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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
70歳前後になると、「以前より早く目が覚める」「夜中に何度も起きる」「6時間くらいしか眠れない」と感じる方は少なくありません。若い頃のように7〜8時間ぐっすり眠れないことで、「睡眠不足なのではないか」「健康に悪いのではないか」と不安になることもあるでしょう。
しかし、70代で睡眠時間が短くなることは、多くの人が経験する自然な変化です。この記事では、70代の睡眠時間の目安や、睡眠が短く浅くなりやすい理由を解説します。
睡眠時間の長さだけに捉われず、日中の体調や朝の身体が休まったという感覚(睡眠休養感)をもとに、年齢に応じた睡眠について確認しましょう。
70歳の睡眠時間は何時間が目安か
60歳以上の睡眠時間は、「6〜8時間」が目安とされています。しかし、あくまで目安であり、必要な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても異なります。
また、睡眠時間の長さよりも、朝起きたときに体がしっかり休まったと感じるかどうかも大切です。
※出典:国立健康・栄養研究所「健康日本21(第三次)目標一覧」
70代で睡眠時間が短くなる理由
加齢によって睡眠が短く浅くなるのは、体に起こる自然な変化です。背景には、主に次の3つの要因があります。
- 眠りが浅くなりやすい
- 体内時計が前倒しになりやすい
- 活動量や日光を浴びる時間が減りやすい
なぜ以前と同じように眠れなくなるのか、その背景を整理します。
1. 眠りが浅くなりやすい
高齢になると、深い眠りであるノンレム睡眠の割合が減るとされています。その分、睡眠時間は確保できていても、ぐっすり眠れた感じが得にくくなりがちです。
- 物音やちょっとした刺激でも、目が覚めやすくなる傾向もあります。
2. 体内時計が前倒しになりやすい
加齢に伴い、体内時計のリズムが前倒しになります。年齢とともに夜は早い時間に眠くなり、朝も早く目覚めやすくなります。
- これは加齢による生理的な変化であり、朝早く目が覚めること自体が異常というわけではありません。日中に活動できていれば、過度に心配する必要はないと考えられます。
3. 活動量や日光を浴びる時間の減少
日中の生活習慣が、夜の睡眠に与える影響は年齢とともに大きくなります。たとえば、退職後に生活が変化したり外出の機会が減ったりすると、夜の寝つきや眠りの維持に影響することがあります。
- 日中の活動量が少ないと、夜の眠気が弱まりやすくなります。また、朝から日中に日光を浴びる時間が少ないと、体内時計が整いにくくなります。
70代の睡眠は時間の長さだけで判断しない
「必ず8時間眠らなければならない」という思い込みは、かえって眠れない不安を強めてしまいます。意識したいのは、睡眠によって休まった感覚(睡眠休養感)と、実際に寝床にいる時間です。
寝床にいる時間を長くしすぎない
寝床で過ごす時間(床上時間)を長くしすぎないよう注意が必要です。睡眠不足を恐れるあまり早く布団に入り、長く横になりすぎると、かえって眠りが浅くなることがあります。
厚生労働省の睡眠ガイドでも、高齢者の床上時間が8時間を超えると睡眠の質が下がり、健康面のリスクが高まるおそれがあると指摘されています。また、寝床が「眠れない場所」だと体が覚えてしまうと、不眠につながるおそれもあります。
そのため、「眠くなってから寝床に入る」ことを基本にするとよいでしょう。
睡眠の状態は日中の眠気や疲労感で判断する
睡眠の良し悪しは、睡眠時間の長さだけでは判断できません。そのため、日中の体調や調子にも注目することが大切です。
もし、次のような状態が当てはまる場合は、睡眠の質が十分に取れていない可能性があります。
- 午前中に強い眠気がある
- 起床時に強い疲労感がある
- 日中に集中力が続かない
十分な睡眠がとれているかどうかは、朝起きたときにすっきりしているか、日中に集中力を保てているか、疲れを感じていないかを目安に判断してみましょう。
70代の睡眠の質を高める生活習慣
睡眠の質は、毎日の生活習慣に大きく左右されます。まずは、生活習慣を見直すことが快眠への第一歩です。
一方で、生活週間を整えても改善がみられない場合は、医療機関での治療が必要なこともあります。その際は、迷わず睡眠外来などを受診しましょう。
1. 朝から日中に光を浴びて活動量を増やす
リズムを整えることで、夜に自然な眠気が出やすくなります。起床後に朝日を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒のリズムが整いやすくなります。朝起きたらすぐにカーテンを開け、朝日を浴びることから始めてみましょう。
また、散歩や家事など、無理のない範囲で体を動かす時間をつくるのもおすすめです。日中に適度な活動量を確保すると、夜の深い睡眠につながりやすくなります。
※出典:日本睡眠学会「高齢者の睡眠障害」
2. 昼寝は短時間にとどめ、夕方以降は避ける
昼寝のコントロールは、夜の自然な眠りを引き出すために重要です。とくに、夕方以降の昼寝は、夜の寝つきを妨げやすいため避けるのがおすすめです。
また、高齢世代では、30分以上の昼寝の習慣は将来の死亡リスクを高めるとされ、長い昼寝は避けるよう示されています。日中に強い眠気を感じる場合は、昼食後から15時頃までに、30分未満の短い昼寝にとどめましょう。
※出典:日本睡眠学会「高齢者の睡眠障害」
3. 夕方以降のカフェイン・飲酒・喫煙を見直す
就寝前の嗜好品は、睡眠の質を左右する大きな要因になるおそれがあります。夕方以降は、次の3つを意識して見直してみましょう。
- カフェイン:覚醒作用があるため、夕方以降の摂取は注意が必要
- アルコール:眠りを浅くし、中途覚醒を誘発する
- 喫煙:ニコチンには覚醒作用がある
寝室環境と寝具を見直して眠りやすい状態をつくる
寝室の光や音、温度などの刺激は、無意識のうちに睡眠の質を低下させていることがあります。生活習慣とあわせて、寝室環境や寝具も見直してみましょう。
1. 光や温度を整えて夜に眠りやすくする
寝室の光や温度を整えることで、中途覚醒を防ぎやすくなります。まずは、部屋が明るすぎないか、騒音や温度が快適かをチェックしてみましょう。
- 寝室は暑すぎず寒すぎない温度に調整し、眠る前は強い光を控えると、より眠りやすい状態に近づきます。気になる点があれば、ひとつずつ整えていくとよいでしょう。
2. 体に合わない寝具が眠りを妨げていないか確認する
腰や肩の痛み、寝返りのしづらさ、寝起きの疲労感がある場合、寝具が体に合っていない可能性もあります。これらの症状の多くは、寝ているときの姿勢が崩れていたり、体に余計な負担がかかったりすることが原因です。
症状を改善し、快適に眠るためには、次の3つのポイントを見直すことが大切です。
- 体圧が適切に分散されているかを確認する
- 寝返りがスムーズに行えるベッドの硬さを選ぶ
- 首がつらくない枕の高さに調整する
寝具が体に合っていないと、同じ部分に圧力がかかり続けたり、寝返りがしにくくなったりして、体の痛みや疲れにつながることがあります。不調を感じているときは、まず使っている寝具を見直してみるとよいでしょう。
相談を考えたい睡眠のサイン
年齢による変化の範囲内であれば様子を見てよいこともあります。一方で、病気が隠れている場合は、そのままにしておくのは注意が必要です。
とくに以下の症状がある場合は、生活習慣の改善だけでなく、医師への相談を検討してください。
- 日中の生活に支障が出る眠気や疲労感が続く
- 生活習慣を整えても眠れない状態が続く
1. 日中の生活に支障が出る眠気や疲労感が続く
日中の眠気や疲労感が生活に支障をきたしている場合は、注意が必要です。
多くの人は睡眠時間の長さに目を向けがちですが、実際には日中の活動にどれだけ支障が出ているかが、重要な判断基準となります。
日中の活動に支障を与えている代表的なサインは、以下のとおりです。
- 午前中から強い眠気がある
- 車の運転や作業中に眠くなってしまう
- 強い疲労感が続いている
これらの症状が継続的にみられる場合は、睡眠障害の可能性も考えられるため、早めに睡眠外来などに相談を検討してください。
2. 生活習慣を整えても眠れない状態が続く
生活習慣を整えても眠れない状態が続く場合は、自己判断で放置せず、医師に相談してください。
睡眠の質にはさまざまな要因が関わっており、日光を浴びる、活動量を増やす、昼寝やカフェインの取り方を調整するなど生活を工夫しても、改善できないことがあります。
- たとえば、不眠の背景には慢性的な痛み、認知症、うつ病、不安障害といった病気が隠れている場合もあります。これらは適切な診断と治療が必要となるため、主治医や睡眠の専門医による評価を受けましょう。
70歳の睡眠時間は長さだけでなく日中の調子も考慮しよう
70歳前後の睡眠時間は6〜8時間が目安ですが、6時間でも日中に支障がなければ過度に不安になる必要はありません。加齢によって睡眠が短く浅くなるのは自然なことです。
「睡眠時間を確保できないとダメ」「早くに目が覚めてしまっては身体に良くない」という思い込みを手放しましょう。長く寝床に居すぎないこと、そして朝の光や日中の活動量を見直すことが快眠と健康への近道となります。
ただし、眠気や疲労感、いびき、呼吸の乱れ、夜間頻尿、気分の落ち込みが続く場合は、無理をせず睡眠外来などで相談してください。
ご自身の睡眠状態を自信を持って良好と言える人は多くないものです。本記事を参考に、受診を考えるサインはないか、なければ改善できそうな生活習慣がないか確認してみてください。快眠を取り戻して健やかな毎日を送りましょう。





