目次
監修者

本多 洋介
群馬大学医学部卒業。
伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院(いずれも循環器内科)を経て、Myクリニック本多内科医院院長。
- 免許・資格
総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション学会専門医、軽カテーテル的大動脈弁植え込み術指導医(Sapienシリーズ、Evolutシリーズ)
大事な会議中に気づいたら意識が飛んでいたり、必死に目をこすってもデスクで眠気に勝てずついうとうとしたり――そんな状態になって冷や汗をかいた経験はありませんか。
私自身も、午後の会議で瞼が重くなり、上司に呼ばれてハッと我に返ったことがあります。しかも「怠けていると思われたらどうしよう」「評価に響いたら困る」という不安があるのにもかかわらず、逆に眠気が強まるという悪循環に陥ったのです。
実はこうした悩みを持つ人は珍しくありません。ある調査では、ビジネスパーソンの約8割が仕事中に眠気を感じていると報告されています。
そこで、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、仕事中の眠気に悩まされている方のために、仕事中に眠ってしまう原因について生活習慣から医学的背景までさまざまな視点から解説します。
さらに、「自分は病院に行くべきレベルなのか」を判断する手がかりが得られるセルフチェックリストもご紹介します。10〜15分のパワーナップやカフェイン摂取の工夫、オフィスでできる簡単ストレッチといった実践的な対策に加え、生活習慣の見直しや医療機関への相談方法なども網羅しました。
眠気を放置せず、仕事のパフォーマンスと健康を両立させるための一歩を踏み出してみませんか。
仕事中に寝てしまう5つの主な原因

仕事中に眠気が襲ってくるのは、単なる「疲れ」や「意思の弱さ」だけではありません。睡眠障害や生活習慣の乱れと言った原因が隠れていることもあるようです。複数の要因が重なっているケースも少なくないため、眠気が起きる原因を正しく把握することが改善の糸口になるのです。
まずは、代表的とされる5つの原因を順に見ていきます。
1. 慢性的な睡眠不足とマイクロスリープ
日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、OECD加盟国の中では最下位にあたると報告されています。※1
特に20〜50代の働き盛りでは、1日6時間未満の睡眠しか取れていない人が4割前後にのぼるという結果も出ています。※2
慢性的な睡眠不足は「睡眠負債」と呼ばれ、数秒から数十秒間意識が途切れるマイクロスリープにつながることがあるようです。集中力や生産性の低下につながる可能性が指摘されており、経済損失はGDP比で2.92%に相当するとの分析もあります。※3
2. ナルコレプシー(過眠症)の可能性
十分に眠っているにもかかわらず、耐えがたい眠気が繰り返される場合にはナルコレプシー(過眠症)の可能性が考えられます。
日本における有病率は約600人に1人と推定されており、世界的に見ても高い水準です。※4
ナルコレプシーは思春期から20代前半に発症しやすい傾向があり、情動脱力発作や突発的な睡眠発作が特徴とされています。単なる睡眠不足とは異なり、脳の覚醒維持機能に関連する疾患とされるため、早期に医療機関で相談することが重要です。
3. 睡眠時無呼吸症候群による日中の眠気
睡眠中に呼吸が一時的に止まる「睡眠時無呼吸症候群」は、深い眠りを妨げる要因とされます。本人は十分に寝たつもりでも眠りが断片化し、朝から強い眠気や集中力の低下を感じることが多いです。
こうした影響は労働生産性の低下に直結し、国内では年間約3兆円規模の損失が生じているとの推計もあります。※5
特に運転や機械操作に従事する仕事では事故に直結しかねないため、より注意が必要といえるでしょう。
4. ストレスと自律神経の乱れ
強いストレスは自律神経の働きを乱し、睡眠の質を下げる要因になると考えられます。仕事上のプレッシャーや人間関係の悩みが続くと、交感神経が優位な状態が長引き、夜に十分にリラックスできないのです。
寝付きの悪さや夜中の中途覚醒が増えると翌日も眠気が続き、その状態が慢性化してしまう可能性も少なくありません。ストレスによる睡眠障害は労働生産性の低下とも関連があると報告されています。※6
5. 生活習慣病や薬の副作用
眠気の背景には、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が関わるケースもあるとされています。血糖値の変動は夜間の覚醒や浅い眠りを招き、日中の疲労感を悪化させる可能性があるためです。※7
また、降圧薬や抗うつ薬、抗ヒスタミン薬といった一部の薬剤には、眠気を誘発する副作用が報告されています。こうした要因は見落とされがちですが、睡眠障害の一因として注意が必要といえるでしょう。
関連記事:【医師監修】ロングスリーパーとは?特徴や原因、診断方法・おすすめの睡眠習慣を解説
睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、ストレス、自律神経の乱れ、生活習慣病など、治療で改善できる原因が隠れていることも少なくありません。
一人で我慢し続けると、仕事のパフォーマンスや将来の健康リスクにもつながります。20〜50代は責任も多く無理をしがちですが、質のよい睡眠は心と体の土台です。
「おかしいな」と感じた時点で、早めに専門医へ相談してください。検査と生活習慣の見直しで、多くの方が「日中も自然に目が覚めている状態」を取り戻せます。眠気に悩む毎日から一緒に抜け出していきましょう。
今すぐできる仕事中の眠気対策7選

「どうしても眠気に耐えられない」というときに、職場で取り入れやすい方法はいくつかあります。研究データや専門家の推奨に基づいて、比較的実践しやすい7つの工夫を紹介します。
1. 15〜20分のパワーナップ(仮眠)を取る
昼休みや休憩時間に15〜20分ほどの仮眠をとると、作業効率が改善する可能性があるとされています。
NASAの研究によると、短時間の仮眠によってタスクのパフォーマンスが約34%向上したとの報告があります。※8
厚生労働省も「30分以内の仮眠」を推奨しており、強い眠気を解消したいときにはひとつの選択肢になるでしょう。※9
2. カフェインの戦略的摂取
コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは覚醒効果を持つとされています。特に仮眠の直前にカフェインを摂る「コーヒーナップ」により、目覚めた後の覚醒効果はより高まるとの報告もあります。※10
ただし、カフェインの摂りすぎや夕方以降の摂取には注意しましょう。夜の睡眠の質低下につながりかねないため、摂取のタイミングや量には十分な注意が必要です。
3. オフィスでもできる覚醒ストレッチ
肩回しや首のストレッチ、背伸びなどの軽い運動によって血流が促され、眠気が和らぐことがあるといわれています。座ったままでもできる簡単なストレッチは、オフィス環境でも取り入れやすい方法の一つです。※11
4. 光と温度による環境調整
光は、体内時計や覚醒度合いに影響を及ぼす要因となります。自然光や人工照明を上手に活用しましょう。また、室温については22〜24度程度が集中しやすい環境とされているほか、適度な換気も眠気対策に効果的です。※10
5. ガムを噛む・冷水で顔を洗う
咀嚼による刺激は脳を活性化させる可能性があるため、ガムを噛むことで眠気が和らぐことがあります。また、冷水で顔を洗うのも、交感神経が刺激されて覚醒感が得られやすい方法です。※11
6. 席を立って歩く・階段を使う
5分程度の歩行や階段昇降などの軽い有酸素運動は、心拍数を適度に上げて血流を改善し、結果的に眠気が軽くなると考えられています。オフィス内の移動を意識するだけでも、眠気の改善につながるでしょう。※11
7. 目薬・アロマオイルの活用
清涼感のある目薬の使用は、目の疲れを和らげる効果とともに眠気対策の一助になる場合があります。また、ペパーミントやレモンなどの香りは覚醒感を高めるとされているため、アロマオイルを利用する方法もおすすめです。※12
関連記事:【医師監修 】寝ても寝ても眠い女性必見!原因と改善策を徹底解説
医療機関を受診すべき5つのサイン

眠気があるといっても、「ただ眠い」だけでは片付けられないのが睡眠障害の可能性を示すサインです。受診を検討する目安となり得る、5つのポイントを紹介します。
1. 毎日のように居眠りが3か月以上続く
「3か月以上の過剰な眠気の持続」はナルコレプシーの診断基準の一つです。※13
日常的に強い眠気が続く場合には、睡眠障害の一因が隠れている可能性が考えられます。
2. 感情が高ぶると力が抜ける(情動脱力発作)
笑ったり驚いたりした際に筋肉の力が抜けてしまう症状も、ナルコレプシーの特徴です。※13
この現象が繰り返し見られる場合は注意が必要とされています。
3. 金縛りや入眠時幻覚がある
寝入りばなに幻覚を見る「入眠時幻覚」や、目覚めた直後に体が動かない「睡眠麻痺(金縛り)」といった症状は、ナルコレプシー患者の約7割にみられるという報告があります。※14
こうした症状が頻繁に起こるようであれば、専門医の診断を仰ぐとよいでしょう。
4. いびきが大きく、呼吸が止まることがある
夜間に大きないびきや呼吸停止が繰り返される場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。放置すると高血圧や心血管疾患などにつながるリスクが高まるとの報告も見逃せません。※15
睡眠中のいびきや呼吸停止は自分ではなかなか気づきませんから、睡眠アプリを活用したり家族に睡眠中の様子を聞いたりしてみるとよいでしょう。もしこうした兆候がある場合、早めの受診が望ましいです。
5. 日中の眠気で仕事や生活に支障が出ている
仕事中に居眠りが増える、集中力が続かない、事故やヒヤリハットが多くなる、人間関係に誤解が生じるなど、眠気によって生活全体の質(QOL)が下がっていると感じられる場合も要注意です。
生活への支障が徐々に増えてきているなら、医療機関に相談し検査を受けることが一つの解決手段になります。
関連記事:分割睡眠でも日中パフォーマンスを落とさない方法と寝具環境の最適解
根本的な睡眠改善のための生活習慣5つのポイント

仕事中の眠気を和らげるには、その場しのぎの対策だけではあまり意味がありません。生活習慣を少しずつ整えていくことが大切です。長期的に睡眠の質を高めるために意識したい5つのポイントを紹介します。
1. 規則正しい睡眠リズムの確立
毎日同じ時間に寝て起きる習慣は、体内時計を整え概日リズム(サーカディアンリズム)を安定させるうえで重要です。休日も平日とほぼ同じ習慣を続ければ、大きなズレが起こりにくいため自然な眠気のリズムを保ちやすくなります。※9
2. 就寝前のスマホ・PCを控える
スマホやPCから発せられるブルーライトは、交感神経を刺激し、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を抑えるといわれています。寝る1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンを控え、入眠しやすい環境をつくりましょう。※3
3. 適度な運動習慣をつける
日中の運動は夜間の深い睡眠を促す効果が高いといわれています。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を週に3回、1回30分程度行うことが推奨されています。※9
無理のない範囲で体を動かす習慣がつくと、睡眠の質の改善に役立つでしょう。
4. カフェイン・アルコールの摂取を控える
カフェインは体内に取り込まれてから効果が持続する時間が4〜6時間程度とされているため、就寝直前の摂取は眠りに影響を与えかねません。入眠を助ける印象があるアルコールも、摂取量によっては睡眠の後半で質が低下するといわれています。摂取のタイミングや量を考慮しましょう。※9
5. 快適な睡眠環境を整える
寝室の温度は16〜26度、湿度は50〜60%程度が目安とされています。※9
暗さや静けさに加えて、枕やマットレスなど自分の体に合った寝具を選ぶことも、睡眠の質を左右すると考えられます。寝具について詳しく知りたい方は、「睡眠の質を高める寝具選び」に関する記事も参考になるかもしれません。
関連記事:【医師監修】睡眠と免疫力を底上げする方法と寝具改善の全て
まとめ:仕事中の眠気は放置せず適切な対処を
仕事中に眠気で困ってしまう背景には、単なる寝不足だけでなく睡眠障害や生活習慣の乱れが関わっている場合もあるようです。特にナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群などの疾患は、見過ごさず早めに適切な治療を行うことが大切です。
まずは、職場で実践できる短時間の仮眠やカフェイン摂取、ストレッチなどの即効的な対処法を試してみましょう。そのうえで、以下のような状態が続く場合には、医療機関を受診してみてください。
- 居眠りが毎日のように数か月以上続いている ※13
- 笑ったときに力が抜けるなど、ナルコレプシー特有の症状がある
- 夜間の睡眠が極端に乱れ、いびきや呼吸停止を指摘されたことがある
眠気を放置してしまうと、仕事上のパフォーマンス低下や健康リスクが広がる可能性が高いです。睡眠改善は長期的に自分への投資につながる取り組みと考えて、小さな工夫から始めてみませんか。
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https://jp.koala.com/pages/120-night-trial?utm_source=blog
・参考
※1 平均睡眠時間の国際比較 | OECD
※3 睡眠不足による経済損失に関するレポート | NTTデータ経営研究所
※5 睡眠時無呼吸症候群と労働生産性 | NTTデータ経営研究所
※8 Fatigue Countermeasures Program | NASA
※13 ナルコレプシー診断基準 | 医療法人社団グッドスリープ グッドスリープ・クリニック
※15 睡眠関連資料 | 厚生労働省










