うつ病でずっと寝てるのは甘え?過眠の原因と回復期の見分け方、今日からの対処
睡眠コラム by Koala Sleep Japan2026年1月30日読了目安時間: 11

【医師監修】うつ病でずっと寝てるのは甘え?過眠の原因と回復期の見分け方、今日からの対処

目次

監修者

本多 洋介
Myクリニック本多内科医院院長

群馬大学医学部卒業。
伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院(いずれも循環器内科)を経て、Myクリニック本多内科医院院長。

  • 免許・資格

総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション学会専門医、軽カテーテル的大動脈弁植え込み術指導医(Sapienシリーズ、Evolutシリーズ)

平日は何とか起きて仕事や学校に向かえるのに、休日になると一日中ベッドから出られない。うつ病と診断されてから、ほとんどの時間を眠って過ごしていて、この状態は甘えなのではないかと自分を責めてしまう。そんな悩みを抱えて検索にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

実は、うつ病の症状には不眠だけでなく、眠りすぎてしまう「過眠」も含まれます。私自身、身近な人が「寝ているのに休めている感じがしない」と苦しんでいる姿を見て、睡眠の量だけでは判断できない問題があることを知りました。

本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、うつ病でずっと寝てしまう原因を整理し、それが回復期のサインなのか注意が必要な状態なのかを見分ける視点を解説します。さらに、心療内科や精神科を受診する目安や、今日から無理なく試せる対処の考え方までを分かりやすくお伝えしていきます。

ずっと寝てしまうのは甘えと決めつけない

結論:ずっと寝てしまうのは甘えと決めつけない

結論から伝えると、うつ病によって一日中眠気が続いたり、起きようと思っても起きられず長時間寝てしまったりする状態は、決して本人の甘えや怠け心によるものではありません。気力が弱いからでも、意志が足りないからでもなく、脳と体の機能に変化が生じている結果として起こる症状です。

厚生労働省が運営するe-ヘルスネットでは、うつ病の身体症状として「不眠」だけでなく「過眠」、つまり眠りすぎる、朝起きられないといった状態が明確に示されています※1。これは、脳の働きや自律神経、ホルモン分泌のバランスが崩れ、「今は十分な回復が必要だ」というサインを体が発している状態と考えられます。本人がどれだけ努力しても抗えない眠気が続くのです。

ただし、過眠は必ずしもうつ病だけで起こるわけではありません。生活リズムの乱れや睡眠障害、他の心身の不調が背景にある場合もあります。そのため、自己判断で「自分はうつ病だ」「ただの怠けだ」と決めつけてしまうのは避けてください。

過眠とは何か:目安とよくある誤解

過眠とは、夜に一定時間眠っているにもかかわらず、日中に強い眠気が続いたり、長時間眠っても回復感が得られなかったりする状態を指します。単に「たくさん寝た」という事実だけで判断されるものではなく、睡眠の質や覚醒のしやすさ、日常生活への影響を含めて考える必要があります。

たとえば、十分に寝ているはずなのに常に疲労感が残っている場合や、朝起きようとしても体が動かず、何度も二度寝や三度寝をしてしまう場合、さらに日中も強い眠気に支配され、仕事や学業、家事に支障が出ている場合は、過眠の状態に近い可能性があります。こうした状態は「寝ているから休めているはずだ」と周囲から誤解されやすい一方で、本人にとっては休息にならず、むしろ苦しさが増していくことも少なくありません。

重要なのは、これらの状態が意志の弱さや性格の問題ではなく、睡眠と覚醒を司るリズムが乱れているサインかもしれないという視点を持つことです。自分の状態を客観的に言葉にできるようになることが、適切な対処や相談につながる第一歩になります。

うつ病の睡眠の悩みは不眠だけではない

一般的に、うつ病というと「夜眠れない」「寝つけない」といった不眠のイメージが強く持たれがちです。しかし実際には、特に若年層や一部の病型では、過眠や日中の強い眠気として症状が現れることもあります。

そのため、「自分は長時間眠れているから、うつ病ではないはずだ」と思い込んでしまうと、必要な支援や治療の機会を逃してしまう可能性があります。起きられない、眠気が取れないといった状態も、うつ病における重要な症状の一つです。この点を知っておくだけでも、「自分だけがおかしいのではないか」という不安や罪悪感は和らぎやすくなります。

関連記事:【医師監修】うつ病で「とにかく寝る」状態から抜け出す方法と睡眠環境の整え方

うつ病でずっと寝てしまう主な原因

うつ病でずっと寝てしまう主な原因

うつ病で「抗えないほど眠い」「一日中寝てしまう」状態が続く背景には、単一の原因ではなく、いくつかの要因が重なっていることが多くあります。本人の気の持ちようや根性で説明できる問題ではなく、脳と体の調整機能がうまく働かなくなっている結果として現れるものです。

厚生労働省の資料でも、うつ病を含む精神疾患では、早い段階から睡眠の問題が出現しやすく、それが症状の長期化や再燃・再発のリスクとも関係することが示されています※2。つまり、「ずっと寝てしまう」という状態は、見過ごしてよい一時的な現象ではなく、重要な健康課題として捉える必要があります。

うつ病で過眠が起こる代表的な要因を整理し、それぞれにどのような特徴が見られやすいのかを具体的に見ていきます。自分の状態がどれに近いのかを考えながら読み進めてみてください。

睡眠と覚醒リズムの乱れ:朝起きられないが続く理由

うつ病になると、体内時計の調整に関わる脳の働きが乱れやすくなります。特に、覚醒や意欲に関係する神経伝達物質のバランスが崩れて睡眠と覚醒のリズム、いわゆる概日リズムが後ろにずれ込みやすくなるのです。

この状態では、夜に十分な時間眠っていても、朝になると脳がうまく覚醒できず、起きようとしても体が重く感じられます。その結果、午前中は特につらく、昼近くになってようやく動けるようになる一方で、夜になると目が冴えてしまい、就寝時刻がさらに遅くなるという悪循環に陥りがちです。

このようなケースでは、単に睡眠時間の長さだけを見るのではなく、毎日の起床時刻や朝の光の入り方、日中の活動量といった「リズム全体」が乱れていないかを考える視点が重要です。

活動量の低下と休養の必要:寝続けるのはSOSのサインか

うつ病では、気分の落ち込みや意欲の低下によって、体を動かすこと自体が大きな負担になります。健康なときには何気なくできていた着替えや外出、会話でさえ、強いエネルギーを消耗する作業に感じられることが少なくありません。

こうした状態が続くと、脳はこれ以上の負荷を避けるため、強制的に休息を取らせようとするため、長時間眠り続けたり、横になっている時間が増えたりすることがあります。この段階の睡眠は、怠けではなく、心身が限界に近づいていることを示すSOSのサインと捉えましょう。

ただし、この状態が長期化すると、活動と睡眠のバランスがさらに崩れて生活への支障が広がりやすくなりますから、「少しずつ整えていく」という視点を持つことが、回復への次の一歩につながります。

薬の影響や併存症:過眠が増えるケースもある

うつ病の治療で使用される抗うつ薬や睡眠に関わる薬の中には、副作用として日中の眠気が出やすいものもあります。特に、薬を飲み始めた直後や種類や量を変更したタイミングでは、以前より眠気が強くなることがあります。

また、うつ病とは別に、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠の病気や、内科的な不調が隠れている場合もあります。このような併存症があると、夜に十分眠っているつもりでも睡眠の質が低下し、日中の強い眠気につながります。

重要なのは、眠気が強いからといって自己判断で薬を中断しないことです。眠気が出る時間帯、実際の睡眠時間、最近の服薬内容の変化などを整理したうえで医師に伝えることで、治療方針の調整が迅速にできるでしょう。

関連記事:一瞬意識が飛ぶ眠気「マイクロスリープ」とは?原因と対策をやさしく解説

本多洋介 医師
本多洋介 医師
うつ病における過眠は、決して「甘え」や「怠け」ではなく、脳の神経伝達物質のバランス異常によって生じる明確な症状です。「寝てばかりいる自分はダメだ」と自分を責める必要は全くありません。
ただし、重要なのは「見守るべき過眠」と「相談すべき過眠」を見分けることです。食事や会話など、小さな回復の兆しが見られるなら経過観察で構いませんが、生活が全く成り立たない状態が続く場合や、希死念慮が強い場合は、早急な医療機関への相談が必要です。
改善の過程でもいきなりは良くはならず、段階を踏んで良くなっていくものです。焦らず、できることから少しずつ。そして一人で抱え込まず、専門家や周囲のサポートを受け入れてください。必ず回復への道は開けます。ご家族の方も、ご自身の心身を大切にしながら、寄り添っていただければと思います。

回復期の過眠と悪化のサイン:見分け方の目安

「寝てばかりいるのは回復している証拠なのか、それとも悪化しているサインなのか」という疑問は、多くの人が感じやすいポイントです。結論から言えば、睡眠時間の長さだけで回復か悪化かを断定することはできません。重要なのは、眠気とともに日中の状態や生活の中身がどのように変化しているかを見ることです。

厚生労働省の資料でも、精神疾患では睡眠の問題が経過を通じて続くことがあり、慢性化した場合には生活機能や再燃リスクとも関連することが示されています※2。そのため、回復期であっても「安全に見守れる範囲」と「注意が必要なライン」を意識することが大切になります。回復に向かう眠気と、受診や相談を急いだほうがよいサインの違いを整理します。

回復に向かう眠気の特徴:少しずつ生活が戻るサイン

回復期に見られる眠気は、脳や体が消耗したエネルギーを回復させようとしている過程で生じることがあります。この場合、睡眠時間自体は長くても、起きている時間の質にわずかな変化が現れてくるのが特徴です。

たとえば、目覚めたときに「何もできない」という感覚一色ではなく、「少し何か口にしてみよう」「お風呂に入ってみよう」といった小さな意欲が芽生えることがあります。また、以前よりも気分の落ち込みがわずかに和らいだり、短時間でも家族や身近な人と会話ができる日が増えてきたりすることも、回復に向かうサインのひとつです。

この段階では、「まだ寝ている時間が長いから回復していない」と焦る必要はありません。生活が一気に元に戻ることはまれで、睡眠、食事、会話といった要素が、少しずつ重なり合うように戻っていくのが一般的です。眠気があっても、休養感が以前よりわずかに感じられるようになっているかどうかが、一つの判断軸になります。

注意が必要なサイン:急激な変化や危険な眠気

一方で、眠気の背景に注意が必要な場合もあります。それは、単に「よく寝ている」という範囲を超え、生活そのものが成り立たなくなっている状態です。たとえば、意欲の低下が極端で、食事やトイレといった最低限の行動さえ困難になっている場合は、回復期の過眠とは考えにくいです。

また、「消えてしまいたい」「生きている意味がない」といった強い希死念慮が続いている場合や、薬の変更後に急激に眠気が増し、日中の安全な行動が難しくなっている場合も、早めの対応が必要です。こうした眠気は、うつ病の悪化や薬の影響、別の身体的要因が関与している可能性があります。

このようなサインが見られるときは、「様子を見ればそのうち良くなる」と一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談することが重要です。本人がうまく説明できない場合でも、眠気の強さや生活への影響を周囲が代わりに伝える姿勢が重要です。

受診の目安と相談先:行くべき診療科、伝えるべきこと

受診の目安と相談先:行くべき診療科、伝えるべきこと

「このままずっと寝てしまうのではないか」「病院に行くほどなのか分からない」と迷い続けること自体が、心身の負担を大きくしてしまうことがあります。眠気や過眠が続いて不安を感じたときは、我慢するよりも、専門家に相談することが回復への近道になります。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、うつ病では不眠だけでなく過眠といった身体症状が現れることがあり、早めに相談する行動が重要であると示されています※1。必ずしも最初から専門外来に行く必要はなく、相談の入り口はいくつかあります。

どの診療科に行くべきか:症状別の考え方

抑うつ気分や意欲の低下、不安感が強く、日常生活に支障が出ている場合には、精神科や心療内科が主な相談先になります。これらの診療科では、気分の状態と睡眠の問題を合わせて評価し、治療や生活調整の方針を考えてもらえます。

一方で、強い日中の眠気が続き、いびきが大きい、呼吸が止まっていると指摘されたことがあるなど、睡眠そのものの質に問題が疑われる場合には、睡眠外来での検査が役立つこともあります。ただし、どちらに行くべきか迷う場合には、無理に判断しようとせず、まずは相談しやすい医療機関を受診しましょう。

受診へのハードルが高いと感じる場合には、かかりつけ医に相談するところから始めても構いません。現在の眠気や生活の困りごとを伝えることで、必要に応じて専門の診療科につないでもらえることがあります。

初診で伝えることテンプレ:メモして持参できる形

初めての受診では、「何をどう話せばよいか分からない」と感じる人が少なくありません。事前に簡単なメモを用意しておくことで、限られた診察時間でも状況を正確に伝えやすいです。

たとえば、「いつ頃から、どのくらいの期間、眠気や過眠が続いているか」「一日の睡眠時間はおおよそ何時間か」「日中はどの場面で強い眠気が出るのか」「仕事や学校、家事がどの程度できなくなっているか」「気分の落ち込みや不安、焦りがあるか」「現在飲んでいる薬の名前と、飲み始めてからの変化」といった内容を、短い文章でまとめておくと役立ちます。

医師にとって重要なのは、上手に話すことではなく、生活への影響や変化を具体的に知ることです。メモを見ながら説明しても問題はありませんし、うまく言葉にできなくても、そのまま伝えて構いません。

今日からできる対処法5つ:無理なく生活リズムを整える

「このままではいけない」「何か変えなければ」と思うほど、体も心も動かなくなることがあります。うつ病や過眠がある時期の対処は、気合いを入れて立て直すことではなく、失敗しても戻れる小さな行動を重ねることが基本になります。

厚生労働省の睡眠に関する資料でも、生活習慣や環境を無理のない範囲で整えることが、良質な睡眠につながると示されています※3。ここでは、実行しやすさを最優先に、今日から試せる考え方を5つ紹介します。

1 朝の光と起床時刻を固定する

最初に意識したいのは、早起きすることではなく、起きる時刻を毎日そろえることです。たとえば「午前10時になったら一度カーテンを開ける」「布団の中でも窓際の光を目に入れる」といった程度でも十分です。朝の光が目に入ることで、体内時計が「一日が始まった」と認識しやすくなり、睡眠と覚醒のリズムが少しずつ整っていきます。寒さや体調の問題で外に出られない場合でも、ベランダに数分立つ、窓辺に座るといった代替で構いません。できなかった日があっても、翌日に同じ時刻に戻すことができれば問題ありません。

2 日中の活動を最小単位で増やす

日中の活動というと運動を想像しがちですが、回復期や過眠が強い時期には、それが大きな負担になることもあります。大切なのは、体を少しだけ起こす行動を選ぶことです。たとえば、ベッドの上で上体を起こす、カーテンを開けに行く、顔を洗う、シャワーを浴びるといった行動も立派な一歩です。「できたらよい」という基準で積み重ねていくことが、生活リズムを戻す助けになります。

3 仮眠は短く、時間帯を決める

一日中眠気が強いときに、無理に起き続けると心身の消耗が進んでしまいます。そのため、仮眠自体を否定しないでください。ただし、長時間の仮眠や夕方以降の眠りは、夜の睡眠を浅くし、翌朝の起きづらさを強めやすくなる点には注意が必要です。仮眠を取る場合は、午後3時までの時間帯に、15分から30分程度を目安にし、アラームを使って切り上げるとリズムが崩れにくくなります。ベッドではなくソファに横になる、座った姿勢で目を閉じるといった工夫も役立ちます。

4 寝る前の刺激を減らし、睡眠環境を整える

夜の過ごし方や寝室の環境は、眠りの質に大きく影響します。就寝前にスマートフォンを長時間見続けたり、部屋が明るすぎたりすると、脳が覚醒しやすくなります。照明を少し暗くする、寝る直前の画面操作を控える、音や温度をできる範囲で整えるといった「できるところ」から始めましょう。寝ても体が痛くて目が覚める場合には、寝具や寝室環境を見直すことが、途中覚醒の軽減につながることもあります。

5 記録してパターンを見える化する

眠気やだるさは主観的になりやすく、「良くなっているのか悪いのか分からない」と感じがちです。そこで、簡単な記録をつけることが役立ちます。起床時刻と就寝時刻、おおよその睡眠時間、日中の眠気の強さ、食事や服薬の有無、気分の状態を、短い言葉で残すだけで構いません。数日から一週間ほど振り返ると、「この日は少し動けていた」「この時間帯に眠気が強い」といった傾向が見えてきます。この記録はセルフケアの手がかりになるだけでなく、受診時に医師へ状況を伝える材料としても役立ちます。

家族・周囲の接し方:無理に起こさず、回復を支える

「このまま寝かせていていいのか」「起こしたほうが回復するのではないか」と悩む家族は少なくありません。本人の将来を思うからこそ出てくる迷いですが、うつ病や過眠の時期には、善意の行動がかえって本人の自己否定を強めてしまうことがあります。大切なのは、無理に動かすことではなく、安心して回復できる土台を周囲が整えることです。

家族向けの情報でも、起こすべきかどうかで迷う声は多く見られますが※4、本章ではその一歩先として、言葉の選び方と関わり方の具体例、そして家族自身が疲れ切らないための線引きを整理します。

言ってしまいがちなNGと、置き換えフレーズ

眠っている時間が長いと、つい「いつまで寝ているの」「甘えているだけじゃないの」「少しは頑張らないと」と声をかけてしまうことがあります。しかし、うつ病の状態では、こうした言葉が正論であっても、本人には責めや否定として受け取られやすくなります。その結果、「迷惑をかけている」「自分はだめだ」という思考が強まり、回復から遠ざかってしまうかもしれません。

同じ気持ちを伝えるにしても、言い換えによって受け取られ方は大きく変わります。たとえば、「起きなさい」と言いたくなった場面では、「今日は体がつらそうだね。起きられたらでいいよ」と伝えることで、安心感を保ったまま様子を見ることができます。「このままで大丈夫なのか不安だ」という思いは、「心配しているよ。何か手伝えることがあったら教えてね」と言い換えると、支援の気持ちが伝わりやすいでしょう。

ポイントは、変えたい行動を直接指摘するのではなく、気持ちや状態を認めたうえで選択肢を残すことです。家族が使う言葉は、本人の自己評価に強く影響するため、「できていないこと」よりも「今の状態」をそのまま受け止めてください。

生活リズムの支え方:強制ではなく仕組みで助ける

生活リズムを整える支援も、声かけと同様に、強制ではなく仕組みで行うことが重要です。たとえば、「起きなさい」と促す代わりに、朝になったら一緒にカーテンを開ける、同じ時間に朝食を用意しておくといった関わり方であれば、本人にプレッシャーを与えにくくなります。

昼間の活動も、「外に出なさい」と指示するより、「近くまで一緒に空気を吸いに行かないか」と短時間の行動に誘うほうが、受け入れられやすいことがあります。応じられない日があっても、それを問題視せず、また次の機会に同じ提案を繰り返せば十分です。家族ができるのは、リズムを取り戻すきっかけを用意することであって、結果をコントロールすることではありません。

同時に、家族自身がすべてを背負い込まないことも大切です。支える側が疲れ切ってしまうと、関係そのものが苦しくなります。本人の状態や自分のしんどさを、医療機関や相談窓口、信頼できる第三者に共有することは、無責任ではなく必要な線引きであると同時に、結果的に本人を長く支える力になります。

うつ病以外の可能性:過眠が続くときに考えること

「ずっと寝てしまう」「日中の眠気が取れない」といった状態が続くと、うつ病ではないかと不安になる人は少なくありません。ただし、過眠や強い眠気は、うつ病以外の病気や体の状態が関係している場合もあります。原因を一つに決めつけず、切り分けの視点を持つことは、必要以上に自分を責めないためにも大切です。

国立精神・神経医療研究センターの情報でも、睡眠の問題は夜の眠りだけでなく、日中の眠気や倦怠感として現れることがあり、関連する疾患が幅広いことが示されています※6。この章では、代表的な例を挙げながら、「こんなサインがあれば相談を考えてよい」という目安を整理します。

いびき・無呼吸がある場合の目安

過眠が続く人の中には、夜間の睡眠の質が大きく低下しているケースがあります。特に、家族やパートナーから「いびきが大きい」「寝ている間に呼吸が止まっているように見える」と指摘されたことがある場合には、睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性も考えられます。

この場合、本人は長時間眠っているつもりでも、実際には浅い眠りが断続的に続いており、脳や体が十分に休めていないことがあります。その結果、朝すっきり起きられず、日中に強い眠気や集中力の低下が出やすくなります。こうしたサインが重なっているときは、「年齢のせい」「疲れているだけ」と片づけず、医療機関に相談することが勧められます。どの科に行くか迷う場合でも、まずはかかりつけ医に状況を伝えるところから始めて構いません。

眠気が異常に強い場合の注意点

日中の眠気があまりにも強く、仕事中や会話中に意識が飛んでしまう、運転中に眠り込みそうになるといった状態がある場合には、注意が必要です。このような眠気は、過眠症やナルコレプシーなど、専門的な評価が必要な睡眠障害が背景にあることもあります。

また、甲状腺機能の低下など内科的な問題が原因で、強い倦怠感や眠気が出ているケースもあります。いずれの場合も、自己判断で薬を調整したり、市販の眠気対策に頼ったりすることは避けたほうが安全です。生活に支障が出ている、あるいは安全面に不安がある眠気が続くときは、早めに医療機関へ相談しましょう。

過眠の背景は人それぞれで、「これに当てはまるからこの病気だ」と単純に決められるものではありません。大切なのは、気になるサインに気づいた段階で専門家につなげることです。

よくある質問:回復期、仕事、寝るほど治るのか

ここでは、「ずっと寝ていていいのか」「回復期の過ごし方は正解なのか」といった、検索でも多く見られる疑問を取り上げます。答えを一つに決めつけるのではなく、判断の目安と次の行動につながる考え方を整理します。

Q:寝るほど治るのでしょうか?

睡眠は、うつ病の回復において重要な役割を果たします。特に初期や回復期には、脳がエネルギーを回復させるために多くの睡眠を必要とすることがあり、「寝ること自体が治療の一部」と考えて差し支えありません。一方で、数か月単位で強い過眠が続き、生活がほとんど成り立たない状態が変わらない場合には、治療方針や併存症の有無について医師と相談する価値があります。目安としては、寝ている時間の長さだけでなく、起きている時間に小さな回復の兆しが出ているかを見てください※1。

Q:回復期なら、ずっと寝ていても大丈夫ですか?

回復期であっても、眠気が強い時期はあるため、「回復期なのに寝ているから失敗だ」と考える必要はありません。ただし、少しずつでも食事や会話、身の回りのことに関心が戻ってきているかは一つの判断軸になります。全く変化がなく、不安や自己否定が強まっている場合には、回復の途中で立ち止まっている可能性があるため、記録をもとに現状を整理し、主治医に相談してみてください。

Q:休職中は、どう過ごすのがよいのでしょうか?

休職の初期段階では、「休むこと」そのものが回復のための大切な役割になります。この時期に無理に生活を整えようとすると、かえって症状が長引くこともあります。エネルギーが少し戻ってきたと感じられるようになったら、起床時刻をそろえる、短時間だけ外の光を浴びるといった小さな行動を試してみると、生活リズムを取り戻すきっかけになります。焦らず、段階を踏むことが大切です。

まとめ:今日できる一歩と、相談すべきサイン

うつ病でずっと寝てしまう状態は、甘えや怠けではなく、心と体が回復しようとする過程で起こり得る反応です。大切なのは、「回復に向かっているサインか」「相談が必要なサインか」を見分ける判断軸を持つことです。

今日できる一歩としては、まず「寝ることも治療の一部だ」と自分に許可を出すことが挙げられます。余裕がある日は、朝にカーテンを開けて光を入れる、起きた時間を記録するなど、負担の小さい行動を一つだけ選んでみてください。

一方で、生活が成り立たないほどの過眠が続く、強い不安や希死念慮がある、眠気が急激に悪化していると感じる場合には、一人で抱え込まず医療機関に相談することが重要です。判断に迷ったときは、かかりつけ医や心療内科への相談から始めても構いません。

本記事で触れたように、睡眠の質や生活リズムは、環境や習慣の工夫で少しずつ整えられることもあります。必要に応じて、睡眠環境の整え方やストレスへの対処法を解説した関連記事も参考にしながら、あなたのペースで回復への道を歩んでください。

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・参考

※1 心身の不調への対応(うつ病の身体症状:不眠・過眠) | e-ヘルスネット(厚生労働省)
※2 気分障害に併存する睡眠障害 | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
※3 健康づくりのための睡眠ガイド2023(生活習慣・睡眠環境) | 厚生労働省
※4 うつ病でずっと寝ているのは甘え?原因と今日からできる対処法 | Anamne(おうち病院)
※5  睡眠障害 | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

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