汗が止まらないのはなぜ?考えられる原因と対処法・受診の目安
睡眠コラム by 石川 恭子2026年8月25日読了目安時間: 7

汗が止まらないのはなぜ?考えられる原因と対処法・受診の目安

石川 恭子
リテールスペシャリスト / 上級睡眠健康指導士

コアラマットレス®︎のショールームで、お客様が「運命のマットレス」に巡り合えるようお手伝いしているカリスマコンシェルジュ。お客様の眠りの悩みに耳を傾ける中で、今すぐ活用できる睡眠の知識を届けたいと上級睡眠健康指導士の資格を取得。コアラ®︎のマットレスを通じて、毎日眠ることが待ち遠しくなるワクワク感を提供したい。

特別に暑い日でも激しい運動をしたわけでもないのに、突然吹き出して止まらなくなる汗に戸惑い、人目が気になって不安や焦りを覚えた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。私自身も以前、大事なプレゼンを控えた打ち合わせの最中に緊張から大量の汗が止まらなくなり、衣服の汗染みや手元の資料が濡れないかばかりが気になって会話に集中できなくなってしまった苦い記憶があります。

汗が異常に出る背景には、体温調節や緊張といった生理的な現象だけでなく、多汗症やホルモンバランスの変化、あるいは身体の病気や薬の副作用など、さまざまな理由が隠れている可能性があります。汗をかく部位や発汗のタイミングといったご自身の症状を正しく観察し、適切な対処や受診に繋げていくことが安心への第一歩です。

本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の石川が、汗が止まらない場合に考えられる主な原因やセルフチェックのポイント、今すぐ試せる対処法から医療機関を受診する目安まで分かりやすく解説していきます。

汗が止まらないときに考えられる原因

まずは、汗が増える仕組みから整理します。

日本皮膚科学会の診療ガイドラインによれば、ヒトの発汗は温熱性発汗、精神性発汗、味覚性発汗の3種類に分類されています。※1

温熱性発汗は暑さや運動で体温を下げるための汗、精神性発汗は緊張や不安によって手のひらなどに出る汗、味覚性発汗は辛い食べ物で顔に出る汗が該当します。

こうした生理的な発汗のほかに、明らかな原因がないまま汗が多くなる多汗症、更年期のホルモン変化、別の病気や薬の影響などもあります。

1. 暑さや運動による体温調節

もっとも身近なのが、暑さや運動によって出る汗です。汗は蒸発するときに体から熱を奪い、体温が上がりすぎるのを防ぐ役割を担っています。汗の量は気温や湿度、運動の強さ、体格、暑さにどれだけ慣れているかによって大きく変わり、同じ環境でも人によって差が出ます。

環境省は、無理をせず徐々に体を暑さに慣らすこと、室内でも温度を測ることを予防のポイントとして挙げています。※2

汗が多いこと自体は自然な反応ですが、暑い環境での大量の汗に体調不良が重なっている場合は、通常の発汗ではなく熱中症の疑いも考慮することが必要です。

2. 緊張や不安による精神性発汗

日本皮膚科学会のガイドラインでは、手のひらと足の裏の発汗は恐怖や痛み、不安といった精神的な負荷で誘発されることから精神性発汗と呼ばれ、温熱刺激では発汗が生じず、睡眠中は発汗が消失すると説明されています。※1

なぜかというと、体温調節のための汗とは中枢が異なるためです。

厚生労働省の資料によると、緊張したときに汗をかく反応はパニック障害の症状のひとつとして挙げられており、外出や人と会うことを避けるようになる場合もあるようです。※3

汗を心配するあまり行動を控えるようになっている場合は、器質的な問題ではない場合がありますので、医師に相談してみるのもいいでしょう。

3. 原発性局所多汗症

明らかな原因がないまま、手のひらや足の裏、脇、頭や顔といった限られた部位に左右対称の汗を多くかき、日常生活に支障が出ている状態を原発性局所多汗症といいます。※4

ガイドラインが採用している診断基準では、局所的な過剰な発汗が明らかな原因のないまま6カ月以上続き、発症が25歳以下であること、左右対称性に発汗がみられること、睡眠中は発汗が止まっていること、1週間に1回以上の多汗のエピソードがあること、家族歴がみられること、それらによって日常生活に支障をきたすことという6項目のうち2項目以上があてはまる場合は多汗症と診断されます。※1

多汗症は、決して珍しい状態ではありません。2020年に日本国内で60,969人を対象に行われたweb調査では、原発性局所多汗症の有病率は10.0%で、部位別では脇が5.9%、頭部と顔面が3.6%、手のひらが2.9%、足の裏が2.3%でした。それにもかかわらず医療機関を受診した経験がある人は4.6%にとどまっており、多くの人が受診しないまま自分で対処している実態がうかがえます。※1

書類やスマートフォンが汗で濡れる、衣服の汗染みが気になるといった困りごとがあるなら、皮膚科で相談してみましょう。

4. 更年期のホットフラッシュ

40代以降の女性で、顔や上半身が急に熱くなって汗が噴き出す場合は、更年期の症状かもしれません。日本産科婦人科学会は、卵巣の機能が低下して女性ホルモンが大きくゆらぎながら低下することが主な原因であるとし、ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗を、血管が開いて熱を放出するときの症状として挙げています。※5

更年期にあたるのは、一般的に閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間です。※5

日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後ですが、40代前半から50代後半まで個人差がありますので、年齢だけで判断はできません。月経周期の変化や動悸、眠りにくさをともなって日常生活に支障が出ている場合は、婦人科へ相談してください。ホルモン補充療法や漢方薬など、症状に応じた治療が用意されています。※5

5. 病気や薬に伴う続発性多汗症

別の病気や薬の影響によって汗が増える状態は、続発性多汗症と呼ばれます。日本皮膚科学会のガイドラインで、全身性の原因として挙げられているのは薬剤性、循環器疾患、呼吸不全、感染症、悪性腫瘍、内分泌・代謝疾患、神経学的疾患です。

内分泌・代謝疾患には甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症などが含まれます。※1

たとえば甲状腺の働きが過剰になるバセドウ病では、日本内分泌学会の説明によると動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきといった症状が起こります。※6

低血糖による冷や汗も、糖尿病の治療中などに起こる具体的な状態であって、糖尿病だから汗が増えるとひとくくりにできるものではありません。急に汗が増えた、全身にかくようになった、発熱や動悸、体重減少をともなうという場合は、内科へ相談してください。新しい薬を飲み始めてから汗が増えた場合も、自己判断で中止せずに医師や薬剤師へ伝えることが大切です。

関連記事:上級睡眠健康指導士監修|夏用寝具について解説!涼しい素材選びからおすすめアイテムまで

汗をかく部位・タイミングから原因を考える

5つの原因を知ったうえで、次は自分の汗がどれに近いかを見当づけていきましょう。手がかりになるのは、どこにかくか、いつかくか、ほかにどんな症状があるかという3点です。下の表は、汗の出方ごとに考えられることと、あわせて確認したい症状を整理したものです。

汗の出方 考えられること 一緒に確認したい症状
手のひらや足の裏に左右対称、睡眠中は止まる 原発性局所多汗症、精神性発汗 緊張する場面で強まるか、25歳以下で始まったか
脇に左右対称、衣服に汗染みができる 原発性腋窩多汗症 思春期以降に自覚したか、家族に同じ悩みがあるか
頭や顔から流れ落ちる 原発性頭部顔面多汗症、更年期のホットフラッシュ 熱い食べ物や緊張がきっかけか、ほてりや月経の変化があるか
暑い場所や運動中に全身から 温熱性発汗、熱中症 めまい、頭痛、吐き気、倦怠感がないか
急に全身の汗が増えた、時期を問わない 続発性多汗症、薬の影響 発熱、動悸、体重減少、新しく飲み始めた薬がないか
睡眠中の寝汗が続く 寝室の暑さや寝具の影響、病気による発汗 環境を整えても続くか、発熱や体重減少がないか

表のうち特に注意したいのが寝汗です。手のひらや足の裏の多汗症は睡眠中に発汗が止まるという特徴がありますので、眠っている間に汗をかき続けている場合は別の要因が考えられます。厚生労働省の睡眠ガイドでは、夏に寝室の室温が上がると睡眠時間が短縮し睡眠効率が低下することが報告されており、夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持することが重要だと説明されていますので、まずは室温と寝具を見直してみましょう。※7

それでも寝汗が続く場合や発熱や体重減少をともなう場合は、受診して汗の原因を把握することが安心につながります。

汗が止まらないときの対処法

自分の汗がどの原因に近いか見当がついたら、次は対処です。ここで大切なのは、すべての汗に効く万能の方法はないという前提です。まずは暑さによる発汗かどうかを確かめ、状況に合った手を選んでいきます。

1. 涼しい場所へ移動して体を冷やす

暑い場所で汗が止まらないときに最初に行いたいのが、冷房の効いた室内や風通しのよい日陰へ移動し、衣服をゆるめることです。※8

そのうえで、体を冷やしていきます。

環境省のマニュアルでは、体表近くに太い静脈がある場所を冷やすのがもっとも効果的だとして、首の両側、脇の下、足の付け根の前面を具体的に挙げています。※8

保冷剤や氷枕、なければ冷えたペットボトルやかち割り氷をタオルでくるんで当てると、皮膚を通して静脈血を冷やせます。濡れタオルを体に当てて扇風機やうちわで風を送る方法も有効ですが、額に貼るジェルタイプのシートには体を冷やす効果はない点に注意しましょう。※8

ただし、この冷却が助けになるのは体温が上がっている場面です。原因が更年期や多汗症の場合、冷やすだけで汗が収まるとは限りません。

2. 状況に合わせて水分を補給する

体を冷やすのと並行して考えたいのが水分です。厚生労働省は、室内でも外出時でも、のどの渇きを感じなくてもこまめに水分や塩分、経口補水液などを補給するよう呼びかけています。※9

塩分については、状況によって必要性が変わります。環境省のマニュアルによると、大量の発汗があった場合には汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンクなどが最適で、水1リットルに1gから2gの食塩を溶かした食塩水も有効だそうです。※8

ですから、少し汗ばんだ程度の場面で塩分を足す必要はありません。

気をつけたいのは、飲ませてはいけない場面があることです。呼びかけへの反応がおかしい場合や、吐き気を訴える、吐くという症状がある場合は、誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため口から飲ませることは禁物であり、自力で水分をとれないときは緊急で医療機関へ搬送することが最優先です。※8

3. 衣服や室内環境を調整する

応急的な対処が落ち着いたら、汗をかきにくい環境づくりに目を向けましょう。通気性のよい衣服に着替え、汗を拭き取って肌を清潔に保つことは、汗による不快感やあせもを防ぐうえで役立ちます。室内では冷房や除湿を使い、暑さを我慢しないでください

夜間の汗が気になる場合は、寝室環境の見直しも有効です。前述のとおり、夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持しましょう。※7

就寝中もエアコンを切らず、湿気がこもりにくい寝具を選ぶと、寝床内の環境が安定します。マットレスや掛け布団の素材を通気性の高いものに替えるだけでも、朝の寝苦しさが変わるでしょう。

なお、市販の制汗剤や汗取り用の衣類は不快感を減らす選択肢にはなりますが、多汗症や背景にある病気そのものを治すものではありません。多汗症に対しては塩化アルミニウム外用療法やイオントフォレーシス、ボツリヌス毒素の局所注射といった医療機関での治療が段階的に用意されていますので、市販品で足りないと感じたら受診を検討してください。※10

4. 汗が出る状況と症状を記録する

環境を整えても改善しないときに役立つのが記録です。汗をかいた時刻、部位、直前にしていたこと、そのときの気温、食事の内容、服用している薬、一緒に現れた症状を書き留めておきます。

整理したいのは、特定の場面だけで起こるのか、睡眠中にも起こるのか、いつごろから急に増えたのかという3点です。この情報は、医師が原因を絞り込む材料になります。記録は自己診断のためではなく、受診時に正確に伝えるための準備として活用してください。

汗が止まらないときに疑いたい熱中症のサイン

対処法を知るのと同じくらい大切なのが、急を要する状態を見逃さないことです。暑い環境での大量の発汗に体調不良が重なっている場合は、熱中症を疑ってください。

環境省のマニュアルが熱中症を疑う症状として挙げているのは、めまい、失神、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、不快感、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温です。※11

熱中症は放置すれば死に直結する緊急事態であるとされていますので、重症の場合は救急車を呼び、現場ですぐに体を冷やし始めることが大切です。

判断の順序は明確です。まず呼びかけに応えるかを確かめ、応えない場合はすぐに救急車を呼び、到着までの間に涼しい場所へ移して服をゆるめ、体を冷やします。このとき、無理に水を飲ませてはいけません。※11

返事はするものの自力で水分をとれない場合や、応急処置をしても症状がよくならない場合は、すみやかに医療機関へ向かってください。症状が改善した場合も、そのまま安静にして十分に休息をとってから帰宅します。※11

汗が止まらないときの受診目安と診療科

緊急性がない場合でも、受診したほうがよい状況はあります。目安になるのは、暑くない場所でも大量に汗をかく、汗のせいで仕事や学業、家事に支障が出ている、急に汗の量が増えた、発熱や動悸、体重減少をともなうという4つです。

特に日常生活への支障は診断基準にも含まれる項目ですので、我慢の程度ではなく生活への影響で判断してください。※1

診療科の目安は、汗の出方によって分かれます。

手のひら、足の裏、脇、頭や顔といった局所的な汗が続く場合は皮膚科です。塩化アルミニウム外用療法やイオントフォレーシス、A型ボツリヌス毒素の局所注射といった治療が部位に応じて段階的に選択され、脇へのボツリヌス毒素注射は日本でも保険が適用されています。※10

全身の汗や、動悸や体重減少をともなう場合は内科が入り口になります。ほてりや月経周期の変化をともなう場合は、婦人科のほかに内科や心療内科の受診がすすめられることもあります。※5

薬を飲み始めてから汗が増えた場合は、続発性多汗症の可能性がありますので、自己判断で中止せずに処方した医師や薬剤師へ相談してください。強い緊張をきっかけに汗が出る場合、まずはかかりつけ医や皮膚科から相談を始めても構いません

まとめ:汗の出方を確認して原因に合った対処をしよう

汗が止まらないと感じたときは、汗をかく部位、タイミング、直前の行動、一緒に現れている症状を確認するところから始めてください。暑さや運動、緊張による自然な発汗のほかに、原発性局所多汗症、更年期のホットフラッシュ、病気や薬に伴う続発性多汗症という道すじがあります。※1※5

暑い環境で頭痛や吐き気、倦怠感をともなう場合は、原因を調べるよりも先に熱中症への対処が優先です。涼しい場所へ移り、首の両側と脇の下、足の付け根を冷やし、飲めるようなら水分と塩分を補給してください。呼びかけへの反応がおかしいときは、迷わず救急車を呼びましょう。

そして、日々の汗とうまく付き合ううえで見落とされやすいのが、夜の環境です。夏の寝室を涼しく保つことは睡眠の質そのものに関わりますので、室温と寝具を整えて、汗で目が覚めない夜をつくることから始めてみてください。それでも汗が生活に支障を及ぼす場合や、全身の症状をともなう場合は、ひとりで抱え込まずに医療機関へ相談しましょう。

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・参考

※1 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版 | 日本皮膚科学会
※2 熱中症の予防方法と対処方法 | 環境省熱中症予防情報サイト
※3 まずは知ろう!こころの病気 | 厚生労働省
※4 汗の病気―多汗症と無汗症― 多汗症とはどんな病気ですか? | 日本皮膚科学会
※5 更年期障害 | 日本産科婦人科学会
※6 バセドウ病 | 日本内分泌学会
※7 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省
※8 熱中症になったときには(熱中症環境保健マニュアル2022) | 環境省
※9 熱中症予防のために | 厚生労働省
※10 汗の病気―多汗症と無汗症― 多汗症はどのように治療しますか? | 日本皮膚科学会
※11 熱中症環境保健マニュアル2022 | 環境省