睡眠コラム by Koala Sleep Japan2026年1月30日読了目安時間: 4

【医師監修】朝起きるとお腹が痛いのはなぜ?原因と対処法・受診目安をわかりやすく解説

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

朝、目が覚めた途端にお腹が痛い。出勤や通学の支度をしたいのに、トイレから離れられない。そんな日が続くと、体調だけでなく気持ちまで振り回されてしまいますね。日中は落ち着くのに、朝になるとぶり返す。理由がわからず先も見えないと、「大きな病気だったらどうしよう」と不安が大きくなります。

朝の腹痛は一つの原因だけでなく複数の要因が重なって起こることがあります。この記事では、原因を整理し、今からできる対処法、受診の目安、再発を減らす生活習慣などをわかりやすく解説します。

朝起きるとお腹が痛いのはなぜ?考えられる主な原因

朝は覚醒から外出までの短い時間で「体を起こして起床する→時間を意識する→予定を思い出す→朝食を食べる/支度を進める」と、体と心の切り替えが重なります。このタイミングで腸が敏感に反応する方がいます。

主な原因は次のとおりです。

  • IBS(過敏性腸症候群)
  • ストレス・不安と自律神経の乱れ
  • 睡眠不足・生活リズムの乱れ
  • 朝の飲食(冷たい飲み物、空腹でのコーヒー、脂っこい朝食など)

原因は一つとは限らず、複数が重なっていることも少なくありません。まずは「平日に強いか」「家を出る直前に強いか」「冷たい飲み物で悪化するか」など、影響が強そうな条件から確認しましょう。

IBSが朝の腹痛につながりやすい理由

IBS(過敏性腸症候群)は、検査で明らかな器質的異常が見つからないのにもかかわらず、腹痛と便通異常が慢性的に続く状態です。1), 2)下痢が続く、便秘が続く、あるいは下痢と便秘を繰り返すパターンがみられ、張り感を伴うこともあります。※1

IBSの特徴として、症状が朝から午前中に強く出やすく、夕方以降に落ち着く人がいることが知られています。また、排便後に腹痛が軽減するケースも多くみられます。。出勤や登校のプレッシャー、「また痛くなるかも」という不安が腸の反応を強めることがあり、自律神経の乱れもIBSの症状に深く関わっていると考えられています。

自律神経の乱れとストレスによる腹痛

腸はストレスの影響を受けやすい臓器です。朝は、睡眠中にリラックスしている副交感神経が優位な状態から、活動モードに入るため交感神経が優位な状態へ切り替わります。子供が朝に「お腹が痛くて学校に行きたくない」と訴えることがありますが、大人であっても、「予定の前」「失敗したくない場面」「遅刻が気になる朝」といったストレスや心配事があると、腸が過剰に反応し、腹痛として実際に感じてしまうことは珍しくありません。

このように脳から腸へ影響が及ぶ関係は「脳腸相関」と呼ばれますが、反対に腸の不調が不安や心配を強める「腸脳相関」も起こる場合があります。「脳↔︎腸」の双方向のやり取りが続くと、症状が固定化しやすいです。

睡眠不足・生活リズムの乱れの影響

睡眠時間が短い、眠りが浅い、寝る時刻が日によって変動する。こうした状態が続くと、朝に体が休まった感じが得られにくくなり、体調が崩れがちです。睡眠が乱れると、自律神経の切り替えが不安定になるため、起床後に腸が過敏に反応しやすくなるのです。その結果、「朝だけお腹が痛い」という形で表れることがあります。また、起床してから外出するまでの流れが毎回バラバラだと、体にとってはいつも慌ただしいスタートとなるため、腹痛が出やすくなる場合もあります。

まずは「当たり」をつける:セルフチェック5項目

当てはまるものがあれば、記事で紹介する対策を取り入れてみましょう。

  • 平日だけ(休日は軽い)
  • 家を出る直前から悪化する
  • 冷たい飲み物/空腹のコーヒーで悪化する
  • 下痢・便秘・残便感など便通の変化がある
  • 寝不足や就寝時刻の乱れが続いている

今日からできる朝の腹痛の対処法

朝の腹痛に対しては、「腸への刺激を減らす」ことと、「緊張を下げる」ことが基本です。

腸を落ち着かせる呼吸・リラックス法

起床直後に急いで動くと、交感神経が過度に働き体が緊張しやすくなります。目が覚めたら仰向けで、あるいは起床後に座って、まずは呼吸を整えましょう。吸う息よりも吐く息を長めにして、ゆっくりと数回繰り返してください。呼吸を丁寧にするだけでも、落ち着く人がいます。

朝の食事・飲み物で気をつけること

空腹でのコーヒー、冷たい水や牛乳などを一気に飲むことは、腸にとって刺激になりやすい場合があります。まずは常温や温かい水を少量から始めるとよいでしょう。朝食も同様に、胃腸の負担の少ないものを少量にしてみるのが無難です。乳製品で症状が悪化する自覚がある人は、朝の摂取を控えましょう。

お腹を温める・軽く動かす

お腹を温めると、張りや痛みが和らぐ人がいます。腹巻や温かいシャワーを使っても構いません。軽いストレッチや短い散歩も、緊張をほどく助けになります。

受診すべき症状と病院に行くタイミング

朝の腹痛が必ず重大な病気とは限りません。ただし、危険サインがある場合は別です。

すぐに受診すべき危険サイン

  • 血便や黒い便
  • 耐えがたい強い痛みが続く
  • いつもの腹痛と明らかに違う
  • 発熱や嘔吐で水分が取れない
  • 短期間で体重が減る

「続くなら受診」の目安

危険サインがなくても、次のような場合は一度相談すると安心です。

  • 2〜4週間以上続く/繰り返す
  • 仕事・学校に支障が出ている(遅刻、欠勤、外出不安など)
  • 下痢・便秘が続いて生活の質が落ちている

市販薬や生活調整で改善しない何科に行くべきかの目安

基本的に、消化器内科を受診しましょう。身体的な評価や治療を行ったうえで、不安や緊張が続く場合には、心療内科・精神科でも構いません。セルフモニタリングや消化器内科受診時、以下を記録しておくと役立ちます。

  • 痛みが出る時間帯(起床直後/出発前/朝食後など)
  • 便の状態(回数、形、残便感)
  • 直前・直後の要因(寝不足、冷たい飲み物、ストレスイベント)

消化器内科や心療内科を受診しても改善しない場合

医師による診察と治療だけでは腹痛が改善しないこともあります。その場合には、多くの心療内科・精神科クリニックで併設されている心理師によるカウンセリングも選択肢に入れましょう。診察とは異なり、ゆったりとした場で話を聞いてもらうことで、普段は気づきにくい自分のストレスに気づけることがあります。

お腹や腸は「第2の脳」とも呼ばれていますから、ストレスに気づいて軽減していけば脳(心)が緩み、結果として腸(体)も自然と緩んで落ち着いていくでしょう。

朝の腹痛を予防するための生活改善

朝の腹痛は、対処だけで終わらせると再発することがあります。再発を減らすには、朝に崩れやすい条件を少しずつ減らしていく視点が大切です。

睡眠の質を上げる方法

睡眠は時間だけでなく質も重要です。起床時刻をなるべくそろえる(就寝時間を揃えるよりも優先)、就寝前の強い光やスマートフォンの使用を減らすことが役立ちます。夜中に目が覚めやすい、寝返りが打ちづらいといった場合には、枕やマットレスなど寝具の見直しも検討しましょう。

食生活で気をつけたいポイント

夜遅い食事や過食は、睡眠中に消化活動が優先され、翌朝の胃腸の調子だけでなく、脳の休養感にも影響してしまいます。夕食はできれば就寝の2~3時間前までに済ませ、遅くなる場合は量を控えめにしましょう。

習慣を整えて再発を防ぐ方法

朝の腹痛は、生活の慌ただしさと結びつきやすい症状です。支度の一部を前夜に回す、朝の行動をルーティン化するのも一つの方法です。たとえば、起きたら光を浴びる→常温の水を少し飲む→トイレに行く→身支度をする→同じ順番で朝食を準備する、など同じ順番を作ることで、考えることがなくなるため朝の焦りが減りやすくなります。、、。小さく始めて、体調が安定する感覚があれば、その方法を習慣化していきましょう。

まとめ:朝の腹痛と上手に向き合うために押さえたいポイント

朝の腹痛は、IBS、ストレスと自律神経、睡眠不足や生活リズム、朝の飲食などが重なって起こることがあります。まずは、呼吸を整えて緊張を和らげる、冷たい刺激を避けてお腹を温める、朝のルーティンを作るなど、自分ができることから一つ始めてみましょう。

一方で、血便・黒い便、強い痛みの持続、発熱や嘔吐で水分が取れない、体重減少などがある場合は、早めに受診が必要です。

「第2の脳」とも呼ばれている腸。身体面の治療だけで改善が難しい場合は、心療内科の受診やカウンセリングの利用も含め、心と体の両面から整えていくことが大切です。

 

参考

※1 日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2 版)

https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf

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