
本多 洋介
群馬大学医学部卒業。
伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院(いずれも循環器内科)を経て、Myクリニック本多内科医院院長。
- 免許・資格
総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション学会専門医、軽カテーテル的大動脈弁植え込み術指導医(Sapienシリーズ、Evolutシリーズ)
朝方や寝起きに、突然ふくらはぎがつって激痛で目が覚めた経験はありませんか。痛みが数分続くだけでもつらいですが、それが何度も起こると「年齢のせいなのか」「水分不足なのか」「何かの病気のサインなのか」と不安になりますね。筋肉を動かさないため固まりやすい就寝中は、冷えや血行不良、水分・ミネラル不足が重なりやすい時間帯だけに、寝起きに伸びをした時に足がつりやすくなるのです。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、寝起きに足がつる原因を整理し、今すぐできる対処法と、再発を防ぐための予防策までをわかりやすく解説します。もう朝の痛みに振り回されないために、今日からできる改善ポイントを一緒に確認していきましょう。
寝起きに足がつる主な原因

寝起きのこむら返りは、ひとつの要因だけで起こる現象ではありません。睡眠中の姿勢による筋肉の状態、血流の変化、水分やミネラルの不足、冷えといった生活環境の影響に加え、年齢や体調、基礎疾患などが重なり合って生じることが多いと考えられています。
まずは、どのような仕組みで足がつるのかを知って、自分に当てはまりそうな原因を把握しましょう。
筋肉の緊張と就寝中の姿勢による影響
睡眠中は長時間同じ姿勢が続くため、ふくらはぎの筋肉はほとんど動きません。そのため、筋肉は徐々に柔軟性を失って緊張しやすい状態になります。このような状態で目覚めた直後に布団の中で大きく伸びをすると、固まっていた筋肉が一気に引き伸ばされますが、その反射で次に強い収縮が起こります。これが、伸びをした瞬間にふくらはぎが激しくつる主な理由です。
特に足先を下に伸ばすような動きは、ふくらはぎの筋肉を急激に緊張させるため、こむら返りを引き起こしやすくなります。
水分・ミネラル不足によるこむら返り
就寝中、人は汗や呼吸を通じて多くの水分を失っています。一般に、一晩で約500ml以上の水分が体外に排出されるのだそうです。※1
睡眠中は水分補給ができないため、体は軽い脱水状態に傾きやすくなります。水分と同時にナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルも失われると、筋肉の収縮と弛緩を調整する電解質のバランスが乱れ、筋肉が正常にコントロールできなくなって寝起きに足がつりやすくなります。厚生労働省のデータにおいてもこむら返りは脱水のサインのひとつと位置づけており、日常的な水分管理の重要性を指摘しています。※2
冷えや血行不良による筋肉の収縮
夜間から明け方にかけては体温が下がりやすく、特に足元が冷えやすい時間帯です。冷えによって血管が収縮すると血流が悪くなり、筋肉に十分な酸素や栄養が行き渡りにくくなります。その結果、筋肉は緊張した状態になり、わずかな刺激でもつりやすくなります。
冬場に寝起きのこむら返りが増える人が多いのは、気温の低下による冷えと血行不良が大きく関係しているためです。夏であっても、冷房の効いた環境なら同様の状態が起こることがあります。
年齢・妊娠・病気が関係するケース
年齢を重ねると筋肉量が徐々に減少し、神経や血管の働きも低下しやすくなります。そのため、若い頃と比べて筋肉がつりやすくなる傾向が見られます。妊娠中も血液量の変化やミネラルバランスの乱れが起こりやすく、こむら返りが頻発する傾向が強いです。
糖尿病や下肢静脈瘤、動脈硬化、腎機能の低下などが背景にある場合、足のつりが体調不良のサインとして現れることもあります。頻繁に強い痛みを伴うこむら返りが続く場合や、しびれやむくみを伴う場合には、早めに医療機関へ相談してください。
寝起きに足がつるときの正しい対処法

朝、突然こむら返りが起こると、強い痛みに驚いて思わず体を動かしてしまいがちです。しかし、慌てた動きは筋肉の収縮をさらに強め、痛みを長引かせる原因になります。寝起きに足がつったときは、まず状況を受け止め、落ち着いて筋肉を元の状態に戻していく意識が大切です。
ここでは、痛みを悪化させないための正しい対処法を順を追って解説します。
ゆっくり筋肉を伸ばして戻す方法
足がつった瞬間は、無理に立ち上がらず、まずはベッドの上で姿勢を安定させましょう。ふくらはぎがつっている場合には、つった側の足首をゆっくりと手前に引き、かかとを前に押し出すような感覚で筋肉を伸ばしていきます。このとき、反動をつけたり強く引っ張ったりすると、筋肉が防御反応を起こして痛みが増すため注意してください。
呼吸を止めず、息を吐きながらじわじわと伸ばすと、筋肉が少しずつ緩みます。痛みが和らぐまで数十秒から数分かかることもありますが、焦らず待ちましょう。こむら返りが起きた際は急な動きを避け、ゆっくりと筋肉を伸ばすことが基本的な対処法です。※3
温める・マッサージを行う方法
筋肉の強い収縮が落ち着いてきたら、次に意識したいのが血行の回復です。冷えや血流の低下は、筋肉の緊張を長引かせる要因になるため、温めると回復を早めます。蒸しタオルや湯たんぽを使ってふくらはぎ全体をじんわりと温める方法は、血管が広がって筋肉をリラックスさせる効果があります。
十分に温まったら、指の腹で軽くさする程度のマッサージを行ってこわばりをほぐしましょう。強く揉み込むと筋線維を刺激しすぎて逆効果になることがあるため、心地よいと感じる強さにとどめることが大切です。
無理な立ち上がり・歩行を避ける理由
痛みが出た直後に、無理に立ち上がったり歩こうとしたりすると、回復途中の筋肉に再び強い負荷がかかって再度つったり痛みが鋭くなったりしがちです。こむら返りが起きたあとは、痛みが完全に引くまでベッドの上で安静を保ち、足首や膝を小さく動かす程度にとどめましょう。
つりの再発リスクを下げるために、筋肉の状態が落ち着いたらゆっくりと体を起こし、違和感がないことを確認してから立ち上がりましょう。
関連記事:寝起きの体温が高い?正常な体温変動と睡眠の質を改善する5つの方法
予防の基本は、就寝前のコップ一杯の水分補給、軽いストレッチ、足元の保温です。特に明け方は体温が下がりやすく、レッグウォーマーなどでふくらはぎを温めておくと効果的です。
つってしまったときは慌てず、ゆっくりと足首を手前に引いて筋肉を伸ばしてください。強く引っ張ると逆効果です。
ただし、毎晩のように繰り返す場合、しびれやむくみを伴う場合、糖尿病などの持病がある場合は、単なる筋肉の問題ではない可能性があります。早めに内科や整形外科を受診し、背景に隠れた疾患がないか確認しましょう。適切な対処で、快適な目覚めを取り戻せます。
再発を防ぐための予防策

寝起きに起こる足のつりは、一度経験すると「また起きるのではないか」という不安につながりやすい症状です。ただし、多くの場合は日々の生活習慣を少し見直すことで、再発の頻度を下げられます。無理なく続けやすい予防策を紹介します。
就寝前の水分・ミネラル補給
就寝中は水分が失われやすいため、就寝前の時点ですでに水分不足だと、夜間から明け方にかけて脱水傾向が強まり、筋肉がつりやすい状態になります。就寝前にコップ1杯程度の水や白湯を飲んで、体内の水分量を安定させましょう。
尿意で目が覚めるのを避けるためにも水分を大量に飲む必要はありません。ただし、日中に汗をかきやすい人や就寝中に冷房を使用する人は、やや多めに摂取するとよいでしょう。あわせて、食事からナトリウムやカリウム、マグネシウムなどをバランスよく摂ることが、筋肉の収縮と弛緩を支える電解質バランスの維持に役立ちます。
ストレッチ・軽い体操を取り入れる
就寝前に下半身の筋肉をゆるやかに動かしておくと、筋肉の緊張が和らいで血流も整いやすくなります。ふくらはぎや太ももを中心に、反動をつけず、呼吸を止めないよう意識しながら伸ばしてみてください。激しい運動を行う必要はなく、布団に入る前の数分間、体をほぐす感覚で続ければOKです。
冷え対策と寝室環境の整え方
冷えによる血行不良は、寝起きの足のつりを招きやすい要因のひとつです。特に明け方は体温が下がりやすく、足元だけが冷えてしまうケースも少なくありません。レッグウォーマーを使ってふくらはぎまわりを保温すると、血流が保たれて筋肉の過度な緊張を防げます。なお、靴下は就寝中の体温調節を妨げかねないため着用はできるだけ避けてください。
寝室の室温や冷房の風向きにも注意が必要です。冷たい風が直接足に当たらないよう調整し、快適に眠れる環境を整えることが、夜間から朝にかけての体の負担を軽減します。こうした小さな工夫の積み重ねが、寝起きのこむら返りを遠ざけることにつながります。
関連記事:【上級睡眠健康指導士監修】足を上げて寝ると気持ちいい!楽なのはなぜ?効果やデメリットも解説
病院を受診すべきケース

寝起きのこむら返りの多くは、水分補給や冷え対策、ストレッチなどの生活習慣を見直すことで軽減します。ただし、中には単なる筋肉のトラブルではなく、体の不調や疾患が背景にある場合もあります。医療機関に相談するかどうかの目安について解説します。
頻繁につる・長く続く場合
こむら返りが毎晩のように起こる、あるいは一度つると痛みや違和感が長時間続く状態が続いている場合は、筋肉そのものだけでなく、神経や血管の働きに異常が隠れている可能性があります。睡眠中の脚の異常な動きが睡眠の質を低下させる「周期性四肢運動」などの睡眠関連障害が関係する可能性も考えられます。※4
日常生活に支障が出ている場合や、睡眠の質が明らかに低下していると感じる場合は、早めに医療機関で相談してください。
しびれ・むくみ等の症状を伴う場合
足のつりに加えて、しびれやむくみ、左右で差のある痛みがあるなら、血管や神経のトラブルがあるかもしれません。血流が滞って筋肉や神経に十分な酸素が届かない、神経の圧迫や障害によって異常な感覚が出ているなどが原因となっている可能性もあります。こうした症状を放置すると日常動作に影響が出やすいため、自己判断せず医師の診察を受けることが大切です。
糖尿病・心血管疾患との関連が疑われる場合
糖尿病や動脈硬化などの持病がある人では、足のつりが血流や神経の異常を示すサインとして現れることがあります。血糖コントロールの乱れや血管の硬化は、末梢の筋肉や神経に影響を及ぼしやすく、こむら返りを引き起こす要因になります。すでに基礎疾患がある場合や健康診断で指摘を受けている場合は、「よくある症状」と片づけず、主治医に相談することが重要です。
まとめ|寝起きのこむら返りは原因を知れば必ず改善できる
寝起きに足がつる原因の多くは、水分やミネラルの不足、冷え、血行不良、筋肉の緊張といった生活習慣や環境による影響です。原因を理解したうえで、水分補給や就寝前のストレッチ、寝室環境の調整を意識し、朝のこむら返りを予防しましょう。一方で、頻繁に繰り返す場合やしびれやむくみを伴う場合は、早めに受診する姿勢も欠かせません。原因を知り、できることから少しずつ改善を重ねていくことで、朝の痛みに悩まされない、安心できる目覚めに近づいていけるでしょう。
参考
※1 寝ているときに足がつる原因とその対処法!こむら返りの治し方| 小林製薬
※2 熱中症予防のために | 厚生労働省
※3 「足がつる」を慢性化させない| オムロン ヘルスケア
※4 睡眠と健康:成人期(勤労者) | 保健医療科学




