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監修者

五藤 良将
千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。
- 免許・資格
医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、スポーツドクター、日本美容内科学会評議員
初めての寝返りは、赤ちゃんの成長を実感できるうれしい瞬間である一方、「もう◯ヶ月なのに大丈夫だろうか」「早すぎて逆に心配」と、不安を感じやすい出来事でもあります。
私自身、わが子が周りより少し早く寝返りを始めたとき、喜びより先に「夜中にうつ伏せになっていたらどうしよう」と何度も様子を確認してしまい、正解が分からず戸惑った経験があります。
赤ちゃんの寝返りは発達の大切な節目ですが、実際には月齢ごとの目安や安全対策を正しく知ることで、過度に心配する必要はないことも少なくありません。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の石川が、赤ちゃんの寝返りがいつ頃から始まるのかを月齢別の発達データで整理し、前兆サインや無理のないサポート方法、そして2024年改訂の最新SIDS予防ガイドラインに基づく安全な見守り方までわかりやすく解説します。比べすぎて疲れてしまう前に、赤ちゃんのペースを安心して見守るための判断軸を一緒に確認していきましょう。
赤ちゃんの寝返り時期の目安|月齢別の発達データ

赤ちゃんの寝返りは、首や背中、腰の筋肉の発達に加えて、体を左右にコントロールする神経系がうまく連動することで初めて可能になります。寝返りができるようになる時期には個人差が大きく、「何ヶ月までにできないといけない」という明確な線引きはありません。
厚生労働省が実施した乳幼児身体発育調査によると、生後6〜7ヶ月未満の時点で約9割の赤ちゃんが寝返りを獲得しており、生後7〜8ヶ月までには95%以上が寝返りできるようになると報告されています。※1
この結果は、母子健康手帳に掲載されている発達曲線とも一致しており、発達のスピードには幅があることが前提として示されています。
生後3~4ヶ月:早い赤ちゃんが寝返りを始める時期
生後3〜4ヶ月で寝返りを始める赤ちゃんは全体としては少数派ですが、発達として問題があるわけではありません。この時期に寝返りが起こる場合、多くは首がある程度安定し、体をひねる力が強くなってきた結果、偶然の動きがきっかけになることが多いとされています。
ただし、この月齢では首の安定性がまだ十分でない赤ちゃんも多く、寝返り返りができないケースがほとんどです。そのため、うつ伏せの状態が長く続かないように見守ることや、睡眠中の環境を安全に整えることに注意しましょう。早く寝返りが始まった場合ほど、「できたこと」だけでなく、安全面への配慮を意識することが大切です。
生後5~6ヶ月:最も多い寝返りデビューの時期
生後5〜6ヶ月頃は、統計的に最も多くの赤ちゃんが寝返りを始める時期とされています。背中や腰の筋肉がしっかりしてきて、体を左右にひねる動きがスムーズになります。さらに、視覚や聴覚への反応が活発になり、興味のある方向へ体を動かそうとする意欲も高まってくる時期です。
「体をくねくねと動かす」「横向きの姿勢で止まる」といった様子もよく見られ、寝返り直前のサインのひとつです。赤ちゃん自身が体の使い方を試しながら、少しずつ動きを洗練させていく過程だと考えるとよいでしょう。
生後7~8ヶ月以降:ゆっくり発達する赤ちゃんも正常
生後7〜8ヶ月で寝返りをする赤ちゃんも、発達の観点から見るとまったく問題はありません。体重がしっかりある赤ちゃんや、体が柔らかく関節の可動域が広い赤ちゃんの場合、寝返りよりも先にお座りやずり這いといった別の動きに興味が向くこともあります。
このため、「まだ寝返りをしない」という一点だけで発達が遅れていると判断することは適切ではありません。寝返り以外の動きや全体の成長バランスを見ながら、その子なりのペースで発達しているかどうかを捉えることが大切です。健診でも寝返りは目安の一つとして確認されますが、必要に応じて経過を見守るというスタンスが基本です。
寝返り期はとくに安全な睡眠環境が最優先です。1歳まではあおむけ寝を基本に、硬く平らな寝床、寝床に物を置かない(枕・ぬいぐるみ・ゆるい寝具は避ける)を徹底しましょう。温度調整はスリーパー等で行うのが安全です。
不安が強い、左右差が目立つ、反応や哺乳が落ちた等があれば健診・小児科で早めに相談を。赤ちゃんのペースを大切に、安心して「できた」を迎えましょう。
寝返りの前兆となる5つのサイン

赤ちゃんの寝返りは、ある日突然できるようになるものではありません。実際には、体の使い方や動き方に少しずつ変化が現れ、その積み重ねの先に寝返りがあります。
日常の中で見られる細かな動きの変化は、寝返りへの準備が整いつつあることを示す大切なサインです。発達の流れに沿って見られやすい代表的な前兆を順に見ていきましょう。
1. 仰向けのまま体を移動させる
首がすわってくる頃になると、仰向けの状態で足の力を使い、体を左右にずらしたり、上下に動かしたりする様子が見られるようになります。一見すると遊んでいるだけのように見えますが、この動きは背中や腰の筋肉が発達し、体全体を使って力を伝えられるようになってきた証拠です。寝返りに必要な基礎的な筋力が育ち始めている段階といえます。
2. 横向きの姿勢を好むようになる
仰向けから自然に体を傾け、横向きの姿勢で過ごす時間が増えてくるのも、寝返り前によく見られる変化です。横向きの状態をしばらく保てるようになることは、体のバランスを取る力が育ってきていることを示しています。仰向けとうつ伏せの中間にあたる動きとして、寝返りへとつながる重要なステップです。
3. 下半身をひねる動きが活発になる
さらに成長が進むと、足を持ち上げて反対側に倒したり、腰を左右にひねったりする動きが頻繁に見られるようになります。寝返りは腕の力だけで行うものではなく、下半身の回転が大きな原動力になるため、下半身主導のひねり動作が増えてきたら体の使い方がより実践的になってきていると考えましょう。
4. おもちゃや声に反応して体をひねる
視覚や聴覚への反応が発達してくると、おもちゃの音や保護者の声がする方向に、視線だけでなく体全体を向けようとする動きが現れます。興味のある対象に近づこうとする気持ちが、体をひねる動作につながり、結果として寝返りの動きへと発展するのです。この段階では、「興味」が体の動きを引き出す重要な役割を果たしています。
5. うつ伏せの姿勢に興味を示す
タミータイム(大人が見守る中でうつ伏せ寝で過ごす練習の時間)を嫌がらず、むしろ楽しめるようになることも、寝返り前の大切なサインです。うつ伏せの状態で腕を使って体を支え、頭や胸を持ち上げられるようになると、寝返り後の姿勢を安定させる力が身についてきていると考えられます。うつ伏せを前向きに受け入れられるようになることは、寝返りへの準備が整ってきている目安の一つです。
関連記事:【医師監修】睡眠退行とは?赤ちゃんの睡眠リズムへの影響と対策
寝返り時期のSIDS予防と安全対策
赤ちゃんに寝返りが見られるようになる時期は、成長の喜ばしい節目である一方、SIDS(乳幼児突然死症候群)予防の観点では特に注意が必要な時期でもあります。
こども家庭庁と日本小児科学会は、2024年に安全な睡眠環境に関する指針を改訂し、寝返り期における具体的な対策をより明確に示しました。※2
最新の公的ガイドラインと専門家の見解をもとに、家庭で実践すべきポイントを整理して解説します。
1歳まではあおむけ寝を基本にする
SIDSのリスクを下げるため、寝返りができるようになったあとも1歳まではあおむけ寝を基本とすることが推奨されています。
自分で寝返りができるようになると、うつ伏せになっても大丈夫ではないかと考えがちですが、寝返り返りが安定していない時期は体勢を自力で戻せない可能性があります。そのため、特に寝返り返りがまだ十分でない赤ちゃんについては、寝かせる際の姿勢に一層の配慮が必要です。あおむけで寝かせる習慣を続けることが、SIDS予防の基本となります。
掛け布団を使わず着るもので温度調整
2024年の改訂で特に注目されているのが、「掛け布団は使わない」という推奨が明確に示された点です。掛け布団が何らかの理由で顔にかかり、窒息のリスクが高まる可能性を避けるためです。日本小児科学会もこの方針について見解を示しており、掛け布団の代わりにスリーパーやスワドルなど、着るタイプの寝具で温度調整を行うことが現実的で安全な方法だと説明しています。※3
顔にかからない形で体温を保てる環境を整えることが、寝返り期の安全対策として重要です。
固めのマットレスと安全な睡眠環境の整備
睡眠環境そのものを見直すことも、SIDS予防には欠かせません。日本小児科学会の調査によると、乳児の睡眠関連死の多くが安全でない睡眠環境で発生しており、特に窒息例の約74%に柔らかい寝具の使用が関与していたと報告されています。※4
寝具は沈み込みにくい、硬めで平坦なマットレスを選びましょう。枕やぬいぐるみ、タオルなど、顔の近くに物がある環境は窒息リスクを高めるため、寝床には何も置かない状態を保つことが大切です。これらの対策は、寝返りが始まったあとも継続して意識してください。
寝返りをサポートする適切な方法

赤ちゃんの寝返りは、教え込んだり練習させたりするものではありません。
基本となるのは、赤ちゃん自身が「動きたい」と感じる気持ちを尊重し、その意欲が見られたときにそっと支える姿勢です。無理に練習をさせる必要はなく、発達の流れに寄り添った関わり方こそが、結果的に安全でスムーズな寝返りにつながります。
無理な練習は不要|赤ちゃんのペースを尊重
寝返りがまだ見られないと、「練習させたほうがいいのでは」と不安になるかもしれませんが、首がすわっている状態であれば行動を起こす必要はありません。冒頭でもお伝えしたように、寝返りの時期は個人差が大きく、統計的にも月齢には幅があることが分かっています。無理に回転させたり、何度も同じ動きを繰り返させたりすると、赤ちゃんにとっては負担になり、思わぬ怪我につながりかねません。できないことに目を向けるのではなく、今できている動きや反応を積み重ねとして捉え、赤ちゃん自身のペースを信じて見守りましょう。
寝返りしたがっている時の手の添え方
赤ちゃんが体をひねり、もう少しで寝返りそうな動きを見せたときには、最小限のサポートを加えるのが適切です。背中や腰のあたりに軽く手を添え、動きの方向を邪魔しないように支えます。このとき、引っ張ったり押したりする必要はなく、あくまで転がりやすい状態を作るイメージです。赤ちゃん自身が力を使って回転できたという感覚を得られることが、その後の自信や運動発達につながっていきます。
環境を整える|動きやすい服装と広いスペース
寝返りを促すには環境づくりも重要です。体を締めつけない伸縮性のある服を選ぶと、ひねる動きがスムーズになります。また、床やマットは沈み込みすぎない硬さがあり、周囲に十分な広さが確保できる場所が理想です。赤ちゃんが体を動かしても心配がないよう、周囲に転倒や衝突の原因になる物がない状態を整えてください。
関連記事:【医師監修】ホワイトノイズとは?その効果と活用方法
寝返り時期によくある心配事Q&A
赤ちゃんの寝返りについて、「周りの子と比べて遅いのでは」「この動きは問題ないのか」といった不安を感じる保護者が少なくありません。
ただし、寝返りの時期や進み方には大きな個人差があり、単一の行動だけで発達を判断することはできません。
実際によく寄せられる質問をもとに、最新の統計データや医学的な考え方を踏まえて解説します。
Q1. 生後8ヶ月でも寝返りしない場合は?
生後8ヶ月で寝返りをしていない赤ちゃんは統計的には少数派です。しかし、それだけで異常と判断することはありません。厚生労働省の調査では、生後6〜7ヶ月未満で約9割が寝返りを獲得するとされていますが、残りの赤ちゃんの中には、寝返りをあまりしないままお座りやずり這い、ハイハイへ進むケースも含まれています※1。
大切なのは、寝返りだけに注目せず、お座りや手足の動き、視線の反応といった全体の発達状況を見ることです。気になる場合は、定期健診で医師に相談してみてください。
Q2. 生後3ヶ月での早い寝返りは問題?
生後3ヶ月頃に寝返りが見られる赤ちゃんは全体としては少数ですが、首がすわっている状態であれば問題ありません。※1
ただし、この時期は寝返り返りができないことが多いため、安全対策がより重要です。特に睡眠中はあおむけ寝を基本とし、顔の周りに物がかからないようにしましょう。寝返りが早くできた後の安全な見守りがポイントになります。
Q3. 寝返り返りはいつからできる?
一般的に、寝返り返りができるようになるのは、寝返りができてからおよそ1〜1.5ヶ月後が目安です。寝返りと同じく寝返り返りも個人差があり、寝返りはできるものの元に戻れないという状態がしばらく続くことは珍しくありません。
寝返り返りが安定するまでは、睡眠環境の安全確保を最優先に考えましょう。自力で体勢を変えられない時期ほど、大人が環境面で支えることが重要です。
Q4. 片側にしか寝返りしないのは大丈夫?
片側にしか寝返りをしない状態は、発達の過程でよく見られるもので、多くの場合は成長とともに自然に解消していきます。左右で筋力や動きの得意・不得意があるため、一方に偏ること自体は珍しくありません。
ただし、向き癖が強く、頭の形や姿勢が気になるなら、寝る向きを工夫したり遊ぶ位置を調整したりといった工夫を試してみましょう。それでも心配が残る場合は、健診や専門外来で相談してみてください。※1
Q5. 体重が重い子は寝返りが遅い?
体重がしっかりある赤ちゃんは、体を持ち上げたり回転させたりする動きにより多くの力が必要になるため、寝返りがやや遅くなる傾向があります。これは発達の遅れではなく、体格による違いと考えられています※1。
無理に練習をさせる必要はなく、動きやすい服装や安全なスペースを整えて赤ちゃん自身のタイミングを待つことが大切です。
まとめ|寝返りの時期は個人差が大きく焦る必要はありません
赤ちゃんの寝返りは、生後3〜8ヶ月という幅のある期間の中で起こる自然な発達の一つです。
重要なのは、「いつできるか」だけに目を向けるのではなく、その子なりの成長の流れを安全に見守れる環境を整えることです。特に寝返りが始まる時期以降は、睡眠環境の安全対策が赤ちゃんの命を守る重要な要素になります。
成長に合わせてマットレスや寝具を見直すことも、日々の育児の中でできる大切なサポートです。焦らずに、赤ちゃんの「できた」を安心して迎えられる準備を続けていきましょう。
・参考
※1 第2回 乳幼児身体発育調査企画・評価研究会 議事録|厚生労働省
※2 乳幼児突然死症候群(SIDS)について|こども家庭庁
※3 乳児の安全な睡眠環境の確保について(2024年改訂リーフレット)に関する見解|日本小児科学会
※4 わが国の乳児の睡眠関連死と寝具の関係について|日本小児科学会




