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監修者

森田 麻里子
医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家
2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016
「深い睡眠ってどのくらい確保できたらいいの?」「スマートウォッチやアプリで睡眠計測できたけど良いのか悪いのかわからない」「深い睡眠が10%ぐらいだったけどいいのかな」などと思ったことはないでしょうか。
深い睡眠が減少すると、集中力や記憶力が低下し、仕事の効率が低下します。また、免疫機能が低下し風邪を引きやすくなったり、肌荒れや肥満など美容やダイエットにも影響しやすいです。
本記事では、睡眠コンサルタントの南 茂幸が深い睡眠が必要な割合をはじめ、最新の研究から睡眠の質を改善する方法、寝具選びまで解説します。睡眠の質を改善することで、朝起きた時のだるさや日中の集中力を改善しエネルギッシュな毎日を手に入れましょう。
深い睡眠とは?理想割合と年代別の実態

深い睡眠は、人にとってどのような役割があるのでしょうか。
深い睡眠には、成長ホルモンの分泌や記憶の定着、眠気の解消、脳の老廃物の除去、免疫機能の回復、集中力の向上、精神的な安定など実に様々な役割があります。つまり、深い睡眠の確保は、細胞の修復や新陳代謝が行われ、新しいことを記憶し、朝スッキリ目が覚め、日中の眠気がなくなり、アルツハイマー病の予防ができ、風邪を引きにくくなることに繋がるのです。
では、深い睡眠は一晩でどのくらい確保したらいいのでしょうか。メタアナリシスの研究では、深い睡眠の割合は約20%前後と報告されています。年代差で比較すると、若年成人(20代)は約20〜25%、中年(40〜50代)は約15〜20%、高齢者(60代以降)は10〜15%程度と、年齢とともに深い睡眠の割合は減少する傾向がありますが、年齢との有意な相関は統計的には確認されなかったとされています。※1
一方で、6,785人を対象に市販のウェアラブルデバイスで睡眠を測定した結果、深い睡眠の割合は平均15.2%と20%に達してないのが現状です。※2
理想20%の科学的根拠
先ほどの健常成人を対象としたメタアナリシスの研究の通り、深い睡眠の割合は平均値で約20%です。個人差を考慮すると、理想的な深い睡眠の割合は15〜25%程度とされています。例えば、7時間(420分)の睡眠時間の場合、約60〜105分が基準となります。
測定方法の違いと誤差
睡眠を計測する方法はいくつかあります。一番正確に睡眠を計測できる方法は睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)です。PSG検査は脳波や眼球運動、心電図、呼吸状態、筋電図などの整体情報から睡眠を測定する方法です。ただし、病院など普段とは違う睡眠環境や測定器具を着用した計測となるため、自宅での自然な睡眠よりも眠りにくい場合があります。また、費用がかかるため負担に感じるかもしれません。
自宅で手軽に睡眠を計測できる方法としては、睡眠トラッキング機能がついた睡眠アプリやスマートウォッチ、スマートリングなどのウェアラブルデバイスがあります。PSGと比較すると、計測の正確性は劣りますが、誰でも自宅でいつでも計測できるのがメリットです。これらのウェアラブルデバイスは心拍数や動脈血酸素濃度、加速度センサーにより睡眠を計測しています。ウェアラブルデバイス計測の精度はレム睡眠で70%、ノンレム睡眠なら60%程度と言われています。※3
よって、計測は1回だけでなく複数回行って傾向を把握すること、計測結果だけでなく自覚的情報も大切にすることが重要です。
深い睡眠や睡眠時間が不足すると起こること
深い睡眠が不足したり、睡眠不足が続いたりすると、集中力や記憶力が低下したり、免疫力が低下します。また、肌荒れや肥満、ストレスへの影響もあります。
睡眠は単に体と脳の「休息や回復」の役割だけではありません。深い睡眠が不足したり睡眠不足が続くと起きることについて、確認していきましょう。
翌日のパフォーマンス低下
睡眠の不足で最も大きな影響を受けるのが集中力の低下です。6時間睡眠を10日続ける、または、4時間睡眠を6日続けると、24時間起きていたグループと同じようなパフォーマンスになったという報告があります。※4
記憶力に関しては、新しく記憶する「前」の睡眠も、新しいことを記憶した「後」の睡眠も両方大切なことがわかっています。さらに、一晩徹夜すると怒りや不安の感情を司る扁桃体の活動が60%増大し、感情制御が弱まることも判明しています。※5
体調・免疫・ホルモンバランス
睡眠は、免疫力や成長ホルモンと深い繋がりがあり、深い睡眠を取ることで成長ホルモンが分泌されます。また、十分な睡眠時間を確保することは、免疫の生成や細胞の修復に効果を発揮します。
カルフォルニア大学の研究で、164名の健常成人(18-55歳)を対象に点鼻薬を用いて風邪ウイルスを注入したところ、睡眠時間によって罹患率に差があったとされています。具体的には、睡眠時間が7時間以上のグループでは罹患率は約18%、6時間以上7時間未満の罹患率は約23%、5時間以上6時間未満の罹患率は約30%、5時間未満は約45%でした。※6
成長ホルモンについては、入眠後の最初の深い睡眠で70%程度分泌されることがわかっています。※7
つまり、深い睡眠が取れないと成長ホルモンの分泌は著しく減少し、十分な睡眠時間が取れなければ免疫力が低下しやすいといえるのです。
肌・体型・メンタルへの影響
睡眠は美容にも密接に関わっています。深い睡眠が取れないと、成長ホルモンの分泌が低下するため肌のターンオーバーに悪影響を及ぼし、肌荒れに繋がります。
睡眠不足になると肥満になりやすいという説も有力です。4時間睡眠を2晩続けると、10時間睡眠をしたときと比較して食欲増進のグレリンを28%増加させ、食欲抑制のレプチンが18%減少したと報告されています。※8
このように、睡眠は美容やダイエットにも影響を与えているのです。十分な睡眠を取れないと交感神経優位な状態が続き、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されてリラックスしにくくなったり、感情コントロールが困難になって落ち込みやすくなったりしてメンタルによくない影響をおよぼすと考えられます。
深い睡眠を増やす5つの生活習慣

深い睡眠はただ脳や体を回復させるだけでなく、仕事への影響から体調、美容・ダイエットまで影響していることがわかりました。そこで、具体的に深い睡眠を増やす方法をお伝えします。
深い睡眠を増やす方法は、体温を下げること、夜に光を浴びないこと、日中に運動をすること、就寝前にルーティンを作ることなどいくつかあります。ここでは特に体温の調整と光の影響について解説するとともに、カフェインやアルコールの影響にも触れていきます。一つずつ生活習慣に取り入れて睡眠改善に努めましょう。
体温管理と入浴タイミング
深い睡眠を取るために重要なのは、深部体温を下げることです。深部体温が下がることで睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなり、スムーズな寝つきに繋がります。
そのためには、おおよそ就寝の90分前に入浴を完了させることが重要です。40℃前後の温度で10〜15分温まると、一時的に深部体温が上がり、やがて下がっていく時に眠気を感じます。ただし、深部体温はマットレスによる影響を受けやすく、高反発マットレストッパーは低反発マットレストッパーよりも睡眠の初期段階における深部体温の低下が大きいことに注意しましょう。※9
安眠のためには、高反発のマットレスを選ぶと良いでしょう。
光とメラトニン制御
深い睡眠を取るためにもう一つ重要なのが体内時計を整えることです。体内時計が整うことで睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されます。
体内時計を整えるためには、朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びるのが有効です。逆に、夜にブルーライトなど刺激の強い光を浴びると体内時計が乱れ、メラトニンの分泌量が低下してしまいます。夜にスマホやテレビなどの光を強く浴びない、部屋の光をリラックスしやすい暖色系に変えるといった工夫を取り入れて調整しましょう。
カフェイン・アルコールの影響
カフェインとアルコールは深い睡眠を妨げてしまいます。カフェインは覚醒作用があるため、スムーズな寝つきに悪影響を及ぼしてしまいます。例えばコーヒーなら、1日4杯程度までに抑えるとともに、就寝時間の8時間前ぐらいからは摂取しないようにしましょう。22時に寝る方の場合、14時以降は飲まないということです。
アルコールは一見眠気を誘うため良さそうに感じる方もいるかもしれません。しかし、アルコールを飲むことで利尿作用が働き、断眠になったり睡眠が浅くなったりします。※10
今日から深い睡眠20%を目指そう
最近は、ウェアラブルデバイスを用いて簡単に自分の睡眠を計測できるようになるなど、睡眠に関する管理がしやすくなってきました。最初に説明したように、深い睡眠の割合は20%を理想値として睡眠環境を整えていくことが大切です。十分な睡眠時間、そして深い睡眠が取れると、仕事の効率が向上したり、免疫力が高まったりするほか、美容やダイエットにも効果があります。
深い睡眠を得るためには、深部体温を下げるために入浴を活用し、朝日を浴びて体内時計を整えましょう。そしてカフェインやアルコールを摂取する量や時間帯にも注意し、理想の深い睡眠を目指してください。
参考
※1 Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis
※5 The human emotional brain without sleep — a prefrontal amygdala disconnect
※6 Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold









