目次
監修者
松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
夜中に何度も目が覚めてしまい、朝まで眠れず「もしかして脳に異常があるのでは?」と不安に駆られた経験はありませんか。私自身も数年前、仕事のストレスで眠れない日々が続いたとき、「このまま脳の病気につながるのでは」と夜中に一人で考え込んでしまったことがあります。
不眠が続くと疲労が抜けず、日中の集中力や気分にも影響が出ることでさらに不安が膨らむという悪循環に陥りやすいです。実際、不眠症にはストレスや生活習慣だけでなく、脳の視床や神経伝達物質の働きが関わるケースのほか、稀に致死性家族性不眠症やアルツハイマー病といった深刻な病気が背景にあることも知られています。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、不眠症と脳の関係を医学的根拠に基づいてわかりやすく解説し、症状の見極め方や改善のための具体的な方法を紹介します。
不眠症の仕組みと脳の役割|睡眠をコントロールする3つのしくみ

人が眠ったり目覚めたりする流れは、脳にある「体内時計」で生み出される概日リズム(サーカディアンリズム)や眠気をためていく仕組み(睡眠恒常性)、そして脳の神経回路が切り替わる働きによって支えられていると考えられています。
このバランスが崩れると、不眠症や過眠症といったトラブルにつながることがあるようです。※1
視床、オレキシン、そして脳の老廃物排出システムという3つの観点から、睡眠と脳の関わりを分かりやすく解説していきましょう。
1. 視床による眠りと目覚めのリズム調整
脳の中央にある「視床(ししょう)」は、体の感覚を大脳に伝える中継地点のような役割を持つ部位です。視床が働くことで外部からの刺激を遮り、深い眠り(ノンレム睡眠)を保ちやすくなると考えられています。
視床に異常が起こると、眠り自体が大きく乱れると考えられています。致死性家族性不眠症(FFI)というまれな病気では、視床が変性することで長期的に眠れなくなることが報告されています。※2
2. オレキシンによる覚醒を保つ仕組み
「オレキシン」は、脳の視床下部から分泌される物質です。1998年に発見されて以来、私たちが起きている状態を支える働きが不眠症やナルコレプシー(強い眠気や急な眠りが起こる病気)と深く関わっていることが分かってきました。
オレキシンの分泌量が少なすぎるとナルコレプシーが起こりやすくなり、逆に多すぎると脳が覚醒し続けて不眠につながることがあります。この知見を活かしてつくられたのが「オレキシン受容体拮抗薬」という新しいタイプの睡眠薬です。スボレキサント(ベルソムラ)やレンボレキサント(デエビゴ)は、オレキシンの働きを抑えて自然な眠りをサポートするように開発されました。
従来の睡眠薬は脳全体を鎮める作用が強かったのに対し、オレキシン受容体拮抗薬は「起きている仕組み」をやわらげる形で働くため、翌朝のふらつきや依存性が少ないと報告されています。※3
3. 脳の老廃物を流すシステムと睡眠の関係
眠っているあいだに、脳は「お掃除」をしているといわれています。特に深い眠りであるノンレム睡眠の段階では、脳脊髄液(のうせきずいえき)がよく流れてアミロイドβなどの老廃物を流し出しやすくなることが分かっています。この仕組みは「グリンファティックシステム」と呼ばれ、2012年に提唱されました。
理化学研究所が2020年に行ったマウスの実験では、慢性的に眠らせない状態を続けたところ、大量の蓄積によって神経細胞が正常に働かなくなったり壊されたりする状況を誘引するアミロイドβが脳の中に約25%多くたまったという結果が出ています。※4
こうした変化は、アルツハイマー病のリスクを高める可能性があるとされています。さらに、人を対象とした研究でも、慢性的な睡眠不足が認知症のリスク上昇と関係することが示されているのです。
このように、睡眠は休むだけでなく、脳をきれいに保つ役割も持つと考えられます。深い睡眠をとる習慣を整えることは、脳の健康を守るうえで大切なポイントといえるでしょう。
関連記事:2日寝ないとどうなる?体と脳に現れる緊急シグナル4つ
脳の異常が原因となる不眠症|注意すべき5つの疾患と症状

一般的に不眠症はストレスや生活習慣の乱れが大きな要因とされていますが、脳そのものに器質的な異常や神経変性疾患が関係する可能性も考えられています。
その場合は、通常の不眠と比べて症状の経過や随伴する身体・認知症状が異なり、医療機関での早期の評価が重要になることがあります。
ここでは代表的な5つの疾患について、その特徴や見分け方を紹介します。
1. 致死性家族性不眠症(FFI)
致死性家族性不眠症(Fatal Familial Insomnia, FFI)は、プリオン蛋白の異常によって視床が障害される遺伝性の疾患とされています。※1
進行すると重度の不眠が続き、夜間の睡眠がほとんど取れなくなる場合もあるようです。さらに、発汗異常や体温調整の乱れ、頻脈などの自律神経症状、運動失調、幻覚、認知機能の低下など多様な症状が加わることも少なくありません。※ 5
通常の不眠症は環境調整や薬物治療で改善が見込まれる一方で、FFIは不可逆的に進行する点が特徴です。疑いがある場合は、神経内科での遺伝子検査や睡眠検査(ポリソムノグラフィー)が推奨されます。
2. 脳腫瘍による睡眠障害
脳腫瘍が睡眠に関わる中枢を圧迫すると、入眠困難や中途覚醒といった不眠症状が現れることがあります。頭痛や吐き気、視覚障害、けいれんなどの神経症状を伴うという特徴がストレス性の不眠との大きな違いとされています。※6
特に「朝方に強くなる頭痛」「吐き気を伴う頭痛」「視野の欠損」が見られる場合は注意が必要です。できるだけ早期に画像検査(MRIなど)による診断が求められます。
3. アルツハイマー病と睡眠障害
アルツハイマー病では、患者の約70%に何らかの睡眠障害がみられると報告されています。代表的な症状として「日没症候群(夕方以降に症状が悪化する現象)」「昼夜逆転」「夜間の徘徊」などの行動・心理症状(BPSD)が挙げられます。
アルツハイマー病の進行では、脳内にアミロイドβやタウが蓄積することで老廃物の排出機能(グリンファティックシステム)が低下すると考えられています。
その結果、睡眠構造が崩れやすくなり、認知機能の悪化を助長する可能性も指摘されています。※7
家族が睡眠リズムの乱れに早めに気づき、医師と共有することが、症状の進行を緩やかにする手助けとなる場合があります。
4. パーキンソン病に伴う睡眠問題
パーキンソン病の患者の60〜90%は、不眠や睡眠関連の症状を経験するとされます。よく見られるのは、以下のような症状です。
- レム睡眠行動障害(夢の内容に合わせて体を動かす)
- むずむず脚症候群(足の不快感で眠れない)
- 日中の過度な眠気(活動中に突然強い眠気に襲われる)
これらは、ドーパミン神経の変性や治療薬の副作用、夜間の排尿や痛みなど複数の要因が絡んで起こるとされています。単なる不眠ではなく複合的な睡眠障害として現れる点が特徴です。※7
5. 脳血管障害後の不眠症
脳梗塞や脳出血の後遺症として、不眠や睡眠の質の低下が続くことがあります。脳の障害部位によっては入眠困難や中途覚醒が長期化し、リハビリの進行にも影響を与えかねません。
さらに、国立がん研究センターのJPHC研究によると、睡眠時間が4時間以下の人では脳卒中リスクが約1.5倍に上昇するとの報告もあります。※8
睡眠時間が極端に偏る不眠や過眠は循環器疾患のリスク増大につながるとされ、生活管理のなかで適切な睡眠リズムを意識することが再発予防に役立つと考えられているのです。
関連記事:医師監修 | 眠いのに眠れないストレスとその改善法10選
医療機関を受診すべきタイミング|危険な不眠症状の見分け方

一過性のストレスや生活リズムの乱れによる不眠と、脳に器質的な異常が関わる不眠は、症状の出方や進行の仕方が異なるといわれています。
入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒といった症状が数週間以上続き、さらに日常生活に影響するほどの記憶力低下や意識の混濁、幻覚などが加わる場合は、専門医への相談が望ましいです。※9
通常の不眠との違いや危険なサイン、受診に向けた準備について整理します。
通常の不眠症と脳疾患による不眠の違い
多くの人が経験するストレス性の一過性不眠は、仕事や生活環境の変化によって起こることが多いとされます。原因が解消されると比較的短期間で改善する傾向があり、症状の強さも日によって変わりやすいです。
一方、脳の器質的異常や神経変性疾患が背景にある不眠は、疾患の進行に伴って悪化することが多い点が特徴的とされます。夜間の睡眠時間が徐々に短くなって熟眠感が得られにくくなり、認知機能の低下や運動機能の障害が加わる場合があるという報告もあります。※10
比較の目安を整理しておきましょう。
- ストレス性不眠:一過性、改善傾向あり、症状の変動が大きい
- 脳疾患による不眠:慢性または進行性、改善しにくい、随伴症状が加わる
緊急受診が必要な症状チェックリスト
不眠が長引いているだけでなく、以下のような症状が急に現れた場合は、緊急の受診が必要と考えましょう。
- 激しい頭痛や嘔吐を伴う急な不眠の悪化 → 脳腫瘍や頭蓋内圧亢進の可能性
- 意識の混濁や判断力の低下 → 脳血管障害や代謝異常の可能性
- 幻覚や妄想の出現 → プリオン病や進行性認知症の可能性
- 記憶障害が急速に進行 → アルツハイマー病など認知症の可能性
- 歩行時のふらつきや運動失調 → 致死性家族性不眠症(FFI)など神経変性疾患の可能性
このような症状は危険信号と捉え、自己判断や放置は厳禁です。医療機関を至急受診し、症状の原因を把握することが大切です。※11
専門医への相談準備と伝えるべきポイント
神経内科や睡眠外来を受診する際には、正確な情報を整理して伝えることが的確な診断につながります。 ※1
受診時に質問された時にすぐ答えられるよう、以下の情報について整理しておくとよいでしょう。
- 睡眠日誌(就寝・起床時刻、入眠までの時間、夜間覚醒の回数などを1〜2週間記録)
- 日中の症状(眠気、頭痛、集中力低下、気分変動など)
- 服薬歴(睡眠薬や抗不安薬に加え、持病の薬も含める)
- 生活習慣の記録(カフェインやアルコールの摂取状況、運動習慣、勤務形態など)
こうした情報を提供することで、医師はストレス性の一過性不眠か、脳の異常による不眠かを検査結果とあわせて総合的に判断し、必要に応じて検査や治療方針を早期に決定できるのです。
関連記事:上級睡眠健康指導士監修|夜中に目が覚める原因6つと対処法3選
不眠症の改善アプローチ|最新の治療法と生活習慣の見直し

不眠症の治療は「薬を飲むかどうか」だけではなく、原因や重症度に応じて段階的に構築していくことが大切です。
症状が強い場合は薬物療法で早期に睡眠を安定させ、再発を防ぐためには認知行動療法や睡眠衛生指導を取り入れることが推奨されています。
最新の薬物療法とその特徴
従来、不眠症治療の中心はベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系薬でしたが、依存性や転倒リスク、翌日の眠気が問題とされてきました。即効性があるものの、長期使用すると依存性や耐性による効果の減少、認知機能低下のリスクが指摘されており、短期間・最小限での使用が推奨されます。
ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系薬による薬物療法を行う際には、以下のような実践的な注意点も重要です。
- 就床直前に服用し、夜中の追加服用は避ける
- 起床予定の6〜7時間以内に服用しない
- 自己判断で増減せず、必ず医師の指示に従う
こうした点を守ることで、安全性と効果を最大限に引き出せます。
先ほどもお伝えしたように、近年は脳の覚醒システムに関わるオレキシンを標的としたオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント、レンボレキサントなど)が第一選択薬として広がりつつあります。 ※1
オレキシン受容体拮抗薬は自然な睡眠構造を保ちやすいため、特に高齢者や基礎疾患をもつ患者でも比較的安全に使える点が評価されています。
睡眠の質を高める生活習慣改善法
疫学研究では、睡眠時間が4時間以下または9時間以上の人は循環器疾患や死亡率が高いことが報告されています。※8
極端に短い・長い睡眠を避け、平日と休日で睡眠リズムを大きくずらさない生活リズムが長期的な健康維持につながります。
また、薬物療法と並行して、生活習慣の見直しは不眠症改善に欠かせません。特に次のような習慣が有効です。
- 毎日同じ時刻に起床し、朝日を浴びることで体内時計を整える
- 夕方以降はカフェイン飲料を避ける
- 就寝前のスマホ・パソコンなどブルーライトの強い光を控える
- 日中に軽い有酸素運動を取り入れる
- 寝室の室温・遮光・静音環境を整える
30分以上眠れないときは一度ベッドを離れてリラックスし、眠気が戻ってから再び横になる「刺激制御法」は、ベッド=眠る場所と脳に学習させるためにも効果的です。
寝具の選択も重視しましょう。マットレスや枕を自分の体格に合ったものに変えるだけで、中途覚醒の減少や熟眠感の改善につながりやすくなります。
関連記事:【医師監修】夜中にうなされる…考えうる原因と対処法4選
まとめ|不眠症と脳の異常を正しく理解して適切な対処や工夫を

不眠は多くの場合、ストレスや生活習慣の乱れから起こる身近な悩みです。眠れない自分を責めることなく、生活リズムや環境を少しずつ整えていくことが推奨されます。
起床したら朝日を浴びる、夕方以降のカフェインを控える、寝る前にスマホを見ない、脳と体を健康に維持するには、こうした小さな工夫の積み重ねが必要です。もし症状が長く続いたり不安を感じる場合は、早めに専門医へ相談することも安心につながるでしょう。
そして、質の良い睡眠を叶えるためには「心地よく眠れる寝具選び」も欠かせません。体をしっかり支えつつリラックスできる環境を整えることで、眠りはより深く安らかなものになります。
不眠対策の一歩として、快適さを追求したコアラマットレスを試してみるのもおすすめです。おうちでゆっくり実感できる120日間のお試し期間を活用して、自分に合う眠りを見つけてみてください。
<おうちでしっかり納得するまで120日間お試し!>
https://jp.koala.com/pages/120-night-trial?utm_source=blog
参考
※1 健康づくりのための睡眠ガイド 2023 | 厚生労働省
※2 プリオン病(3)致死性家族性不眠症(FFI)(指定難病23)| 難病情報センター
※3 睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療療ガイドライン | ⽇本睡眠学会
※4 腸内細菌が中枢神経系炎症を促進する仕組みを解明 | 理化学研究所
※7 不眠症(睡眠障害)は、脳の異常が原因で起こることもありますか? | ユビー
※8 睡眠時間と死亡リスクとの関連について | 国立がん研究センター
※9 不眠症(睡眠障害) | 国立精神・神経医療研究センター
※10 不眠症について | 伊月病院










