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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
「夜中に何度も目が覚める」「朝早く起きてしまう」「寝たはずなのに疲れが取れない」。年齢を重ねてから眠りが浅くなり、体力の低下や病気ではないかと不安を抱える方もいるでしょう。
若い頃のように朝までぐっすり眠れないと、体力の衰えや病気を疑って不安になることもあります。しかし、加齢による睡眠の変化は、多くが自然なものです。
この記事では、高齢者の睡眠に見られる特徴的な変化と、その原因、今日から見直せる生活習慣、そして医療機関に相談すべきサインを整理してお伝えします。
高齢者の睡眠に見られやすい特徴
高齢者の睡眠は、若い頃に比べて「早寝早起き・眠りが浅い・夜中に目が覚める」といった変化が起こりやすいとされています。
これは加齢に伴う自然な変化であり、日中に活動できていれば過度に心配する必要はないと考えられています。ここでは、代表的な3つの特徴をみていきましょう。
1. 早寝早起きになりやすい
加齢に伴い、体内時計のリズムが前倒しになりやすいとされています。夜は早い時間に眠くなり、朝も早く目が覚めやすくなります。
こうした生理的な変化のため、朝早く目覚めること自体が、ただちに異常を意味するわけではありません。日中に問題なく活動できていれば、過度に不安になる必要はないと考えられています。
2. 眠りが浅く熟睡感が少なくなる
加齢とともに、深い眠りであるノンレム睡眠の割合が減りやすいとされています。
そのため、睡眠時間を確保できていても「ぐっすり眠れた感じがしない」と感じる方が増えます。物音やちょっとした刺激でも目が覚めやすくなり、全体として浅い眠りの時間が増えるのが特徴です。
3. 夜中に何度も目が覚めやすい
夜中に途中で目が覚めること(中途覚醒)が増えやすいことも、高齢者の睡眠の特徴です。その背景には、夜間のトイレのための起床や、関節などの痛み、眠りの浅さといった要因があります。
一度目が覚めると再び寝つけないという悩みも少なくありませんが、こうした状態が続くときは、日中の過ごし方や寝室環境を見直すことが役立つと考えられています。
高齢者の睡眠時間の目安
高齢者の睡眠時間は、60歳以上で6〜8時間がひとつの目安とされています。ただし、あくまで目安であり、適切な睡眠時間には個人差がありますので、時間の長さだけにとらわれず、日中の状態を含めて総合的に捉えることが大切です。
60歳以上は6時間から8時間がひとつの目安
「8時間眠らなければならない」という思い込みは、かえって不眠の不安を強めることがあります。厚生労働省の資料では、60歳以上の睡眠時間として6〜8時間がひとつの目安に挙げられています。※1
ただし、この時間を満たさないからといって、不健康とは限りません。睡眠は時間の長さだけで評価するものではないとされていますから。日中に強い眠気がないか、休まった感覚があるか、生活に支障が出ていないかなど、総合的に判断することが大切です。
※1 国立健康・栄養研究所「健康日本21(第三次)目標一覧」
寝床にいる時間が長すぎると眠りが浅くなりやすい
睡眠不足を恐れるあまり、寝床で過ごす時間(床上時間)を長くしすぎないよう注意が必要です。
眠れない不安から早く布団に入り、長く横になりすぎると、寝床にいる時間に対して実際に眠っている時間の割合(睡眠効率)が下がり、かえって眠りが浅くなりやすいとされています。※2
そのため、睡眠時間を無理に増やそうとするよりも、眠くなってから寝床に入るという考え方が重要です。
年齢を重ねると睡眠が変わる理由
睡眠が短く浅くなるのは気のせいではなく、加齢に伴う体の変化が関係しています。ここでは主な3つの理由を解説します。
1. 体内時計が前倒しになりやすい
加齢によって、睡眠と覚醒のリズムが早い時間帯にずれやすくなるとされています。
その結果、早朝に目が覚める、夕方に眠くなる、夜遅くまで起きていられないといった変化が起こります。いずれも加齢に伴う自然な変化のひとつと考えられています。
2. 深い睡眠が減りやすい
高齢者では深い睡眠(ノンレム睡眠)が減り、浅い睡眠の割合が増えやすいのが特徴です。
眠りが浅くなることで、物音や尿意、体の違和感で目が覚めやすくなります。結果として、実際の睡眠時間以上に「眠れた」という感覚が低下しやすくなります。
3. 日中の活動量や昼寝の影響を受けやすい
日中の生活習慣が、夜の睡眠に与える影響は年齢とともに大きくなります。
たとえば、退職後の生活の変化や運動量の低下は、夜の寝つきや睡眠の維持に影響することがあります。また夕方以降の居眠りや長すぎる昼寝も、夜の睡眠リズムを崩す一つの要因です。
高齢者に多い睡眠の悩みと注意したいサイン
加齢現象の範囲内であれば様子を見て良いこともありますが、疾患が隠れている場合は注意が必要です。以下の症状がある場合は、生活習慣の改善だけでなく、睡眠外来の受診などを検討してください。
1. 夜間頻尿や痛みで目が覚める
夜中に何度も目が覚める原因として、尿意や体の痛み、持病、服用している薬の影響が考えられます。
このようなケースでは、睡眠そのものの問題というよりも、体調全体が関わっていることがあります。睡眠の悩みとしてだけでなく、生活や体調全体を医療機関で見直すと改善につながるでしょう。
2. いびきや無呼吸がある
大きないびきや呼吸停止は、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。※3
睡眠中に呼吸が止まる、日中に強い眠気があるといった場合は注意が必要です。本人は気づきにくく、家族が先に気づくことも多いため、家族にも様子を聞いてみるとよいでしょう。
※3 日本呼吸器学会監修「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
3. 足のむずむず感や寝言の激しい動きがある
眠れない原因の中には、よくある不眠とは違い、次のような睡眠障害のサインが隠れている場合もあります。※4・5
- 寝る前に足がむずむずする、動かしたくなる(むずむず脚症候群)
- 夢に合わせて大きな寝言や動きが出る(レム睡眠行動障害)
これらの症状は自己判断で放置せず、専門の医師に相談することをおすすめします。
※4 厚生労働省 むずむず脚症候群
※5 厚生労働省 レム睡眠行動障害
睡眠の質を高めるために見直したい生活習慣
睡眠の特徴を理解した後は、日々の習慣を整えていきましょう。医療機関での治療が必要な疾患がない場合、以下の生活習慣を見直すことが快眠への第一歩です。
1. 起床時間と日中の活動リズムを整える
毎日の起床時間をなるべくそろえ、朝に光を浴びて体内時計を整えると、夜に自然な眠気が来やすくなります。激しい運動は必要なく、散歩や家事など、日常のなかで無理なく体を動かすだけでも役立ちます。日中は活動し、夜に眠るというメリハリを意識しましょう。
2. 昼寝は長すぎないようにする
昼寝をとるなら、昼食後から15時までの間に、30分以内にとどめるのが目安です。※2
長すぎる昼寝は、夜の睡眠リズムを崩す要因になります。日中に強い眠気を感じるときも、短時間で切り上げるようにしましょう。
3. 寝る前の刺激を減らす
就寝前は、強い光やスマートフォンの操作、悩みごとを考えることをできるだけ控えましょう。熱すぎる入浴や激しい運動は避け、カフェインやアルコールのとり方にも注意して、体を休息モードへ切り替えてください。
あわせて、寝室の温度や明るさ、マットレスや枕などの寝具を見直すことも、眠りやすい環境づくりに役立ちます。
高齢者の睡眠の特徴を知り生活と環境を見直そう
高齢者の睡眠は、早寝早起き、眠りの浅さ、中途覚醒などが特徴として現れやすく、加齢による自然な変化が多く含まれています。まずは睡眠時間の目安を確認し、日中の活動を増やし、寝床に長く居すぎないといった生活習慣を調整することから始めましょう。
ただし、日中の不調が続く場合や、いびき・異常行動などの気になるサインがある場合は、睡眠障害の可能性もあるため、一人で抱え込まずに医療機関へ相談してください。ご自身の状態を正しく把握し、生活と寝室環境を整えて、健やかな毎日を過ごしましょう。





