睡眠コラム by 松岡 雄治2026年6月25日読了目安時間: 5

シニアが眠れない原因ってどんなものがあるの?年齢による睡眠の変化と今日からできる改善方法

「夜中に何度も目が覚める」「朝早く起きてしまう」「寝ても疲れが取れない」年齢を重ねてから眠りが浅くなり、体力の低下や病気ではないかと不安を抱える方は少なくありません。加齢に伴う睡眠リズムや体内時計の変化は自然な現象であり、この悩みは決して珍しいものではありません。

高齢者の眠れない理由は、一つではありません。この記事では、年齢による自然な睡眠の変化と、生活習慣や病気が関係する不眠の違いにも触れています。早速今日からご自宅でできる対策はもちろん、医療機関を受診すべき目安を確認してみましょう。

 

高齢者が眠れない主な原因

成人の30〜40%が不眠症を抱えていますが、加齢とともに不眠症の割合は上昇し、60歳以上では半数以上に認められます。※1

眠れない原因は一つではなく、複数の要因が重なっていることが多いです。加齢による体の変化に加えて、日中の過ごし方や持病、ストレスなどが影響しているという特徴がみられます。まずはご自身やご家族の状況が、次のどの要因に当てはまるかをチェックしてみてください。

※1 厚生労働省 e-健康づくりネット(健康日本21アクション支援システム)「不眠症」

1. 加齢により体内時計が変化する

年齢を重ねると体内時計が変化し、早寝早起きになりやすくなります。これは、夜の眠気や朝に目覚めるタイミングが、年齢とともに前倒しになるためです。また、夜間の睡眠時間も加齢とともに少しずつ短くなります。年齢ごとの目安は次のとおりです。※2

  • 15歳前後:約8時間
  • 25歳:約7時間
  • 45歳:約6.5時間
  • 65歳:約6時間

成人後は、およそ20年ごとに30分程度ずつ減るとされています。なお、日中に強い眠気や倦怠感がなければ、年齢に合わせて自然に短くなった睡眠時間を無理に増やそうとする必要はありません。

年齢にともなう体内時計や睡眠の変化は、自然な生理現象として受け止めましょう。

※2 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

2. 日中の活動量が少ない

日中の活動量が少ないと、夜になっても自然な眠気が起こりにくくなります。特に退職などで在宅時間が長くなると、外出や運動の機会も減りがちです。

また、太陽の光を浴びる時間や体を動かす量が不足すると、体内時計のリズムが崩れやすくなり、夜になってもほどよい疲労感を得られず、寝つきが悪くなることがあります。

3. 昼寝や寝床で過ごす時間が長すぎる

寝床で過ごす時間が長すぎるとかえって睡眠の質が下がることがあります。特に高齢になると、昼寝の回数が増えやすく、夜によく眠れなくなる傾向が強くなります。

「しっかり寝なければ」と思い、早い時間から寝床に入っても、眠れずに長く過ごすと逆効果になることが多いです。寝床で眠れない時間が続くと、体が「寝床は眠れない場所」だと間違って認識してしまう場合があります。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、高齢者が8時間を超えて寝床にいるのに睡眠で休養が十分にとれていない場合、健康リスクが高まると指摘されています。そのため、質のよい睡眠のためには、寝床で過ごす時間を適切に管理することが大切です。※2

4. 頻尿や、持病、薬の影響で眠りが分断される

夜間の頻尿や体の不調が、睡眠を途切れさせていることがあります。たとえば、夜間頻尿、関節の痛み、皮膚のかゆみなどで、夜中に目が覚めるケースです。

呼吸の苦しさや、服用している薬の副作用が睡眠を妨げることもあります。もし心当たりのある症状があれば、自己判断で睡眠薬の量を増やさずに、かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。

5. ストレスや寝室環境が眠りを妨げる

心理的なストレスや寝室の環境も、眠りを妨げる要因となります。不安や孤独感、家族の介護などによるストレスは、交感神経を刺激し、寝つきを悪くすることがあります。

室温・湿度・照明の明るさや物音などの環境も無視できません。体に合わない寝具による不快感が、途中で目が覚める原因になることもあります。

 

高齢者の眠れない悩みで注意したい睡眠障害

生活習慣の乱れではなく、治療が必要な疾患が隠れている場合があります。加齢現象と思い込んでいると、睡眠時無呼吸症候群やレム睡眠に関わる障害の発見が遅れることがあります。以下の症状に心当たりがある場合は、医師への相談を検討してください。

1. 不眠症は眠れないことと日中の不調が続く

不眠症は、夜眠れないことだけでなく、日中の不調が続くことが特徴です。眠れない症状には、なかなか寝つけない入眠障害、夜中に何度も目が覚める中途覚醒、朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒があります。

これらに加えて、日中の倦怠感や意欲の低下、集中力の低下などが続いているかどうかが重要です。不眠と日中の不調が週3日以上、3か月以上続く場合は、慢性的な不眠症と考えられます。※3

※3 厚生労働省 e-健康づくりネット(健康日本21アクション支援システム)「不眠症」

2. いびきや無呼吸がある場合は睡眠時無呼吸にも注意する

大きないびきや睡眠中の無呼吸がある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。主な特徴は以下の通りです。

  • 大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まる様子を家族に指摘される
  • 起床時の頭痛や、日中の強い眠気がある

こうしたサインがあるときは、生活習慣の改善だけでなく医療機関での検査や治療が必要なケースもあります。

3. 寝言や大きな体動がある

睡眠中に見られる異常な行動も、気をつけたいサインのひとつです。たとえば、以下のような様子があげられます。

  • 睡眠中に大声を出す、手足を大きく動かすなど、夢に合わせて体が動く
  • 足がむずむずして、じっとしていられず動かしてしまう
  • 睡眠中に大声を出す、手足を大きく動かすなど、夢に合わせて体が動く
  • 足がむずむずして、じっとしていられず動かしてしまう

場合によっては本人がケガをしたり、あるいは同室の家族に危険が及んだりする可能性があるります。心配な場合は、早めに睡眠外来など専門の医療機関に相談しましょう。

 

今日からできる高齢者の不眠対策

ここでは、今日から取り入れやすい5つの方法を解説します。まずは自宅でのセルフケアから始めてみましょう。改善しない場合は、必要に応じて医療機関に相談しましょう。

1. 朝は太陽光を浴びて体内時計を整える

朝に太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、夜は眠りにつきやすくなります。そのため、起きたらすぐにカーテンを開けて、部屋の中に太陽の光を取り入れましょう。また、短時間でも庭先やベランダに出て光を浴びる習慣をつけるのも効果的です。

さらに、毎朝決まった時間に朝食を取ることもおすすめです。胃腸を動かすことが、体内時計を整える助けになると考えられています。

2. 日中は無理のない範囲で体を動かす

日中に体を動かすと、夜に適度な疲労感が生まれ、深い睡眠につながりやすくなります。ただし、無理に激しい運動である必要はありません。

たとえば、散歩や家事、軽い体操など、無理のない活動を取り入れてみましょう。日中に起きて活動する時間を意識的に確保することで、夜の睡眠をサポートします。

3. 昼寝は短めにして夕方以降は避ける

昼寝をするなら、短めにして夕方以降は避けるのがポイントです。昼寝そのものは悪い習慣ではありませんが、日中の長い昼寝は夜の眠りを妨げる原因になります。

30分以上の昼寝の習慣は、将来の健康上のリスクを高めるとの報告もあります。目覚ましをかけるなどして30分未満にとどめ、夕方以降のうたた寝はできるだけ避けましょう。

4. 眠れないまま寝床で長く過ごしすぎない

眠れないときは、寝床で長く過ごしすぎないことが大切です。眠れないのに寝床にいる時間が続くと、寝室が「眠れない場所」として認識してしまう場合があります。

20分ほど経っても眠れないときは、いったん寝床を離れて別の部屋へ移りましょう。照明を落として静かに過ごし、眠気を感じてから再び寝床に戻ると、寝つきやすくなります。

5. 寝室の温度や照明や寝具を見直す

寝室の環境を整えることで、夜中に目が覚めるのを防ぎやすくなります。まずは、睡眠を妨げる外部の要因を一つずつ取り除いていきましょう。たとえば、季節に合わせてエアコンを使い、暑すぎず寒すぎない室温に調節します。また、街灯などの光が部屋に差し込む場合は、遮光カーテンを使って寝室を暗くすると効果的です。

さらに、体に合わない寝具は体への負担や夜中に目が覚める原因になることがあります。寝具に違和感があるときは、寝具を見直してみてください。

 

医療機関に相談したい目安

セルフケアで改善しない場合は、迷わず医師に相談しましょう。「高齢だから仕方ない」と我慢し続けると、認知機能や全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。

1. 眠れない状態と日中の不調が長く続いている

眠れない状態が続き、さらに日中も調子が悪いと感じる場合は、早めに相談しましょう。睡眠時間が短いだけでなく、日中に強いだるさや眠気があるかどうかも確認することが大切です。

集中力ややる気がなくなる、気分が落ち込む、食欲がなくなるといった症状が続くこともあります。こうした状態が長引いている場合は、内科やかかりつけ医に状況を伝えてみましょう。

2. いびきや無呼吸や夜間の異常行動がある

家族が気づいたサインが、隠れた病気の早期発見につながることがあります。特に、次のような症状に注意してください。

  • 大きないびきをかく
  • 呼吸が止まる
  • 急に激しく動く
  • 大声を出す

これらのサインは、睡眠障害やほかの病気が原因で現れることがあります。気になる症状があれば、早めに睡眠外来や専門医の診察を受けることをおすすめします。

 

高齢者の眠れない悩みは原因を分けて対策しよう

高齢者の眠れない悩みは、加齢による自然な変化だけでなく、日中の活動量低下、長すぎる床上時間、昼寝、頻尿、寝室環境など複数の要因が関係しています。まずは、日々の睡眠記録をつけ、朝の光を浴びる、寝床で長く過ごしすぎないといった生活習慣の見直しから始めてください。

ただし、日中の不調が長く続く場合や、いびき・異常行動などの気になる症状がある場合は、一人で抱え込まずに医療機関へ相談してください。ご自身の状態を正しく把握し、無理なく休める環境をつくっていきましょう。

 

【メタディスクリプション】

高齢者が眠れない原因はさまざまです。本記事では、加齢による睡眠リズムの変化、日中の活動量低下、昼寝、頻尿、ストレス、寝室環境などについて徹底解説します。自宅でできる改善方法から、睡眠薬に頼る前に見直したい生活習慣、医療機関に相談したい目安までわかります。