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監修者

後平 泰信
医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。
【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療
明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。
春になると、こんな症状を感じたことはありませんか?
- 十分寝たはずなのに、朝起きられない
- 日中なんとなくだるくて、やる気が出ない
- 夜なかなか寝つけない、または夜中に目が覚める
「新生活で疲れているだけかな」と思いがちですが、じつはそれ、「春バテ」によって睡眠が乱れているサインかもしれません。
夏バテは多くの人が知っていますが、春にも同様の不調が起きやすいことはあまり知られていません。この記事では、春バテが睡眠に与える影響と、今夜からできる対策を解説します。
※本記事で紹介する「春バテ」は医学的な正式病名ではなく、春先に起こりやすい体調不良の総称です。症状が長引く場合は医療機関にご相談ください。
春バテとは?夏バテとの違い
春バテとは、春先の急激な気候変化や生活環境の変化によって引き起こされる、心身の不調の総称です。
夏バテが「高温多湿による体力消耗」を主な原因とするのに対し、春バテの主な原因は次の2つです。
- 気温の大きな寒暖差(朝晩の冷え込みと日中の暖かさの落差)
- 生活環境の変化(入学・就職・異動・引っ越しなどによるストレス)
これらが重なることで自律神経が乱れ、だるさ・睡眠の不調・気分の落ち込みなど、さまざまな症状があらわれます。
春バテが睡眠を壊す3つのメカニズム
① 寒暖差が自律神経を疲弊させる
春は1日の気温差が9〜10℃以上になることも珍しくありません。この寒暖差に対応しようと、体は自律神経(交感神経・副交感神経)をフル稼働させます。
自律神経は睡眠にも深く関わっており、夜に副交感神経がうまく優位にならないと、寝つきが悪くなる・眠りが浅くなる・夜中に目が覚めるといった不調につながります。
② 日照時間の変化でメラトニンが減る
春になると日照時間が長くなります。これ自体は自然なことですが、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が減少しやすくなる側面もあります。
メラトニンは「夜になったよ」という信号を体に送るホルモンです。分泌が乱れると、就寝時刻がずれたり、睡眠の深さが損なわれたりします。また、日照時間の変化で体内時計がずれると、自律神経はその修正のためにさらに余計なエネルギーを使うことになります。
③ 新生活ストレスとの「二重の負荷」
4月は入学・入社・異動など、生活が大きく変わる時期です。新しい環境への適応はポジティブな変化であっても、脳や体にとってはストレスになります。
気候変化による身体的な疲労 + 環境変化による精神的なストレスが同時に重なることで、自律神経のバランスはさらに崩れやすくなります。春が「1年でもっとも体調を崩しやすい時期」と言われる理由はここにあります。
あなたは大丈夫?春バテ×睡眠セルフチェック
以下の項目に3つ以上当てはまる場合、春バテによる睡眠の乱れが起きている可能性があります。
- [ ] 十分な時間寝ているのに、朝すっきり起きられない
- [ ] 布団に入っても30分以上眠れないことがある
- [ ] 夜中に目が覚めることが増えた
- [ ] 日中、強い眠気やだるさを感じる
- [ ] 気分の浮き沈みが激しくなった気がする
- [ ] 肩こりや頭痛が増えた
- [ ] 食欲がわかない日がある
今夜からできる5つの対策
1. 起床時間を固定する
自律神経を整えるうえで最も基本的かつ効果的なのが、毎日同じ時間に起きることです。休日も含めて起床時間を一定に保つことで、体内時計のズレが修正され、夜の寝つきも自然と改善されていきます。
2. 朝起きたらすぐ日光を浴びる
起床後に日光を浴びると、セロトニンの分泌が促進されます。セロトニンは日中の活動を支えるとともに、夜にはメラトニンへと変換され、自然な眠気を引き出す原料となります。カーテンを開けて朝日を浴びる習慣だけで、睡眠の質は大きく変わります。
3. 就寝90分前に入浴する
就寝90分前に38〜40℃のぬるめのお湯で15〜20分入浴すると、体の深部体温がいったん上昇し、その後自然に下がります。この体温の低下が副交感神経を優位にし、スムーズな入眠を促します。
シャワーだけで済ませてしまいがちな季節ですが、春こそ湯船につかることをおすすめします。
4. 寝室の温度・湿度を整える
春は日によって気温差が大きいため、寝室の環境が安定しにくい季節です。室温20〜26℃、湿度50〜60%を目安に、薄手の掛け布団やパジャマを使って体温調節しやすい環境を整えましょう。
5. 就寝1時間前はスマホを控える
スマホやPCのブルーライトは、脳にまだ昼間だと錯覚させ、メラトニンの分泌を妨げます。夜の副交感神経の働きを守るためにも、就寝1時間前からは画面から離れる習慣をつけましょう。
まとめ
春バテによる睡眠の乱れは、誰でも起こりえます。気候と環境の変化が重なる春は、体が本当に疲れやすい季節なのです。
まずは起床時間を固定することと朝日を浴びることの2つから始めてみてください。小さな習慣の積み重ねが、春の睡眠を守る一番の近道です。
参考文献
- 厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット|自律神経の仕組みと役割 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット|眠りのメカニズム https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
- ひだまりこころクリニック(野村紀夫 医師監修・精神保健指定医/日本精神神経学会専門医)|春バテとは?春の訪れが心と体に与える影響 https://nagoya-meieki-hidamarikokoro.jp/blog/spring-fatigue/
- 富士薬品(医師監修)|春の不調は「春バテ」かも?原因や症状、今日からできる予防・対処法を解説 https://www.fujiyaku-direct.com/health_information/article/136main




