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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
家族から歯ぎしりを指摘されたり、朝起きたときに顎の疲れを感じたりすると、「枕が合っていないのでは」と考える人もいるでしょう。枕は、睡眠中に頭部を支える重要な役割を果たしているためです。
枕を替えるだけで歯ぎしりが治るとは限りませんが、体に合う枕は、首や顎に負担の少ない寝姿勢を保つ助けになります。一方で、歯のすり減りや顎の痛みなどがある場合は、枕だけで対処せず歯科へ相談することも大切です。
この記事では、歯ぎしりと枕の関係や、枕の高さ・硬さを選ぶポイント、歯科を受診する目安を解説します。枕でできる対策とその限界を知り、自分に必要な対処法を見極めましょう。
歯ぎしりと枕の関係は?
枕は、歯ぎしりそのものを治すものではありません。ただし、体に合う枕を使うことで、首を自然に支え、顎が圧迫されにくい寝姿勢を保つ助けになります。
睡眠中の歯ぎしりには、歯を横へこすり合わせる、強く噛みしめるといった動きがあります。その原因はひとつではなく、ストレスや飲酒、喫煙など、複数の要因が関係すると考えられています。
一方で、枕の高さや寝姿勢が歯ぎしりを直接引き起こすという医学的根拠は、十分に確立されていません。そのため、枕を替えるだけで歯ぎしりの回数が減るとは限りません。
ただし、合わない枕で首や肩がこわばったり、横向きで顎が圧迫されたりすると、起床時の顎周辺の不快感が強まる可能性があります。歯のすり減りや欠け、顎の痛み、口の開けにくさなどがある場合は、歯科へ相談しましょう。
合わない枕が歯ぎしりにつながる理由
枕と歯ぎしりの直接的な因果関係は明らかになっていません。ただし、枕の高さや寝姿勢が合わないと首や顎に負担がかかり、起床時のこわばりや痛みが強まる場合があります。
ここでは、高すぎる枕と、枕なし・横向き寝による負担について解説します。起床時の首や顎の状態も確認しながら、自分の寝姿勢を見直しましょう。
1. 枕が高すぎるとうつむき姿勢になる
仰向けで枕が高すぎると、顎を胸へ引いたような姿勢になります。その状態が続くことで首の後ろが伸ばされ、首や肩にこわばりを感じる場合があります。
高い枕だけで奥歯の噛みしめが直接引き起こされるわけではありませんが、枕を調整しても起床時の顎の疲れや痛みが続く場合は、歯ぎしり自体について歯科へ相談する必要があります。
枕が高すぎる場合に起こる不調と高さの見極め方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:高い枕は体に合う?高すぎる枕のデメリットと理想の高さの見極め方
高すぎる枕で首が前傾すると、気道(空気の通り道)が狭くなります。すると睡眠中に息苦しくなって脳が覚醒し、交感神経が優位に働くことで、歯ぎしりや食いしばりが強く誘発されてしまうことがあります。いびきをかく方や朝起きると顎が疲れている方で、枕の高さが合っていないと感じる場合には、枕を見直しても良いかもしれません。この場合適切な高さを知るために、まずは後述のようにタオルなどを使って低めの枕を再現して試してみましょう。
2. 枕なし・横向きで顎が圧迫される
枕なしで寝ると、体格やマットレスの硬さによっては首が反り、首や肩に負担がかかります。また、枕なしで横向きになると頭が下へ傾き、頬や顎が寝具へ押しつけられやすくなります。
顎への圧迫が歯ぎしりを引き起こすとは証明されていません。ただし、顎関節に痛みがある場合は、顎を押しつける寝姿勢によって不快感が強まる可能性があります。
横向きで寝るときは、頭と首を支えられる高さがあり、頬や顎へ強く当たらない枕を選びましょう。痛みが続く場合は、寝姿勢だけで解決しようとせず歯科へ相談してください。
歯ぎしり対策の枕の選び方
歯ぎしりが気になる場合も、枕は首と頭を自然に支え、顎へ負担がかかりにくいものを選びましょう。適した枕は、体格や寝姿勢、マットレスの沈み込み方によって異なります。
確認したいポイントは、高さ、硬さ、形、調整のしやすさの4つです。「歯ぎしり対策用」といった表示だけで判断せず、実際に横になったときの姿勢を確かめてください。
1. 低めで自然な姿勢を保てる高さ
枕は、低いほどよいわけではありません。首のカーブや寝姿勢に合い、余分な力を入れずに横になれる高さを選びましょう。
仰向けでは、顎が胸へ近づき、首の後ろが強く伸びる場合は、枕が高すぎる可能性があります。立っているときに近い自然な首の位置を保ち、楽に呼吸できるか確認してください。
適切な高さは、マットレスに肩や背中がどの程度沈むかによっても変わります。店頭で枕を試す場合は、自宅で使っているマットレスに近い硬さの敷寝具で横になるのが理想です。
2. 寝返りしやすい適度な硬さ
頭が深く沈み込む枕は、寝返りを打ちにくくなる場合があります。一方、硬すぎて後頭部や耳に痛みを感じる枕も適していません。
頭を支えながら、無理なく左右へ向きを変えられる硬さを選びましょう。寝返りをしたときに中材が大きく偏らず、頭を動かせる幅があるかも確認します。
低反発や高反発といった素材の名称だけでは、硬さや寝心地を判断できません。同じ素材でも密度や形状によって感触が異なるため、可能であれば実際に試して選びましょう。
3. 横向き寝は顎にゆとりのある形
横向きで寝る場合は、肩幅に合う高さがあり、頬や顎を強く圧迫しない形の枕を選びましょう。中央より両端が高い枕は、仰向けと横向きの両方で頭を支えやすい場合があります。
また、顎の下へ枕の縁が当たる、耳や頬に痛みを感じるといった場合は、形や硬さが合っていない可能性があります。寝返りを打てる十分な横幅があるかも確認してください。
顎のためのくぼみなどが設けられた枕でも、歯ぎしりを防げるとは限りません。機能表示だけで判断せず、首や顎に余分な力が入らないかを確かめることが大切です。
4. タオルで手軽に高さを調整する
現在の枕が少し低いと感じる場合は、薄手のタオルを枕の下へ敷いて高さを調整できます。一度に大きく変えず、タオルを1枚ずつ加えながら寝心地を確認しましょう。
タオルはしわや段差ができないよう、枕の下へ平らに敷きます。数日間試し、起床時の首や肩、顎の状態に変化がないか確認してください。
タオルがずれる、細かな調整が難しいといった場合は、中材を出し入れできる枕も選択肢になります。痛みやしびれが生じた場合は使用を中止し、症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
枕以外にできる歯ぎしり対策
歯ぎしりが気になる場合は、枕だけで対処せず、歯や顎の状態を確認することが大切です。起床時の顎の疲れ、歯のすり減りや欠け、家族から指摘された歯ぎしりの音などを歯科医師へ伝えましょう。
日中に食いしばっていることに気づいたら、上下の歯を離し、唇だけを軽く閉じます。また、就寝前は飲酒や喫煙を控え、強い光や仕事から離れて落ち着く時間を設けましょう。
ストレスだけが歯ぎしりの原因とは限りませんが、緊張をやわらげる習慣は睡眠環境を整える助けになります。
なお、大きないびきや睡眠中に呼吸が止まる様子、日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群などが隠れている可能性もあります。呼吸器内科や睡眠外来へ相談してください。
根本的な対策は歯科のマウスピース
睡眠時の歯ぎしりには、歯科で作製・調整するマウスピース(ナイトガード)が使われることがあります。マウスピースは歯ぎしりの根本治療ではなく、歯や顎に加わる過度な力をやわらげるための対症療法です。使用中は、歯科で定期的な確認と調整を受ける必要があります。
使用中にマウスピースが変形する、穴が開く、痛みが生じるといった変化があれば、使用を続ける前に歯科へ相談しましょう。歯が欠けた、口を開けにくい、顎の痛みが強いなどの症状がある場合も、枕の調整より歯科受診を優先してください。
歯ぎしりの背景や枕以外の対策については、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】
歯ぎしりの原因を徹底整理|ストレス・噛み合わせ・睡眠の質から考える改善の道筋
歯ぎしり対策について徹底解説!マウスピース以外の改善方法と原因別アプローチ
歯ぎしりと枕に関するよくある質問
枕は寝姿勢を支える寝具であり、歯ぎしりの治療器具ではありません。ここでは、枕と歯ぎしりに関する2つの疑問へ回答します。
Q1. 歯ぎしりは枕で治る?
枕を替えるだけで、歯ぎしりが治るとはいえません。枕と歯ぎしりの直接的な因果関係は明らかになっておらず、体に合う枕は首や顎に負担の少ない寝姿勢を支えるものです。
歯のすり減りや欠け、顎の痛みなどがある場合は、寝具だけで対処せず歯科へ相談しましょう。歯や顎の状態を確認したうえで、必要に応じてマウスピースの使用などを検討します。
Q2. 枕なしで寝てもいい?
枕なしが体に合うかどうかは、体格や寝姿勢、マットレスの硬さによって異なります。
仰向けで首が反る、横向きで頭が下へ傾く、起床時に首や顎が痛むといった場合は、枕の高さが合っていない可能性があります。首と頭を自然に支えられる枕を使用しましょう。
なお、枕を使わなければ歯ぎしりが止まるという根拠はありません。歯ぎしりでお悩みの場合は歯科へ相談してください。
まとめ:歯ぎしりは枕と寝姿勢の見直しから
枕を替えるだけで、歯ぎしりが必ず治るわけではありませんが、首を自然に支え、顎を圧迫しにくい枕は、起床時の首や顎の負担をやわらげる助けになります。
枕を選ぶときは、低さだけで判断せず、自然な寝姿勢を保てる高さを選びましょう。頭が沈み込みすぎず、無理なく寝返りを打てる硬さや幅も確認してください。高さが少し合わない場合は、薄手のタオルを枕の下へ敷いて調整できます。
一方、歯のすり減りや欠け、顎の痛みなどがある場合は、枕だけで対処せず歯科へ相談することが大切です。マウスピースは歯ぎしりの根本治療ではなく、歯や顎に加わる過度な力をやわらげるために使われます。枕と歯科治療の役割を理解し、症状に合った対策を選びましょう。











