食は就寝3時間前までに済ませるのが理想です。

 

ストレス管理とリラクゼーション:心身を休める方法

自律神経失調症による眠気を改善するためには、ストレスを適切に管理し、心身をリラックスさせる時間を意識的に作ることが欠かせません。ストレスは自律神経のバランスを大きく乱す要因となるため、効果的なリラクゼーション法を取り入れることが重要です。

心を落ち着かせる方法として、自律訓練法(心身の緊張を自分で和らげる方法)やマインドフルネス瞑想、腹式呼吸などがあります。これらは副交感神経を優位にし、高ぶった神経を鎮めるのに役立ちます。

 

参考:自律訓練法の健康効果とは
ここまでは日中の活動を通じた改善策についてお伝えしました。睡眠の質をさらに高めるためには寝室環境をいかに高められるかは重要な要素となります。ここでは光、温度、音に注目し具体的な睡眠環境の作り方を紹介します。

理想的な寝室の温度と湿度設定

ここまでは日中の活動を通じた改善策についてお伝えしました。睡眠の質をさらに高めるためには毎晩過ごす寝室の環境をいかに整えられるかも睡眠の質において重要な要素となります。

理想的な温湿度の目安は以下の通りです。

 

  • 温度: 年間を通して20~25℃前後
  • 湿度: 年間を通して40~60%

 

夏も冬もできるだけエアコンを付けたままにして部屋の温度を一定にすることが理想です。また。冬は暖房で空気が乾燥しやすいため、加湿器を併用して適切な湿度を保つことが大切です。

まとめ

自律神経失調症の眠気の原因、セルフチェック、そして具体的な対策をお伝えしてきました。セルフチェックで自分が自律神経失調症がありそうな感じなら、自分に合った対策をまずは2週間ほど試してみましょう。改善が見られない場合には医療機関にも相談しましょう。隠れた病気を見つけるためだけでなく、ご自身が何を取り組むかを先生とも共有しながら生活習慣改善を進めていくと、より早く自律神経も整っていくでしょう。

 

【参考文献】

  1. 技術評論社 | ストレス社会を生き延びるには 自律神経を整えることが必須条件!
  2. Autonomic Dysfunction in Sleep Disorders: From Neurobiological Basis to Potential Therapeutic Approaches
  3. On the interactions of the hypothalamic-pituitary-adrenal (HPA) axis and sleep: normal HPA axis activity and circadian rhythm, exemplary sleep disorders
  4. 厚生労働省 | 健康づくりのための睡眠ガイド2023