睡眠コラム by Koala Sleep Japan2026年4月8日読了目安時間: 4

【医師監修】「眠るために旅に出る」時代へ。スリープツーリズムとは?

後平 泰信

医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。

【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療

明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。

最近、旅行の目的として「観光」でも「グルメ」でもなく、「ぐっすり眠ること」を掲げる人が増えています。

これを「スリープツーリズム」と呼びます。世界的なウェルネスブームの波に乗り、2024年以降、日本でも急速に関心が高まっているこの旅行スタイル。「眠るための旅」という一見シンプルな発想が、なぜ今これほど注目されているのでしょうか。

スリープツーリズムとは?

スリープツーリズムとは、良質な睡眠を取ることを主な目的とした旅行スタイルです。ウェルネスツーリズム(心身の健康維持を目的とした旅行)の一分野として位置づけられます。

従来の旅行と最も大きく異なるのは、「消費する旅」ではなく「回復する旅」という発想です。観光地を駆け回るのではなく、快眠を科学的にサポートする環境に身を置き、日常では得られない深い休息を得ることが目的となります。

具体的には次のような要素が含まれます。

  • 睡眠に特化した寝具・枕・照明・温度管理が整った客室
  • 就寝前のリラクゼーションプログラム(アロマ、ヨガ、入浴など)
  • 睡眠データの測定・解析サービス
  • 睡眠の質を高める食事(睡眠メシ)の提供
  • 翌朝の覚醒をサポートする朝食・ルーティンの提案

なぜ今、スリープツーリズムなのか

日本人の睡眠問題は深刻

スリープツーリズムへの関心が高まる背景には、日本人の慢性的な睡眠不足があります。OECDの調査(2021年)では、日本人の平均睡眠時間は世界33カ国中最短の1日7時間22分と報告されており、厚生労働省の調査でも日本人の5人に1人以上が「睡眠で十分に休養が取れていない」と感じています(厚生労働省「令和4年国民健康・栄養調査」)。

コロナ禍後に変わった「旅の価値観」

2024年に日本経済新聞がスリープツーリズムを特集し、世界市場規模を約96兆円と報じたことで、国内での認知が一気に広まりました。その背景には、コロナ禍を経て「有名観光地を訪れる」よりも「自分の心身を回復させる」ことに旅行の価値を見出す人が増えたことがあります。

JTBが2026年4月に発表した「2026年GW旅行動向調査」では、29歳以下の若年層が「旅行中に気になるキーワード」として「スリープツーリズム」を上位に挙げており、若い世代での関心の高さが明らかになっています。

スリープテック市場の拡大が追い風に

矢野経済研究所の調査(2025年3月発表)によると、国内のスリープテック市場は2026年に175億円規模への到達が見込まれています。睡眠データをAIで解析するウェアラブル端末や、体温・湿度を自動調節するスマート寝具など、科学的な眠り改善の手段が普及することで、旅先でのスリープツーリズム体験もより精度が高まっています。

日本国内のスリープツーリズム事例

日本初のウェルネス・カプセルホテル「ナインアワーズ」

都内を中心に展開するナインアワーズは、睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」を導入。宿泊者の睡眠データを計測・解析し、睡眠の質や呼吸状態などをレポートとして提供しています。カプセルホテルという手軽な形態でありながら、自分の睡眠を「見える化」できる点が特徴です。

お茶と睡眠を組み合わせた「ホテル1899東京」

東京・新橋のホテル1899東京では、お茶の力を活用したプラン「お茶と眠りのご自愛ステイ」を展開。カフェインレスのお茶を取り入れたリラクゼーションと、睡眠環境に特化した客室を組み合わせた、日本らしい独自のスリープツーリズムとして2025年に注目を集めました。

首都圏ホテルでの快眠プラン拡充

2026年3月の日経新聞報道によれば、首都圏のホテルでスリープテックを活用した宿泊プランの需要が拡大しており、周辺観光やグルメを目的としない「眠り特化型ステイ」が新たな旅行形態として定着しつつあります。

後平 泰信 医師
後平 泰信 医師
スリープツーリズムは最近非常に注目されており、国内外のホテルなど旅行産業界で急速に取り組みが進められています。旅行者の興味が消費から体験へと言われて参りましたが、さらに進歩したステージに入ってきた実感があります。お疲れの方は是非新しい旅の形に挑戦してみてはいかがでしょうか?

スリープツーリズムが睡眠に効果的な理由

「いつもと違う場所で逆に眠れないのでは?」という声もありますが、スリープツーリズムが効果を発揮する理由は環境のリセットにあります。

① 日常のストレス源から物理的に離れる 仕事や人間関係のストレスが交感神経を慢性的に刺激し続けると、自宅では副交感神経に切り替わりにくくなります。旅先という非日常空間に身を置くことで、心のスイッチをオフにしやすくなります。

② 睡眠に最適化された環境に身を委ねる 完全に暗く・静かで・適温に保たれた寝室を、専門家が設計・管理してくれます。寝具・温度・照明・香りがすべて快眠仕様に整えられた空間は、自宅の睡眠環境改善のヒントにもなります。

③「眠ることを目的にする」という意識の変化 スリープツーリズムでは「眠ること=旅の成果」になります。この意識の転換自体が、睡眠へのプレッシャーを下げてリラックスを促す効果があります。

旅の体験を日常の睡眠に活かすために

スリープツーリズムは一時的な体験ですが、「なぜよく眠れたか」を日常に持ち帰ることが長期的な睡眠改善につながります。

旅から帰ったら、次の点を振り返ってみましょう。

  • 室温・湿度:旅先の部屋は何度に設定されていたか
  • 照明:就寝前の明るさや色はどうだったか
  • 寝具:枕の高さ・マットレスの硬さは合っていたか
  • ルーティン:就寝前に何をしていたか(入浴・ストレッチ・読書など)

これらを自宅でも再現することで、スリープツーリズムで得た快眠を「旅の思い出」で終わらせずに活かすことができます。

まとめ

スリープツーリズムは、「眠ること」を旅の目的にするという新しい発想です。日本人の慢性的な睡眠不足、コロナ禍後のウェルネス志向の高まり、スリープテックの普及が重なり、2025〜2026年にかけて国内でも急速に存在感が増しています。

まずは1泊から体験してみて、「本当によく眠れる環境」を自分の体で発見する旅に出てみてはいかがでしょうか。

参考文献

<市場・調査データ>

  • JTBグループ|2026年ゴールデンウィーク旅行動向(2026年4月発表) https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2026/04/02_jtb_2026gw-travel-trend-outlook.html
  • 楽天グループ|楽天グループ 2025年 睡眠トレンド予測(2025年4月発表) https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2025/0424_01.html
  • 日本経済新聞|「スリープツーリズム」上陸 睡眠に商機、世界市場96兆円(2024年4月) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC240Q50U4A420C2000000/
  • 日本経済新聞|「スリープツーリズム」広がる 首都圏のホテル、対応の宿泊プラン拡充(2026年3月) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC260KU0W6A220C2000000/
  • 矢野経済研究所|スリープテック市場に関する調査(2024年)(2025年3月発表)

<睡眠・健康の公的情報>

  • 厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
  • 厚生労働省|令和4年国民健康・栄養調査結果の概要
  • OECD|Gender data portal 2021(平均睡眠時間の各国比較)

<スリープツーリズム事例>

  • yoi(集英社)|2025年のウェルネストレンドはスリープツーリズム!(2025年3月) https://yoi.shueisha.co.jp/body/retreat/8385/
  • WWDJAPAN|お茶がテーマのホテルで睡眠の質を上げる「スリープツーリズム」(2025年8月) https://www.wwdjapan.com/articles/2183549

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