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監修者

田中 貫平
医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター
2013年英国シェフィールド大学医学部卒。
手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。
朝起きた瞬間から頭が重い。後頭部がズキズキする。そんな朝の頭痛が続くと、「枕が合わないのかも」と不安になります。首の痛みや肩こりまで重なると、一刻も早く原因を突き止めたくなりますね。実際、枕の高さや硬さが少し合わないだけでも、首の筋肉が休まらず、緊張型頭痛が出やすくなることがあります。
頭痛の原因は枕だけとは限りません。枕と頭痛の関係を分かりやすく解説し、合わない枕を見分けるチェック方法から、寝起きの頭痛を和らげる対処法、失敗しにくい枕の選び方、睡眠環境の整え方までご紹介します。本記事を通して「自分は枕を見直すべきか」を考えてみましょう。
枕が合わないと頭痛が起きる理由
枕が合わないと頭痛が起きるのは、睡眠中に首が無理な角度で固定されやすいからです。
首周りの筋肉が緊張し続け、起床時に痛みが生じます。また、このような枕が合わないことで起きる頭痛は基本的に、「緊張型頭痛」と呼ばれる頭痛です。
緊張型頭痛が枕で悪化しやすい理由
緊張型頭痛は、主に首の筋肉や肩こりの緊張によって引き起こされます。首の筋緊張が関わる緊張型頭痛は、他に原因となる病気がない状態で発生する頭痛(一次性頭痛)の中で最も多い頭痛のひとつです。※1
枕の高さや硬さが合っていないと、睡眠中に首の筋肉が緊張し続けます。これにより、頭全体あるいは後頭部が鈍く痛むという緊張型頭痛の特徴的な症状が出やすくなります。
枕の高さ・硬さが血流に与える影響
枕の高さ・硬さは、頭痛の直接的な原因である血流悪化に繋がります。枕が高すぎたり、低すぎたりすると、首のカーブが不自然になって首の筋肉が引っ張られて緊張します。さらに血管が収縮して血流が悪化するため、頭痛が起こりやすくなるのです。
理想的な寝姿勢は、立っているときと同じように首の生理的なカーブ(頸椎カーブ)が保たれている状態です。しかし、枕が首のカーブにフィットしていないと頸椎(首の骨)の一部に負担がかかります。この負担が筋肉の緊張を引き起こし、首の痛みや、朝の頭痛が出やすくなるのです。
自分の枕が合っていないか判断するチェックリスト
枕が原因かどうかは、「痛み方」よりも「出るタイミング」と「一緒に出る症状」で考えると判断しやすいです。国内のアンケート調査では、枕を使っている方のうち、今の枕が合っていると感じているのは全体の35%程度しかいないことが報告されています。※2
以下の症状に当てはまるかチェックし、枕が原因かどうかを判断しましょう。
- 朝の頭痛(寝起きの頭痛)が中心で、日中は軽くなる
- 後頭部の重さがある、首の痛みや肩こりを伴う
- 枕の高さを少し変えると、翌朝の症状が動く
- 横向き寝・仰向け寝で首の角度が崩れやすい自覚がある
一方で、枕だけで結論を出さない方が安全なケースもあります。突然の激しい頭痛、手足のしびれや脱力、ろれつの回りにくさ、視野異常、強い吐き気が続くなどは、早めに医療機関で相談してください。
朝に頭痛が出る場合のチェックポイント
朝の頭痛が強く、時間とともに軽くなるなら、睡眠中の条件が関与している可能性があります。枕が合わない場合は、首の筋緊張が抜けないまま朝を迎え、起床時に痛みとして出ます。逆に、日中に向かって強くなる、拍動性の痛みが中心で吐き気が強い、光や音でつらいなどの場合は、枕だけが原因とは言えません。
首・肩のこりが強い場合
首・肩のこりが朝から強い場合、枕が頭の重さや首の骨を支えられていない可能性があります。このとき、高さの問題と、硬さの問題とがありますが、それぞれについて観察することが大切です。高さが合わない場合には角度が崩れ、硬さが合わない場合には枕と接する部分の圧迫が強くなります。
横向き寝・仰向け寝との相性
仰向けで顎が上がりやすいなら枕が高いのかもしれません。横向きで首が傾くなら高さ不足が疑われます。寝姿勢に対して枕の形状が合わないと、毎晩首の負担を積み上げることになってしまいますから、朝の頭痛が続く人は枕の高さをチェックしてみましょう。
枕が原因の頭痛をやわらげるための改善策
対処法の基本は「買い替える」より先に、「少し変化させて反応を見る」ことです。原因が枕にあるかどうかこのステップで慎重に判断しましょう。
枕の高さを微調整する方法
タオルで高さを微調整します。大きく変える必要はありません。数ミリ〜1センチ程度でも寝てみると大きな変化を感じることがあります。一晩で結論は出にくいので、2〜3日同じ条件で寝て、寝起きの頭痛や首の痛み、肩こりがどう変わるかを確認しましょう。改善がみられれば、今の枕は高さが合っていないということです。新しい枕を購入する前に、こうしてベストな高さを知っておくことが非常に重要です。
首周りの緊張を取る簡単ストレッチ
緊張型頭痛に対処するため、就寝前に首のストレッチなど、頭痛を予防するケアを取り入れましょう。首をゆっくり左右に倒したり、前後に曲げたりして、首の筋肉の緊張をほぐします。温かいタオルを首の後ろに当てて血流を促すのも効果的です。
寝姿勢を見直すポイント
枕だけを直しても、体のねじれが強いと首の角度は崩れます。横向き寝では肩が前に落ち、首が傾きやすくなります。また、マットレスの沈み込みも加減も枕の高さに影響を与えます。仰向け寝の場合、マットレスの沈み込みが適切な状態で、枕が首のカーブを支え、頭が心臓よりわずかに高くなる状態を保ちます。ベッドと首のなす角度は5度くらいが目安とされています。※3
横向き寝の場合、マットレスが肩を適切に沈ませ、枕が頭と首を一直線に保つ高さが必要です。背骨が一直線になるような姿勢になっていることが理想的です。
頭痛を悪化させない枕の選び方
枕選びは「気持ちよさ」だけで決めると失敗しやすいため注意しましょう。高さ・硬さ・形状は、首の負担に直結します。枕の形状と素材の組み合わせが、首周りの筋肉の活動や快適性に影響することを検証した研究もあります。
寝姿勢別に適した枕の形状
枕の形状と寝姿勢についてのある研究によると、次のような結果が示されました。仰向けの場合には、首もカーブを支えやすい長方形のものを選ぶと快適になり、横向きでは、円筒型のものを使った場合に、筋肉の緊張がとれて快適になることが示唆されました。※4
高さ・硬さの選び方
高さは「首が曲がらない、反らない」が基準です。硬さは「沈みすぎない、当たりが一点に集中しない」が基準になります。合わない枕は、高さと硬さが同時にずれていることもありますので、高さだけ直しても変わらない場合は硬さも見直してみてください。
素材ごとの特徴を比較
枕の素材は、ウレタンやパイプ、羽根など多岐にわたります。
メモリーフォーム(低反発ウレタン):頭の形状に合わせてフィットし、筋肉の緊張を抑える効果が期待できますが、通気性に劣る場合があります。
パイプ・ファイバー:通気性が高く、高さ調整は容易ですが、硬すぎると神経圧迫の原因になります。
羽根:柔らかい一方で形が崩れやすく睡眠中に安定して頭や首を支えることができないことがあります。
朝の頭痛を防ぐための睡眠環境改善
枕だけを替えても、睡眠の質全体が悪ければ頭痛は改善しません。日本人は睡眠の量・質が不足しがちな悪条件にあり、枕の問題が頭痛をさらに悪化させている可能性が高いです。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査によると、日本人のうち平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は40%を超えています。※5
室温・湿度・寝具の見直し
厚生労働省の令和5年の調査によると、睡眠で休養が取れていると感じている人は約4人に1人程度しかおらず、さらに日本人の約10人に1人(10%)が慢性的な不眠状態にあることがわかっています。※5
このベースラインの悪さに枕の不適合が重なると頭痛は悪化します。また、快適な睡眠環境の目安は室温18〜27℃、湿度50〜60%です。※6
吸湿性と放湿性に優れた寝具を選ぶことで熟睡でき、同じ睡眠時間でも睡眠後の休養感がアップします。
日中の姿勢・目の疲れのケア
日中の姿勢の悪さが、夜の頭痛に繋がることもあります。スマホ首(ストレートネック)やデスクワークによる姿勢の悪化は、首の筋肉を慢性的に緊張させ、緊張型頭痛の原因となります。就寝前のストレッチだけでなく、日中の姿勢も意識するとより改善が見込まれます。
就寝前の習慣づくり
睡眠習慣の改善は、頭痛の根本的な対策といえます。ブルーライトを避けて、カフェインやアルコールを控えるなどの、就寝前ルーティンで自律神経を整え、スムーズな入眠を促しましょう。
まとめ:枕と頭痛の関係を正しく理解し、改善につなげよう
枕が合わないことで起きる頭痛の多くは、枕と寝姿勢の不適合による緊張型頭痛です。枕の高さはタオルで調整し、仰向け・横向きで首のカーブが適切になる自分に合う枕を見つけましょう。また、頭の位置は体の位置とも関係するため、枕単体ではなく、マットレスと枕をセットで考えることが、頭痛を根本的に改善する鍵です。
さらに、睡眠不足や日中の姿勢の悪化が、頭痛をさらに強めてしまうおそれもありますので、寝具や就寝環境の見直しとともに、睡眠習慣の改善を行いましょう。
頭痛とともに目覚めるのはつらいものです。枕と頭痛の関係を正しく理解するとともに、枕や寝姿勢を改善しても頭痛が続く場合は、無理せず、脳神経内科や頭痛外来の受診を検討することも大切です。本記事を参考に、気持ち良い朝を迎える習慣を始めましょう。
参考
※1 日本頭痛学会 緊張型頭痛
https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/189-213_3.pdf
※2 PRTIMES【枕使わない人の割合を調査!】頭痛やいびきへの影響も無視できない枕の使用実態は?!700名にアンケート調査
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000091021.html
※3 厚生労働省 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003
※4 Samaneh Daryushi, Teimour Allahyari, Zanyar Karimi. The Influence of Pillow Shape and Content on Neck Muscular Activity and Perceived Comfort. The Open Public Health Journal. 2025, Vol.18, No.1,
https://openpublichealthjournal.com/VOLUME/18/ELOCATOR/e18749445371712/FULLTEXT/
※5 厚生労働省 令和5年国民健康・栄養調査
https://www.mhlw.go.jp/content/001435384.pdf
※6 厚生労働省 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003




