睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年6月17日読了目安時間: 6

【医師監修】食後の眠気がひどい原因はなに?血糖値スパイクと糖尿病との関係を解説

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

食後の耐えがたい眠気は本当に辛いですよね。食後の強い眠気の原因は、単なる満腹感ではなく「血糖値スパイク」の症状かもしれません。

この記事では、食後のひどい眠気が症状となる「血糖値スパイク」と「糖尿病」について詳しく解説します。食後の辛い眠気の原因と具体的な対策を知りたい方はぜひ最後まで読んでみてください。

まずは知っておきたい:食後の眠気の原因「血糖値スパイク」とは

食後に襲われる強い眠気やだるさに悩んでいる方は少なくありません。その症状には「血糖値スパイク」が関わっている可能性があります。

血糖値スパイクは、放っておくと糖尿病や心筋梗塞、脳卒中のリスクを高めることがあります。

血糖値スパイクの仕組み

普段の血糖値は正常なのに、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する現象を血糖値スパイクといいます。まるで突出した「棘(スパイク)」のように血糖値が急上昇することから、この名前が付けられました。

食事で炭水化物を摂取すると、炭水化物はブドウ糖として血液中に取り込まれます。その後、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され血糖値を緩やかにコントロールします。健康な人の場合、食後2〜3時間ほどで、血糖値は食事前と同じ水準まで戻ります。

しかし血糖値スパイクが起こる場合、インスリン分泌量が減少したりタイミングが遅れたりします。その結果、血糖値が急激に上昇してしまうのです。そして、上昇した血糖値を下げようと大量のインスリンが分泌され、今度は血糖値が急激に低下してしまうのです。この血糖値の上昇と低下の急激な変動パターンが、血糖値スパイクの特徴です。

血糖値スパイクで起こる症状

血糖値スパイクの最も代表的な症状は、食後に現れる強い眠気やだるさです。これは、急激な血糖値の上昇に対応して過剰に分泌されたインスリンによって血糖値が急降下し、脳に供給されるブドウ糖が不足すること等によって起こると考えられています。脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足すると、眠気やだるさといった症状が現れるのです。

糖分摂取とインスリンの関係

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中から糖を筋肉や肝臓、脂肪の中に取り込む重要な役割を担っています。

食事から糖質を摂取すると、糖は血液中をめぐり全身へ運ばれます。そして膵臓からインスリンが分泌されるのです。インスリンの働きで、糖は血液中から様々な組織へ取り込まれます。取り込まれた糖はエネルギーとして使われます。

インスリンの働きに問題が生じると血糖値が下がらなくなるのです。食後数時間たっても血糖値が下がらない状態が慢性的に続くのが糖尿病です。

ひどい眠気に隠れた糖尿病との関連

食後の眠気がひどいと感じる症状は、糖尿病の初期症状の可能性もあります。血糖値の異常な変動が持続すると、膵臓に負担がかかり、インスリン分泌機能が徐々に低下する原因となります。これにより糖尿病の発症リスクが高まるのです。

空腹時血糖値が正常でも、食後の血糖値スパイクが持続する「隠れ糖尿病」には、特に注意が必要です。

HbA1cと血糖値の検査でわかること

HbA1cは「ヘモグロビン・エー・ワン・シー」と読みます。健康診断の基本検査項目の一つで、糖尿病のリスクを判別します。この数値が5.6%以上になると血糖高値と判断されます。

参考:HbAlcについて, 第3章 保健指導対象者の選定と階層化
糖尿病の初期症状としての眠気

糖尿病初期ではほとんど自覚症状がないことが多いですが、食後に強い眠気を感じる可能性はあります。眠気を感じるメカニズムとしては、高血糖となった後に逆に血糖が下がることが考えられているほか、血糖が上がることによってオレキシンという物質の分泌が抑制され、覚醒を維持しにくくなるという説もあります。

見逃せないその他のリスク要因

運動不足や、喫煙、慢性的な寝不足、肥満などの生活習慣は糖尿病のリスクを高めます。

以下の症状は糖尿病によくみられる症状です。食後の強い眠気に加えて、このような症状がある時は、専門医療機関に相談することをおすすめします。

  • 夜間頻尿
  • 喉の渇き
  • 手足のしびれ

参考:のどの渇き、多飲・頻尿の症状は「糖尿病」なのかも?!知っておくべき5つの真実, 糖尿病治療ガイド(日本糖尿病学会編・著 2018-2019)

血糖値スパイクを引き起こす主な原因

食後のひどい眠気を引き起こす血糖値スパイクは、日常生活の様々な要因で起こる可能性があります。ここでは血糖値スパイクの主な原因を解説します。

食べ方・早食い・ドカ食いによる過食

食事の仕方や内容は、血糖値の変動に大きな影響を与えます。特に早食いや「ドカ食い」(一度に大量に食べる習慣)は注意が必要です。これらは血糖値スパイクを引き起こす主な原因の一つです。

食事をすると、摂取した炭水化物などが消化されてブドウ糖となり、血液中に取り込まれることで血糖値が上昇します。通常、食事をすると、ブドウ糖は細胞に取り込まれエネルギーになり、肝臓や筋肉に貯蔵されます。

しかし早食いをすると、食べ物が短時間で胃腸へ流れ込みます。そのため糖質の吸収が急激に進むのです。またドカ食いで一度に大量の糖質を摂取することも血糖値の急激な上昇を招きます。

丼物やラーメンといった炭水化物中心の食事を単品で食べること。

短時間でかきこむような食べ方は、血糖値スパイクを起こしやすい代表例なので気をつけましょう。

ストレスや睡眠不足の影響

現代社会において多くの人が抱えるストレスや睡眠不足も、血糖値スパイクの間接的な原因となることがあります。生活習慣の乱れやストレスを感じると、体はコルチゾールやアドレナリンといった「ストレスホルモン」を分泌します。これらのホルモンには、血糖値を上昇させる作用があります。

睡眠不足は食欲をコントロールするホルモンバランスも崩します。食欲が増し、高カロリー・高糖質なものを欲しやすくなる傾向があります。

このように、慢性的なストレスや睡眠不足は、血糖値を上がりやすくしてしまうことがあります。

肥満・運動不足の影響

肥満、特に内臓脂肪型肥満は、血糖値スパイクの大きなリスク要因です。

運動不足も血糖コントロールに悪影響を及ぼします。運動には血糖値の上昇を抑える効果があります。

運動習慣がないと、筋肉量が減り、ブドウ糖の消費が少なくなります。

その結果、膵臓に負担がかかり、インスリン分泌機能が徐々に低下する原因となります。

デスクワーク中心で座っている時間が長い人や、日常的に体を動かす機会が少ない人は注意しましょう。

運動不足は、エネルギー消費量の低下を通じて肥満にもつながりやすいため、肥満と運動不足は相互に関連し合って血糖値スパイクのリスクを高めます。

食後のひどい眠気を防ぐための食生活のコツ

食後の眠気がひどいと感じる症状は、日々の食生活を少し工夫することで、対策することができます。ここでは、食後のひどい眠気の対策になる効果的な食生活のコツについて詳しく見ていきましょう。

食べる順番と適切な栄養バランスを意識する

食後の血糖値の急上昇を抑えるためには、「食べる順番」を意識することが効果的です。食事の最初に食物繊維が豊富な野菜などを摂る「ベジファースト」は代表的な血糖値対策の方法です。

食物繊維は、後から食べる糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を防ぐ働きがあります。

具体的な食べる順番は以下の通りです。

  1. 野菜やきのこ、海藻類(サラダ、おひたし、味噌汁の具など)から食べましょう。
  2. 次に、肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク質や脂質を摂ります。
  3. そして最後に、ご飯やパン、麺類といった炭水化物を食べましょう。

この順番で食べると、炭水化物の急激な吸収を防ぎ、血糖値の上昇が緩やかになることが期待できます。

一度に食べ過ぎないコントロール方法

一度に大量に食べる「ドカ食い」や「早食い」は注意が必要です。これらは食後の血糖値を急上昇させてしまいます。

食べ過ぎを防ぐためには、以下の点を意識することが大切です。

  • 「腹八分目」を意識する:食事の量を少し控えるだけでも、血糖値の急激な変動を抑える効果が期待できます。
  • よく噛んでゆっくり食べる: 咀嚼回数を増やすことで、満腹中枢が刺激され、満足感を得やすくなります。一口30回程度噛むことを目標に、時間をかけて食事を楽しむようにしましょう。

食事の時間を規則正しくすることも、血糖値コントロールには欠かせません。朝食を抜いたり、食事の間隔が空きすぎたりすると、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなります。

なるべく決まった時間に食べることで、血糖値の安定につながります。食事の間隔がどうしても空く場合は、間食するのも良い対策です。ナッツ類やヨーグルトなど、血糖値が上がりにくい食品を少量摂りましょう。

低GI食品でおすすめの食材選び

GI値は、食事全体の炭水化物の食後血糖値の上昇能を示す指標です。血糖値の上昇が緩やかなものを低GI食品といいます。
以下に高GI食品と低GI食品の一般的な例を挙げます。

  • 高GI食品の例:
    • 精製された白い炭水化物(白米、食パン、うどんなど)
    • じゃがいも
    • 菓子類
  • 低GI食品の例:
    • 玄米、全粒粉パン、そば
    • 葉物野菜、きのこ類
    • 豆類、海藻類

 

食後の眠気対策として、日常の食事に低GI食品を上手に取り入れることがおすすめです。例えば白米を玄米や雑穀米に替えたり、食パンを全粒粉パンやライ麦パンにするのもおすすめです。

全ての食事を低GI食品にする必要はありませんが、主食や間食を選ぶ際に意識するだけでも効果があります。

適度な運動と生活習慣の見直し

血糖値管理において運動と生活習慣の改善は不可欠な要素です。軽い運動が効果的だとされています。

軽い運動で血糖値を安定させる

食後30分〜1時間後の運動が最も効果的です。この時間帯に軽いウォーキングやストレッチを行いましょう。血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できます。会話が可能な程度の速歩きもおすすめです。

また食後に限らず運動習慣をつけることは、基礎代謝の増加やインスリン抵抗性の改善を通じて中長期的に血糖の安定につながります。

筋力トレーニングをする場合、大きな筋肉を重点的に鍛えると効果的です。スクワットやヒップブリッジなどの下半身運動は大きな筋肉を鍛えます。

質の高い睡眠とストレスケアの重要性

血糖値コントロールに悪影響になる睡眠不足やストレスの対策には質の高い睡眠が必要です。また昼食後は誰でも眠くなりやすい時間帯ですが、眠気が特に強い場合には、血糖の影響というよりも睡眠不足が大きく影響している可能性も高いです。

夜の睡眠時間は7時間程度を目標にしてみましょう。寝る1〜2時間前に湯船に浸かって体を温めることも、その後の安眠につながります。寝る前には、ストレッチや瞑想、アロマなどリラックスできる活動をルーティーンとして行ってみてください。ハーブティーなどを飲むのも良いでしょう。

寝付きが悪い方は特に、早くベッドに入ることを強く意識するよりも、リラックスモードに切り替える習慣・ルーティーンを行うのがおすすめです。緊張をしっかり解いてからベッドに入ることによって、スムーズに寝つくことができます。ルーティーンを行うことによって寝るのが10分遅くなったとしても、結果的により長く、質の高い睡眠をとることができるでしょう。

まとめ:食後の眠気を改善して健康的な生活を

いかがでしたか?食後の眠気がひどいと感じる症状は、血糖値スパイクが原因である可能性があります。しかし、適切な対策により改善が期待できます。

最後に大切なポイントを3つにまとめます。

  1. ゆっくり食べる
    よく噛んで時間をかけて食事をしましょう。そうすることで血糖値の急上昇を抑え、満腹感も得やすくなります。低GI食品を取り入れることも意識してみましょう。
  2. 適度に運動する
    よく噛んで時間をかけて食事をしましょう。そうすることで血糖値の急上昇を抑え、満腹感も得やすくなります。低GI食品を取り入れることも意識してみましょう。
  3. 質の高い睡眠をとる
    睡眠不足が血糖値スパイクにつながる恐れがあります。また血糖値が問題ない場合にも、睡眠不足があれば眠気につながります。寝る1〜2時間前の入浴やほんの10分のナイトルーティンで、睡眠の質を高める工夫をしてみましょう。

これらのポイントの中から、できそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事が、食後の眠気改善の参考になれば幸いです。

参考情報:

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