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監修者

後平 泰信
医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。
【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療
明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。
「クーラーがない部屋でどうにか夏を乗り越えたい」「エアコンを使いたいけど電気代が気になるからなるべく使いたくない」と感じていませんか。特に夏の盛りは、部屋に熱がこもるだけで仕事への集中が途切れたり、夜の睡眠の質がぐっと下がったりしがちです。とはいえ、大がかりなリフォームや高価な設備を導入する決断をする前に、今あるもので何とかしたいという気持ちになるものです。
ただし、夏場の室内の暑さを甘く見てはいけません。消防庁の令和5年(2023年)確定値によると、5月から9月の熱中症による救急搬送は全国で91,467人にのぼり、発生場所としては「住居」が最も多くを占めているのです。※1
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の松本が、クーラー以外で部屋を涼しくする方法を、温度・湿度・気流・日差し・寝具という5つの観点から整理して解説します。
クーラー以外で部屋を涼しくしたい人がまず知るべきこと
暑さ対策は「何をするか」より「どんな順番でするか」が大切です。効果的な対策の中で、自分に適した方法を選択できるためにも、暑さの原因をまず知ってから対策を選ぶという順番で考えていきましょう。
部屋が暑いのは温度だけでなく湿度と気流も関係する
「部屋が暑い」と感じるとき、多くの人は「室温が高い」ことが原因だと考えるでしょう。しかし、室温だけが体感温度を決めているわけではなく、湿度も大いに関係しています。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体の熱放散がうまく機能しなくなるため、同じ室温でも湿度が高い部屋のほうがはるかに暑く感じるのです。梅雨明けから夏にかけての蒸し暑さは、まさにこのメカニズムによるものです。
気流の有無も体感温度に大きく影響します。風がなければ、皮膚の表面に暖かい空気の層がたまり続けます。少しの風が当たるだけで汗の蒸発が促され、体感温度はぐっと下がります。つまり、「室温を下げる」だけでなく「湿度を下げる」「風を通す」という視点を持つと、クーラー以外の暑さ対策を効果的に選べます。※2
クーラー以外の対策は場所と時間帯で効き方が変わる
同じ方法でも、部屋の条件や時間帯によって効果が大きく変わります。たとえば、窓を開けて換気する方法は、外気温が室内より低い朝方や夕方には非常に効果的ですが、日中の暑い時間帯に行うと、熱い空気を取り込んでしまうため逆効果です。
また、西日が強く差し込む部屋、屋根に近い2階や最上階、窓が1か所しかない部屋など、条件によって適した対策は異なります。
まずは熱を入れない 窓と日差しの対策
暑くなってから冷やそうとするより、最初から熱を入れない工夫のほうが、少ない手間で大きな効果が得られます。
データで見てみましょう。夏の冷房時(昼間)に室外から室内に入る熱のうち、約73%が窓などの開口部から流入しているというデータがあります。※3 壁や屋根からの侵入は全体の一部に過ぎず、窓まわりの対策をするかどうかが室温の上昇を大きく左右します。「窓と日差しの対策」は優先度を上げることをおすすめします。
窓の開け方を変えるだけで熱気を逃がしやすくなる
窓を開けているのに「なんとなく涼しくならない」と感じる場合、開け方を変えるだけで状況が変わることがあります。空気が動くためには「入口」と「出口」が必要です。片側の窓だけを開けていても、空気の抜け道がなければほとんど流れません。対角線上にある2か所の窓を開けると、空気が部屋を横断するように流れ、換気効率が大幅に上がります。
窓が1か所しかない部屋でも工夫はできます。廊下側のドアを開ける、換気扇をつけるなどの方法で、空気の流れをつくり出せます。窓の開け方も、全開より少し絞ったほうが風速が上がり、体感として涼しく感じやすくなるでしょう。
大切なのは換気のタイミングです。外気温が室温より高い日中の時間帯に窓を開けても、熱い空気を取り込むだけになってしまいます。換気は外が涼しい早朝や日没後を狙い、室内の熱気を効率よく外に逃がすことを意識してください。
カーテンやすだれで日差しを遮る優先度が高い理由
窓からの熱を防ぐ方法として、カーテンやすだれがよく挙げられますが、設置する場所によって効果に大きな差があります。遮熱効果が高いのは、窓の外側で遮る方法です。ガラスの室内側にカーテンを設置しても、日射が一度ガラスを通り抜けてから熱エネルギーになるため、完全には防ぎきれません。
一方、すだれやよしずを窓の外側に吊るすと、熱がガラスに到達する前に遮断できます。通気性があるため風を通しながら日射を防げるため、賃貸でも使いやすいです。手軽に設置できるベランダ用のシェードも同じ原理です。
室内側での対策が必要な場合は、遮熱機能を持つカーテンを選びましょう。「遮熱カーテン」は熱線のカットに特化しているため、暑さ対策が目的であれば遮熱機能のあるカーテンを選ぶことが大切です。また、日差しの方向を考慮して、東向きの窓は午前中、西向きの窓は午後から夕方にかけて対策を強化すると合理的です。
空気を動かして体感温度を下げる方法
室内で暑い空気はなぜ特につらいのかというと、暑い空気は密度が低く、天井付近に滞留しやすいためです。床付近の空気と天井付近の空気では温度差が数度にもなることがあり、この温度のよどみを解消することが快適性の改善につながります。※2 扇風機・サーキュレーター・保冷アイテムを使った方法を、使い方の根拠とともに紹介します。
扇風機は風を当てるだけでなく空気を逃がす向きも大切
扇風機は「体に向けて使うもの」というイメージが強いですが、向きを変えるだけで役割が大きく変わります。窓に向けて外側に回転させると、室内の熱い空気を外へ押し出す役割を果たします。もう一方の窓から涼しい外気が引き込まれるため、換気と冷却を同時に行えます。
窓が2か所以上ある部屋では、一方の窓で室内側から外に向けて扇風機を回し、もう一方の窓から外気を取り込む、という流れをつくると効果的です。窓が1か所しかない場合は、扇風機を体に向けて風を当て、汗の蒸発を促しましょう。。夕方以降に外気が涼しくなったら排気に切り替え、日中は体への直接冷却に使うというように、時間帯によって向きを使い分けると、より効率よく暑さ対策ができます。
サーキュレーターは空気のよどみを減らしたいときに使う
サーキュレーターと扇風機は、用途が異なります。サーキュレーターは遠くまで届く直進性の強い気流を起こすことを得意とする家電で、空気を循環させることが主な目的です。体に直接当てて涼むというより、部屋全体の空気をかき混ぜて温度ムラをなくすのが得意です。
天井に向けて置くと、天井付近に滞留している暑い空気が下方に押し出され、部屋全体の温度が均一に近づきます。また、換気扇のそばに向けて置くと換気効率が上がります。エアコンと一緒に使う場合は、冷気を部屋全体に広げる効果もあります。換気や送風と組み合わせて活用すると効果が高まるでしょう。
凍らせたペットボトルや保冷剤は補助策として使う
凍らせたペットボトルや保冷剤を扇風機の前に置く方法は、手軽でよく知られた暑さ対策です。扇風機の風がペットボトルの表面を通り抜けることで、わずかに冷たくなった空気が届きます。ただし、効果は局所的で、部屋全体の温度を下げるものではありません。「すぐ少し涼しくしたい」という場面での補助策として位置づけるのが適切です。
ペットボトルや保冷剤の表面に結露が生じ、水が垂れる点は注意が必要です。タオルや受け皿の上に置くなどして、床や家電への水濡れに気をつけてください。また、保冷剤を肌に直接当てる場合は、タオルに包んで使い、長時間同じ箇所に当て続けないようにしましょう。部分的に冷やしすぎると血管が縮まり、かえって体の熱放散が妨げられることがあります。
関連記事:上級睡眠健康指導士監修|夏の夜に暑くて寝れないときの原因と対策について解説!
蒸し暑さを減らす 除湿と湿度対策
湿度への対策は、体感温度を改善するうえで気温対策と同じくらい重要です。ここでは、なぜ湿度が体感温度に影響するのか、そしてどのように湿度をコントロールすればよいかを整理します。
湿度が高いと同じ室温でも暑く感じやすい
人の体は、汗をかいてそれを蒸発させることで体温を調節しています。湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなり、体温調節がうまく機能しません。その結果、体に熱がこもって「蒸し暑い」と感じるのです。
夏の蒸し暑さはこのメカニズムによるものが大きく、気温だけを見て判断するのは不十分です。湿度計を置いて数値で確認する習慣をつけると、「なぜ今日はこんなに暑く感じるのか」が明確になり、対策の選択肢が絞りやすいでしょう。快適な湿度の目安は40〜60%とされているため、夏場はこの範囲に近づけることを意識してみてください。※2
除湿機や換気を使い分けると快適さが変わる
湿度を下げる手段として除湿機がありますが、状況によって換気と使い分けることが大切です。判断の基本は、「外の空気が室内より涼しくて乾いているなら換気、外も蒸し暑いなら除湿機を優先する」というシンプルなルールです。
梅雨の時期や熱帯夜など、外の湿度が高い日に窓を全開にすると、外からじめじめした空気を取り込んでしまいます。そういった日は窓を閉めて除湿機を使うほうが、室内の湿度を効果的に下げられます。一方、外が涼しくて乾燥している早朝や夕方は、積極的に換気して自然の空気を入れ替えるだけで十分かもしれません。
除湿機を持っていない場合でも、室内干しの洗濯物を減らす、浴室の湿気をすぐに換気扇で逃がす、押し入れや収納の扉を開けておくなどの工夫で、室内の湿気の滞留を減らせます。完璧な除湿設備がなくても、日常のちょっとした習慣で湿度管理ができるのです。
寝苦しい夜をラクにする寝室の工夫
就寝中は体の動きが少なく、自覚症状に気づきにくいため、寝室の熱中症リスクは軽く見ることができません。消防庁の資料によると、エアコンを使用していなかった方が熱中症で亡くなるケースが多く報告されており、特に高齢者への影響が大きいです。※4 寝室の暑さ対策は、日中のリビングでの対策とは違うポイントを押さえる必要があります。眠りにつきやすくするための工夫と、無理をしてはいけない場面の判断基準を整理します。
接触冷感や通気性のよい寝具を使う考え方
寝苦しさの大きな原因のひとつが、寝具との接地面に起こる蒸れです。体温が布団に伝わり、汗が逃げない状態が続くと、眠っていても体温が上がり続けます。寝具を変えるだけで、眠り始めの体感温度が大きく変わることがあります。
選び方のポイントは3つです。まず「接触冷感」は、生地が肌に触れた瞬間にひんやりと感じる特性で、寝つきの改善に効果的です。次に「通気性」は、空気の流れを通すことで蒸れを防ぎます。そして「吸湿・速乾性」は、汗をすばやく吸い上げてすぐに蒸発させる性質で、眠り続けている間も快適さを保つために必要です。
敷きシーツや枕カバーを夏向けに切り替えるだけでも効果を感じやすく、寝具全体を買い替えるより手軽に試せます。麻(リネン)素材は吸湿性と放湿性に優れており、夏の寝具として長年使われてきた素材です。機能性ナイロンや再生繊維素材も通気性と速乾性の面で評価されています。
首元や手首などを冷やすと寝つきやすくなることがある
寝室の温度が十分に下がらないときでも、体の特定の部位を冷やすことで体感温度を下げる方法があります。太い血管が皮膚の表面近くを通る首の後ろ、脇の下、手首、足首を冷やすと、血流を通じて全身の熱放散が促されます。
保冷剤をタオルで包んで首に当てる、就寝前に手首を冷水で濡らして扇風機の風に当てるといった方法を、寝る前の習慣として取り入れてみてください。消防庁も、エアコンが使えない状況での代替策として「濡れたタオルを肌に当てる」方法を紹介しています。※4
ただし、扇風機の風を就寝中ずっと体に当て続けるのは避けましょう。乾燥による不快感や体の冷えすぎにつながりやすいです。タイマー機能を設定して、眠りにつくまでの1〜2時間だけ風を当て、その後は切れるようにしてください。
それでもつらい夜は無理をしない判断も必要
クーラー以外の工夫を紹介してきましたが、「どんな状況でもエアコンを使わずに過ごすべきだ」という意図ではありません。室温が28℃を超えている場合や高齢者や乳幼児がいる場合、体調に少しでも異変を感じる場合は、すぐにエアコンを使うか、涼しい場所に移動することを優先してください。 消防庁のデータでは、熱中症で亡くなった方の8割以上が高齢者で、そのうち8割以上がエアコンを使用していなかったことが報告されています。※4 節電や電気代への配慮は大切ですが、命を守ることのほうがはるかに重要です。「我慢できるから大丈夫」という判断を過信せず、自分や家族の状態を数値と症状の両面で確認する習慣を持つようにしてください。
関連記事:上級睡眠健康指導士監修|夏用寝具について解説!涼しい素材選びからおすすめアイテムまで
やりがちだが効果に差が出やすい工夫
ここまで紹介した窓・日差し・送風・除湿・寝具という5つのアプローチに加え、よく検索されるいくつかの小ワザについても整理しておきます。「効くと聞いたけど本当はどうなの?」という疑問に対して、どんな条件で効果が出やすいかを確認しておきましょう。
打ち水や濡れタオルは気化熱を利用する工夫
打ち水は、水が気体に変わる際に周囲の熱を奪う「気化熱」の原理を利用した古来の涼み方です。ベランダや窓の外側に打ち水をすると、その周辺の温度を一時的に下げる効果があります。ただし、効果が出るのは水がゆっくりと蒸発できる条件が整っているときです。日中の強い直射日光のもとで打ち水をしても、水がすぐに蒸発して湿度だけが上がり、蒸し暑さを増してしまいかねません。気温がやや落ち着く朝方(日の出から9時頃)と夕方(日没後)が効果的なタイミングです。
室内での濡れタオルの活用も同じ原理です。窓辺に干す、扇風機の前に吊るすといった方法で、通り抜ける風を少し冷やすことができます。完全に室温を下げるものではありませんが、今すぐできる一時的な体感改善策として実用的です。
照明や家電の発熱を減らすと熱ごもり対策になる
見落とされがちな熱源として、照明や家電があります。白熱電球や一部の蛍光灯は、電力の多くを熱として放出しており、室内の発熱源になっています。LED照明に切り替えると、同じ明るさでも発熱量が大幅に減り、室温への影響が小さくなるでしょう。
使っていない家電のコンセントを抜く、テレビや電子機器の待機電力をオフにするといった習慣も、地道ながら室温の上昇を抑えることに貢献します。個々の発熱量はわずかでも、複数の機器が同時に稼働していれば、合計では無視できない熱量になります。節電効果と暑さ対策が同時に実現できるため、コスパのよい工夫として積極的に取り入れてみてください。
部屋を涼しくする方法を状況別に選ぶチェックリスト
ここまで多くの方法を紹介してきましたが、「結局、自分の部屋では何から始めればよいの?」と思っている方も多いはずです。そこで、状況別に優先すべき対策を整理しました。最初から全部やろうとしなくても大丈夫です。今の自分に一番近いパターンから試してみてください。
お金をかけたくない人は窓と風の通し方から試す
費用をかけずに今すぐできることに絞るなら、まず窓まわりの工夫と扇風機の向きの見直しから始めましょう。
最初に行うべきは日差し対策です。手元にあるカーテンを閉め、すだれが使えるなら窓の外側に吊るします。次に、外気が涼しい朝方か夕方を選んで対角線上の2か所の窓を開け、室内の熱気を逃がします。扇風機は窓に向けて室外側に回し、熱い空気を外に押し出すようにセットします。さらに、体感温度を下げたいときは保冷剤を首元に当てる方法を補助的に加えましょう。
寝室がつらい人は寝具と首元の対策を優先する
夜の睡眠が特につらいという方は、日中の対策よりも寝室の準備に力を入れましょう。
まず昼間のうちに、遮光カーテンやすだれで寝室への日射を抑え、室温の上昇を最小限にしておきます。就寝の1〜2時間前になったら窓を2か所開けて換気し、寝室の熱気を逃がします。扇風機を外向きにして積極的に排気するのも効果的です。
寝るときは、接触冷感や通気性のよいシーツに切り替えてみましょう。保冷剤をタオルで包んで首元に当て、扇風機はタイマーで1〜2時間後にオフになるよう設定します。「寝室の準備は就寝前から始める」という意識を持つだけで、眠りにつきやすさが変わります。
まとめ 部屋を涼しくする方法は クーラー以外でも順番次第で変わる
クーラー以外で部屋を涼しくするための方法を、改めて整理しておきます。考える順番は「熱を入れない→空気を動かす→湿度を下げる→体の接地面を見直す」です。この4ステップを意識して対策を選ぶと、散発的に試すよりも効果を実感しやすくなります。
窓と日差しの対策を先に行うことで、後からの送風・除湿の効果が高まります。扇風機やサーキュレーターは、向きと目的を意識して使い分けることで、体感温度の改善が期待できます。湿度が高い日は除湿を優先し、外が涼しい時間帯は積極的に換気します。夜の寝苦しさには、就寝前の換気・体の冷却・寝具の見直しをセットで行うことが効果的です。
そして繰り返しになりますが、クーラー以外の方法だけで頑張り続けることが目的ではありません。室温が高い状況、体調に異変を感じるとき、高齢者や乳幼児がいる場合には、迷わずエアコンや涼しい場所を使うことを選んでください。
夜の暑さが気になっている方は、寝具の素材や厚みも合わせて見直してみませんか。ベッドまわりを快適に整えることで、クーラーに頼りすぎなくても眠りやすい環境が整っていきます。
・参考
※1 令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値) | 消防庁
※2 熱中症環境保健マニュアル 第3章 熱中症の予防方法 | 環境省










