睡眠の質を保つ寝る前の筋トレメニュー5選
睡眠コラム by 松岡 雄治2025年12月26日読了目安時間: 6

【医師監修】床で寝るメリット・デメリットを科学的に検証|腰痛への影響と正しい実践方法

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

「床で寝る方が腰痛が楽になると聞いたことがある」「マットレスではなく床で寝ることを試してみたいけど、健康に悪影響はないだろうか」このような疑問を持つ方が増えています。実際に床で寝ることで腰の調子が良くなったという声がある一方で、朝起きた時に身体が痛い、床だとよく眠れないといった悩みも聞かれます。

日本では、睡眠の質に関する問題が深刻です。厚生労働省の令和5年最新調査では、睡眠時間が6時間未満の人は男性38.5%、女性43.6%に達し、働き盛りの30-50代では4割を超えました。※1

仕事に育児にと多忙で睡眠時間が確保しにくい中、フローリングに直接寝ることは本当に身体に良いのでしょうか。

この記事では、床で寝ることのメリット・デメリットを医学的根拠を用いて詳しく解説するとともに、床での就寝が腰痛に与える影響を体圧分散や寝姿勢の観点から分析します。さらにカビ・ダニなどの衛生面への不安を解消する対策も網羅しましたので、腰痛改善や睡眠の質向上を目指したい方はぜひヒントにしてください。

床で寝ることで期待できる3つのメリット

床で寝るという選択には、硬い床ならではのメリットがあります。主な3つのメリットを紹介します。

1. 寝返りが打ちやすく血行促進効果が期待できる

床で寝る際の大きなメリットは、寝返りを打ちやすいことです。マットレスが柔らかすぎると、身体が深く沈み込むため寝返りをするには大きな力が必要ですが、固い床に寝たり、布団や薄型マットレスを床に直置きすると、沈み込みがないため身体の回転がしやすく、寝返りが打ちやすくなります。

寝返りは、睡眠中に同じ部位が持続的に圧迫されるのを防ぎ(体圧分散を促し)、血行促進や疲労回復に有効です。ただし、固い床でも体型や寝姿勢によっては特定部位に負担が集中するため、全ての人で睡眠改善効果が期待できるわけではありません。

2. 猫背や姿勢の悪い人へのストレッチ効果がある

猫背や姿勢の悪い人が床で寝ると、姿勢改善に繋がるストレッチ効果が得られる場合があります。柔らかいマットレスで寝ると、体の部位による重さの違いによって背中が丸まった寝姿勢になりがちです。しかし、固い床は柔らかいマットレスに比べると背筋が伸びやすく、背骨や腰椎が自然なS字カーブに近い状態を保てるため、日中の悪い姿勢をリセットする効果が期待できます。

ただし、姿勢改善効果を求めて急に直置きに切り替えると、腰をはじめ身体への負担が大きくなるため、段階的に慣らすよう注意が必要です。

3. 部屋を広く使えて経済コストが下げられる

床で寝ることは、寝室のスペース活用の面でメリットがあります。ベッドフレームが不要になるため、部屋を広く使うことができます。

経済面でもメリットが得られます。ベッドフレームの購入費用や、大型マットレスのメンテナンス(クリーニング、買い替え)費用が不要なため、引っ越し時だけでなく日常生活においてもコストカットが実現できます。

 

床で寝ることによる5つのデメリットと健康リスク

床で寝るという選択は、メリットがある一方で、腰痛や睡眠の質に関わる重大なデメリットと健康リスクを伴うことも少なくありません。主なデメリットを5つ紹介します。

1. 体圧分散ができず特定部位に負担が集中

床で寝ることの最大のデメリットは、体圧分散が適切に行われないことです。固い床にクッション性の弱い敷き布団を敷いて寝ると、身体の凹凸を吸収しにくいため、肩や腰(特に仙骨部)といった特定部位に体重が集中してしまいます。

猫背を避けることができても、特定の部位位では血行不良や痛みが生じ、睡眠の質が低下する可能性が高いです。体圧分散機能を備えた寝具の使用が不可欠です。

2. 床の冷えによる体調不良のリスク

マンションに多いパターンとして、基礎の上に直接フローリングを施工していると、外気の影響を受けてフローリングがとても冷たくなっています。畳は本体そのものが空気を含むため保温性がありますが、厚みそのものが薄いため基礎からの冷気で少しずつ冷たくなる可能性は捨てきれません。

底冷えによって交感神経が優位になると、心身が緊張状態となって睡眠の質を低下させます。身体への負担によって疲労がたまり、身体の免疫力を低下させてしまったり、風邪や体調不良を招いたりするリスクが高まるでしょう。

3. カビ・ダニが繁殖しやすい環境

床に布団やマットレスを直置きしたままにしていると、床との間の通気性が悪くなりカビやダニの温床となるリスクがあります。住宅環境において、カビやダニは湿度60%以上で繁殖し、70%を超えるとカビが猛烈に繁殖することが確認されています。※2

人は睡眠中にコップ一杯分の汗をかくため、直置きされた寝具の裏側は湿気が逃げられず、カビが発生しやすい湿度70%以上になりやすいです。カビやダニが発生するとアレルギーの大きな原因となり、子どもの喘息やアトピーの悪化につながる可能性も指摘されています。※3

4. 睡眠の質低下による日中のパフォーマンス低下

体圧分散しにくい、湿気が溜まりやすい寝具環境で就寝し続けていると、睡眠休養感が低下し日中のパフォーマンスが著しく低下します。厚生労働省の令和5年最新調査では、4人に1人が睡眠で十分な休養がとれていないと感じています。※4

睡眠休養感の不足は、集中力や判断力に悪影響を与え、仕事でのミスや運転中の事故などにもつながりかねません。

5. 腰痛が悪化する可能性

「床で寝ると腰痛が良くなる」という説が、全ての人に当てはまるわけではないことに注意しましょう。筋肉が少ない細い体型の人だと、固い床にマットレスを直置きして寝ると腰椎を支えられず、腰痛の発症・悪化のリスクがあります。

医学的には、寝姿勢が不自然にならない適度な硬さと体圧分散が重要ですから、それらを得るにはマットレスの使用が推奨されます。

 

【研究データで検証】床で寝ることは本当に腰痛改善に効果があるのか?

「床で寝ることが腰痛改善になる」という話はよく聞きますが、本当でしょうか。論文から検証しましょう。

スタンフォード大学の衝撃的な研究結果

1960年代にスタンフォード大学のウィリアム・デメント教授が実施した睡眠研究では、高級マットレス、一般的なマットレス、コンクリートの上の3条件で睡眠の質(睡眠の長さと持続性)を比較した結果、違いはほとんどなかったという結果が報告されているのだそうです。

睡眠にマットレスは重要ではないということを示唆しているようですが、長期的な検証ではないこと、カビやダニなどの衛生面のリスクについて考慮されていないことなど、本研究の解釈にはいくつか注意を要する点があります。また、研究が実施された1960年代に比べて、現代はマットレスの機能が目覚ましい進化を遂げている点にも留意が必要です。

日本人の体型と床寝の相性

日本人比較的硬い寝具を好む傾向にあります。従来布団を畳に敷いて寝る習慣がある、欧米人に比べて体形の凹凸が少なめであるといったことも影響しているかもしれません。

とはいえ、健康面においても快適性においても、デメリットはできるだけ排除しておくのが賢明です。体圧分散が適切に行われる機能が搭載されたマットレスを使用し、ストレスなく眠れる環境づくりが必要です。

腰痛の種類別に見る床寝の向き不向き

腰痛には急性腰痛(ぎっくり腰など)と慢性腰痛があります。急性腰痛とは、急な痛みで寝姿勢を変えられないようなもので、一時的な応急処置として固い床に寝ることで腰椎が安定し、痛みが緩和するケースがあります。

一方、慢性腰痛は、不適切な体圧分散や血行不良を招きやすい床寝は症状を悪化させるリスクが非常に高いので避ける方がよいでしょう。

 

床で寝る場合の正しい実践方法と注意点

床で寝ることを試す場合に腰痛を発症しないよう、デメリットを最小限に抑えるための正しい実践方法と注意点を押さえておきましょう。

段階的に体を慣らす移行期間の設定

身体への負担を最小限にするため、いきなりフローリングに直置きで寝るのは避けましょう。まずは薄型マットレスや敷きパッドを敷き、固い床の感触を残しつつ、体圧分散を補助します。2週間から1ヶ月程度かけ、身体が新しい硬さで問題ないか、慣れているか確認しながら、寝具を調整してください。

カビ・ダニ対策と衛生管理の徹底

床で寝る際に見落としがちな最大の注意点は、カビ・ダニのリスクです。湿度が60%を超えないよう、除湿と換気を徹底しましょう。除湿グッズ(除湿シート、除湿剤)をマットレスの下に敷くと効果的です。寝具を立てかけるなどして裏面を毎日換気し、掃除を頻繁に行って、カビ・ダニの栄養源となるホコリや皮脂を取り除きましょう。※2

底冷え対策と快適な温度管理

底冷え対策を怠ると、睡眠の質を大きく損ないます。フローリングや畳の上に断熱材となるカーペットやラグを敷き、その上にマットレスを直置きすると、床からの身体の冷えを軽減します。寝具内の温度が変化しやすくなるため。冬場は保温性の高い掛け布団を使い、体温調節がしやすい快適な温度管理を心がけましょう。

 

床で寝ることが向いている人・向いていない人の特徴

床で寝ることが健康に与える影響は、体型、年齢、健康状態によって大きく異なります。床寝が向いている人と向いていない人の特徴をまとめました。

床寝が向いている人の3つの特徴

特徴 相性の良い理由
筋肉量が多い人 設置する面積が比較的大きいため、体圧が分散されやすく、体圧集中による痛みを感じにくい
暑がりの人 床の冷えが快適に感じられて、寝具に熱がこもりにくいため睡眠の質を保ちやすい。
ミニマリスト志向の人 経済的メリットやスペース活用を優先でき、寝具のメンテナンスを苦にしない。

床寝を避けるべき人の4つの条件

条件 健康リスク
高齢者 体温調節機能や免疫力が低下しているため、冷えやカビ・ダニによる体調不良、アレルギーリスクが高い。寝姿勢から立ち上がる際の身体への負担も大きい。
慢性腰痛持ち 体圧分散の欠如が腰椎に負担をかけ、腰痛を悪化させるリスクが高い
アレルギー体質 床付近のハウスダストやカビ・ダニの胞子を吸い込みやすく、アレルギー症状が悪化するおそれがある。
冷え性の人 床からの底冷えが身体を冷やし、睡眠の質を著しく低下させる。

 

床で寝ることを検討する前に知っておくべきこと

床で寝ることは、スタンフォード大学の研究が示すように睡眠の長さ自体に悪影響はないかもしれません。しかし、腰痛悪化やカビ・ダニ、冷えといった健康リスクがあることは忘れてはいけません。床で寝ることによる、腰痛改善や部屋のスペース活用といったメリットを享受しつつ、カビやダニの発生、体圧分散などのデメリットを克服するためには、機能性に優れた、直置き可能なマットレスを選ぶことが重要です。床に置いても問題ないほど優れた体圧分散性と通気性を備えたマットレスを選びましょう。

本記事では、床で寝ることによって得られるメリットと、床で寝る際の注意点、現実的な実践方法を解説しました。ぜひ自分に合った睡眠環境を整備し、睡眠の質を高めるよう今日から取り組んでみてください。

参考

※1 厚生労働省 令和5年国民健康・栄養調査

https://www.mhlw.go.jp/content/001435384.pdf

※2 文部科学省 カビ対策実践編

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/003/houkoku/08111918/003.htm

※3 日本アトピー協会 カビについて

https://www.nihonatopy.join-us.jp/skin/shittoku/kabi.html

※4 厚生労働省 令和5年 国民健康・栄養調査

https://www.mhlw.go.jp/content/001435384.pdf