睡眠コラム by 南 茂幸2026年6月24日読了目安時間: 5

産後に寝ても寝ても眠いのはなぜ?原因といつまで続くか、今日からできる対処法

南 茂幸
理学療法士/睡眠コンサルタント

理学療法士の資格を持つ睡眠コンサルタント。睡眠について数名から100名以上の規模でセミナー講師として登壇、他にもコンサルティング、ラジオ出演、睡眠グッズ監修等幅広く活躍。「睡眠の質が人生の質」と捉え、睡眠は自分への投資であると考え、現在出版準備中。

出産後、「赤ちゃんが寝ている間に休んでいるのに眠い」「十分寝たはずなのに疲れが取れない」と感じていませんか。

産後は授乳や夜泣きによる睡眠不足だけでなく、ホルモンバランスの変化や体の回復、精神的な負担など、さまざまな要因が重なります。そのため、睡眠時間を確保しているつもりでも眠気やだるさが続くことがあります。また、「産後だから仕方ない」と我慢してしまう人も少なくありません。しかし、産後の眠気の背景には睡眠の質の低下や貧血、栄養不足、メンタル面の不調などが隠れている場合もあります。

この記事では、産後に寝ても寝ても眠い原因を整理しながら、いつまで続くのか、今日からできる対処法、相談したいサインまでわかりやすく解説します。

 

産後に寝ても寝ても眠い主な原因

産後の眠気は単純な睡眠不足だけでは説明できません。ホルモンバランスや自律神経の乱れ、貧血や栄養不足など複数の要因が重なり合って起こることが多いです。ご自分に当てはまる原因がないか確認してみましょう。

1. 授乳や夜泣きで睡眠が細切れになっている

産後に寝ても眠い原因として多いのが、授乳や夜泣きによる細切れ睡眠です。

赤ちゃんは生後間もない時期ほど授乳間隔が短く、夜間も数時間おきに起きます。そのため、合計で6〜7時間眠れていたとしても、何度も途中で起きることで深い睡眠が十分に取れなくなります。人の睡眠は連続して眠ることで脳や身体の回復が進みますが、頻繁な中途覚醒があると睡眠の質が低下し、「寝たのに疲れが残る」「昼間に強い眠気がある」という状態に陥りやすくなるのです。

特に産後3ヶ月頃までは夜間授乳の頻度も高く、睡眠不足を感じやすいでしょう。

2. ホルモンバランスや自律神経が乱れやすい

出産後の女性の体は急激な変化を経験します。妊娠中に増加していた女性ホルモンは出産後に大きく変動し、体は妊娠前の状態へ戻ろうとします。この変化の過程で、眠りが浅くなったり疲れが抜けにくくなりやすいです。

また、育児による緊張状態が続くと自律神経も乱れやすくなります。赤ちゃんの泣き声に常に気を張っていたり、「ちゃんと育てなければ」という責任感が強かったりすると、心と体は休みたいのに十分にリラックスできません。その結果、睡眠時間は確保できていても回復感が得られず、産後のだるさや疲労感につながることがあります。

3. 貧血や栄養不足で眠気やだるさが出ることがある

産後の出血や授乳によって、体は多くのエネルギーと栄養を必要とします。特に鉄分不足による貧血は、産後によく見られる不調の一つです。

貧血になると酸素を運ぶ力が低下し、眠気やだるさ、めまい、立ちくらみ、動悸などが起こることがあります。

また、育児中は食事が後回しになりやすく、たんぱく質や炭水化物、水分なども不足しがちです。「寝ても疲れが取れない」と感じる場合は、睡眠だけでなく栄養状態にも目を向けることが大切です。

 

産後の強い眠気はいつまで続くのか

「この眠気はいつまで続くの?」と不安になる方も多いでしょう。

ただし、眠気の続く期間には個人差があります。赤ちゃんの睡眠リズムや授乳状況、家族のサポート体制によって大きく変わるため、目安として参考にしてください。長引く場合は1人で抱え込まず、専門家に相談するのも一つの方法です。

産後1〜3ヶ月は眠気を感じやすい

産後1〜3ヶ月は特に眠気を感じやすい時期です。新生児期は昼夜の区別がなく、授乳間隔も短いため、母親はまとまった睡眠を確保しにくくなるのに加えて出産による身体的ダメージからの回復も続いています。

この時期は「以前と同じように家事をこなそう」と無理をすると疲労が蓄積しやすいため、休息を優先しましょう。

むしろ休むことが回復のために必要であり、赤ちゃんのためにもなります。

産後6ヶ月以降も続く場合は生活環境や体調も見直す

赤ちゃんの成長に伴って授乳間隔が空いたり、夜間睡眠がまとまったりすると、多くの方は徐々に眠気が軽くなります。しかし、産後6ヶ月や産後7ヶ月以降も寝ても寝ても眠い状態が続く場合は少し注意が必要です。睡眠環境、慢性的な睡眠不足、貧血、栄養不足、メンタル面の不調などが関係している可能性があります。

必ずしも病気とは限りませんが、「日常生活に支障が出るほどつらい」「以前より悪化している」という場合は専門家への相談も検討しましょう。

 

産後の眠気を軽くするために今日からできる対処法

産後の眠気を完全になくすことは難しくても、負担を軽くする工夫はできます。産後は夜間授乳や子どもの世話で不眠になりがちです。ほとんど寝られない状態が数日続くと幻聴や妄想が出現する可能性があるため、眠気やだるさを少しでも軽減するべく一つずつ取り入れてください(※1)。

※1:子ども虐待対応の手引き 第5章 養育者のメンタルヘルス

1. 赤ちゃんが寝たら家事より休息を優先する

産後は家事を終わらせようとして休息のタイミングを逃しがちです。しかし、回復を優先すべき時期に無理を続けると疲労は蓄積します。洗濯物が畳まれていなくても、食器が少し残っていても問題ありません。

赤ちゃんが寝ている時間に10〜20分でも横になることで、体と脳の負担を軽減できます。完璧な家事より、自分の回復を優先しましょう。

2. 夜間対応や授乳を家族と分担する

産後の睡眠不足対策は、一人で抱え込まずに周りの協力を得ることが重要です。パートナーがおむつ替えを担当する、搾乳やミルクを活用する、休日はまとまった睡眠時間を確保するなど、できる範囲で分担を考えましょう。

厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き 第5章 養育者のメンタルヘルス」でも、産後の睡眠不足やメンタルヘルス対策として家族や周囲の支援の重要性を示しています。「全部自分でやらなければ」と考えず、休むための協力を求めてみましょう。

3. 寝室環境を整えて短い睡眠の質を上げる

産後は睡眠時間を増やすことが難しいため、睡眠の質を高める工夫が重要です。

  • 寝室を暗くする
  • 室温や湿度を快適に保つ
  • 寝る直前のスマホを控える
  • 静寂な環境を整える
  • 体に合った寝具を使う

こうした基本的な環境調整だけでも眠りやすさは変わります。まとまった睡眠が取りにくい時期だからこそ、「眠れる時間の質」を意識してみましょう。

関連記事:自分に合うマットレスは柔らかめ?硬め?上級睡眠健康指導士がじっくり解説!

 

眠気だけでなく注意したいサイン

産後の眠気はよくある症状です。日中の眠気や集中力の低下につながり、日常生活に影響が出やすくなります(※2)。中には専門家への相談を検討したいケースもあります。授乳や育児に関する不安が強い場合には、早期から専門家に相談することを視野に入れましょう(※3)。

※2:母子保健ナビ『妊娠・出産期および産後の心身の変化と職場のサポート』

※3:授乳・離乳の支援ガイド

1. 眠気に加えて気分の落ち込みや不安が強い

眠気に加えて、次のような状態が続いている場合は注意が必要です。

  • 涙が出やすい
  • 気分の落ち込みが続く
  • 育児が極端につらいと感じる
  • 自分を責めてしまう
  • 不安が止まらない

産後は誰でも気分が不安定になることがあります。しかし、日常生活に支障が出るほどつらい場合は、産後うつなどの可能性も考慮しながら早めに相談することが大切です。相談することは、自分と赤ちゃんを守るための立派な行動です。

2. めまいや動悸など体の不調がある

眠気だけでなく、次のような症状がある場合は、貧血や体調不良が関係している可能性があります。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 息切れ
  • 動悸

十分に休んで、食事など栄養を見直しつつ、改善しない場合や症状が続く場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

 

産後の眠気を悪化させない生活習慣

完璧を目指す必要はありません。眠気を解消するためにできることから一つずつ取り入れてみましょう。

1. 食事と水分補給で回復に必要な栄養を補う

産後は体の回復と授乳のために多くのエネルギーを消費します。また、授乳や育児で自分の食事が後回しになりやすく、栄養不足が疲労感につながることがあります。鉄分、たんぱく質、炭水化物を意識しながら、まずは3食を大きく崩さないことを目標にしましょう。

また、水分不足も疲労感につながるため、こまめな水分補給を心がけることが大切です。

2. 寝る前のスマホの使い方を見直す

夜間授乳後にスマホを見続けると、脳が覚醒して寝つきにくくなることがあります。また、強い光は睡眠の質にも影響します。

どうしても使う必要がある場合は画面の明るさを下げたり、短時間で済ませたりする工夫がおすすめです。

産後の眠気で相談する目安と窓口

眠気やだるさ、不安などが長引く場合は、一人で抱え込まないことが大切です。産後うつ予防や安心して授乳や育児ができるように早めに「産婦人科・小児科・かかりつけ医・助産師・保健師」などに相談しましょう。また、地域の「自治体の産後ケア事業・子育て支援センター」などに相談することも検討してください。

専門家に相談することで、睡眠不足だけでなく育児不安やメンタル面の負担も軽減でき、安心感を得られる場合があります。「まだ相談するほどではないかも」と感じる段階でも構いませんので、早めに話を聞いてもらって安心につなげるのがおすすめです。

産後に寝ても寝ても眠いときは原因を分けて、休める環境を作ろう

産後に寝ても寝ても眠い状態は、多くの親が経験する悩みです。その背景には、授乳や夜泣きによる細切れ睡眠、ホルモンバランスの変化、自律神経の乱れ、貧血や栄養不足、メンタル面の負担など、さまざまな要因があります。

まずは休息時間の確保、家族との育児分担、睡眠環境の見直しなど、できることから始めてみましょう。それでも眠気やだるさが強い場合、気分の落ち込みやめまいなどの症状を伴う場合は、産婦人科や助産師、保健師などへ相談することも大切です。

産後の眠気は我慢するものではありません。1人で抱え込まず、自分自身の回復を大切にしながら、無理のない方法で休める環境を整えていきましょう。

 

【メタディスクリプション】

産後に寝ても寝ても眠い原因を、授乳や夜泣きによる細切れ睡眠、ホルモンバランス、自律神経、貧血、栄養不足、産後うつのサインなどから解説します。眠気はいつまで続くのか、産後3ヶ月・7ヶ月の目安、今日からできる対処法、睡眠環境の整え方、相談先までわかりやすく紹介します。