睡眠コラム by Koala Sleep Japan2026年1月30日読了目安時間: 6

【医師監修】女性でいびきが気になる人へ:原因・病気のサイン・今日からできる対策を徹底解説

目次

監修者

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

パートナーに指摘されて、「女性なのに、いびきをかくなんて」とショックを受けたり、恥ずかしい思いをしたりしていませんか。

若い女性でもストレスや疲労、鼻づまり、飲酒、寝姿勢などでいびきをかくことがあります。また、更年期の女性はホルモンバランスの変化でいびきが増えやすく、気づかないうちに睡眠時無呼吸症候群(SAS)につながるケースもあります。「恋愛や結婚に影響しないか」と不安を抱え、悩んで受診される女性も少なくありません。

本記事では、いびきの原因をライフステージ別に整理し、今日からできる改善策と病院受診の目安をわかりやすく解説します。いびきを「恥ずかしい音」として抱え込まず、健康を見直すサインとして活用しましょう。

女性のいびきは珍しくない?いびきとSASの基本

いびきは男性のイメージが強いかもしれませんが、女性でも珍しい現象ではありません。重要なのは、いびきの背景に睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)が隠れていないかです。

いびきはどうして起こる?気道が狭くなるメカニズム

いびきは、睡眠中に空気の通り道(上気道)が狭くなり、空気が通る時に、のどや舌周辺が震えて音が出る自然な現象です。上気道が狭くなる原因は複数あり、主な仕組みは以下の通りです。

  • 舌根沈下(舌が落ち込む): 睡眠で筋肉がゆるみ、舌の根元(舌根)が気道に落ち込み、気道が狭くなります。
  • 鼻づまり:鼻づまりや鼻炎で鼻呼吸ができず口呼吸になる影響で、舌の位置が後方に下がりやすくなります。
  • 骨格・脂肪:肥満だけでなく、下あごが小さいこと(小顎)でも気道が狭くなり、痩せ型でも起こります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

SASとは睡眠中に上気道が強く狭くなることで、呼吸が浅くなったり(低呼吸)、一時的に止まったり(無呼吸)する病気です。主にのどの周辺で気道が狭くなることで起こり、息苦しさや夜間に覚醒を何度もしてしまうことで睡眠が浅くなります。結果として日中の眠気や高血圧をはじめとした心血管系の病気のリスクにつながります。

女性でも多い?日本人におけるいびき・SASの頻度

日本呼吸器学会は、成人のSASの有病率について、男性が約3〜7%に対して女性が約2〜5%と報告しています。1) 男性では40〜50歳代が半数以上を占める一方、女性は閉経後に増加します。さらにSAS診療ガイドライン2020によると、閉経前女性が約1.5%であるのに対し、閉経後女性では約9.5%と閉経後は頻度が大きく増えることが示されています。2) 

男性のいびきと女性のいびきの違い

男女でいびきの傾向は違います。女性は骨格要因とホルモンの変化による影響が目立ちます。

 

項目 男性に多い特徴 女性に多い特徴
主な原因 肥満による首回りの脂肪沈着の影響が目立ちやすい 肥満、あごが小さいなどの骨格要因に加え、更年期・閉経に伴うホルモン変化の影響が目立ちやすい
発症タイミング 若年から生じうる 更年期・閉経を境に発症することが多い
気づくきっかけ いびきの大きさが目立ちやすい 「大きないびき」よりも、だるさ・頭痛・集中力低下などのなどの”非定型症状”が前面に出て気づきにくい場合がある

ライフステージ別:若い女性から更年期までのいびきの原因

女性のいびきは、生活習慣、体型変化、ホルモンバランスなど年代ごとに異なる原因があります。

20〜30代女性に多い原因

疲労とストレス: 仕事・家事・育児などによる疲労やストレスの程度が大きいと、寝ている時に全身の筋肉が緩み、舌が落ちやすくなります。

飲酒と夜更かし:寝る前の飲酒や睡眠薬の服用、舌やのど周りの筋肉を緩ませていびきが悪化しやすいです。。

鼻炎・花粉症:鼻づまりによる口呼吸が常態化し、いびきになりやすいです。。

40代前後で増えるいびき

40代は、仕事と家庭の両立によるストレスと疲労がピークになりやすく、いびきが増える傾向があります。

体重増加と脂肪分布: 基礎代謝の低下や運動不足により体重増加が起こりやすい年代です。首まわりの脂肪もつきやすく、気道を圧迫してしまいます。。

加齢による筋力低下: 舌や上気道の筋肉も年齢と共に筋力低下し、舌がのどに落ち込みやすいです。

妊娠と産後

妊娠中は体重変化や鼻粘膜のうっ血(妊娠性鼻炎)などで、いびきが増えることがあります。強い眠気、呼吸停止の指摘、高血圧などがある場合は、早めにかかりつけの医療機関に相談してください。

更年期と閉経後に増えるいびき

更年期や閉経後の女性は、SASリスクが最も高まる時期です。更年期症状(疲労感や不眠)と重なり、「年齢のせい」と見逃されることがあるため注意が必要です。

プロゲステロン等の女性ホルモンの低下: 呼吸の調整や上気道筋の働きに関与するホルモンが低下し、気道が狭くなりやすくなります。

 

放置すると危険ないびきのサインとは?受診を考える目安

受診を検討すべきいびきとは、背景に睡眠時無呼吸症候群の存在が疑われ、普段の生活に支障がでているケースです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うサイン

複数当てはまる場合には注意しましょう。

  • 睡眠中のいびき いびきが大きい/不規則、呼吸が止まる
  • 起床時の不調  起床時の頭痛、口の乾燥、熟睡感の欠如
  • 日中の眠気   活動中の強い眠気や集中力低下
  • 夜間覚醒    息苦しさで目が覚める

運転中の眠気がある場合は、安全面のリスクが高いため、早めの受診が必要です。

どの科を受診したらよい?

後ほどお伝えするセルフケアを数ヶ月続けても効果が感じられない場合やSASを疑うサインがある場合は早めに受診しましょう。鼻やのどの異常などが原因の場合は、まずは耳鼻咽喉科を(、それ以外の場合や、SASが疑われる場合は睡眠外来が適しています。睡眠検査は、まず在宅での簡易検査を行い、必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)など詳しい検査に進むのが一般的です。

 

今日からできる女性のいびき対策5選

いびきの改善は、まず自宅でできるセルフケアから始めましょう。

1. 寝姿勢と寝具(枕・マットレス)を見直す

仰向け寝は重力で舌が落ちて、いびきが出やすくなります。

横向き寝の習慣化: 横向き寝は気道を確保しやすく、いびき改善の基本姿勢です。

寝具の選び方:横向きに寝ると、肩や腰に荷重がかかります。体圧を分散して横向きの姿勢を安定させるマットレスを選ぶことが重要です。枕の高さも、首が曲がらず気道がまっすぐになるように調整しましょう。

2. 体重と首まわりの脂肪を整える

肥満は気道を狭くする要因の一つです。減量は首まわりの脂肪を減らし、気道の圧迫を解消する根本的な解決策になります。急激なダイエットは、継続しにくい上、体調を崩すおそれもあります。食事と運動による継続的な体重管理を行いましょう。

3. 鼻づまり・口呼吸を改善するセルフケア

鼻詰まりは、口呼吸を増やしていびきを悪化させてしまいます。次の点に気をつけて、鼻呼吸を促しましょう。

加湿:乾燥すると鼻の粘膜が腫れて鼻がつまりやすくなります。寝室を含めて適度に加湿しましょう。

鼻うがい:鼻づまりの解消に役立つことがあります(痛みや違和感が強ければ中止し、無理はしない)

口腔体操: 舌の筋力を維持・強化する口腔体操は、舌が落ちるのを予防するのに役立ちます。

鼻腔拡張テープ等:補助として有効なことがあります。

4. 飲酒・喫煙・睡眠薬など生活習慣を整える

アルコールや一部の睡眠薬には、筋肉をゆるませる作用があり、いびきを悪化させます。

飲酒制限: 寝る直前の飲酒を避けることが特に重要です。一方で、寝る直前でなくとも習慣的な飲酒はSASのリスクになると報告されています。飲酒量が多いと感じられている人は減酒もこの機会に考えるのもよいかもしれません。

喫煙は気道に炎症を起こし、いびきの原因の要因の1つとなります。そのほかの健康リスクからも喫煙の見直しを推奨します。。

5. マウスピースなどの治療を検討する

セルフケアで改善しない場合、治療の適応を検討します。検査で重症度を評価して、重症度に応じた治療を行うことが大切です。

マウスピース(口腔内装置): 軽症〜中等症のSASやいびきの対策として、歯科で作成するマウスピースが有効です。下あごを前方に固定し、気道を確保します。

CPAP(シーパップ): 中等症以上のSASには、持続陽圧呼吸療法(CPAP)が標準的な治療方法です。マスクを装着して気道に圧をかけることで気道が閉塞するのを防ぎます。

パートナーや家族からいびきを指摘された女性のQ&A

いびきは、いびきは、とくに女性では「恥ずかしい」「相談しにくい」と感じて受診が遅れることがあり、心理的負担につながる場合があります。まずは、実は多くの人が抱える問題であることを認識し、健康の問題として捉え、改善に向けて前向きに行動を開始しましょう。

指摘してくれた相手にどう伝える?傷つかない・傷つけないコミュニケーション

いびきの指摘はショックかもしれませんが、健康リスクの視点に立つことがポイントです。ショックだった気持ちを伝えつつ、、同時に心配してくれたことへの感謝を伝え、「一緒に対策したい」と協力をお願いしましょう。

恥ずかしさや自己否定感との付き合い方

いびきは「女性らしさ」ではなく、気道が狭くなっている身体のサインです。自己否定より、誰にでも起こりうることで、健康管理としてとらえることが改善の近道です。家族やパートナーに頼れる人は、以下なども一緒に考えたり行っていくのもよいかもしれません。お互いの健康を考えるよい機会になるでしょう。

  • 寝具選び(横向きが安定する環境)
  • 生活リズムの調整(可能な範囲で)
  • 受診の付き添い、検査・治療の継続サポート
  • 寝室環境の見直しを、よりよい睡眠への取り組みとして行う

女性のいびきと睡眠・健康全体の関係:長く元気に過ごすためにできること

いびきは騒音問題だけでなく、睡眠の質の低下が長く続くことによって、日中の生活や長期的な健康に影響します

睡眠時間・睡眠の質といびきの関係

厚生労働省は、 心身の健康を維持するために必要な睡眠時間はおよそ6〜8時間と発表しています。3) 十分な睡眠時間を確保しても休養感が乏しい場合には、睡眠の質の低下が考えられます。いびきやSASの影響も疑いましょう。

日中のパフォーマンス・メンタルヘルスへの影響

いびきによる睡眠の質の低下は、日中の眠気や集中力低下、イライラ、気分の落ち込みなど、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼしかねません。いびき対策をすることで、日中の仕事や家事、育児のパフォーマンス向上に繋がります。

長期的な健康リスクと予防の考え方

SAS(特に中等症~重症例)を放置すると、高血圧や虚血性心疾患(心筋梗塞など)、脳卒中などといった心血管疾患のリスクが高まることが、前向き研究のメタアナリシスを含む大規模研究で示されています。4), 5) そのため、生活習慣の改善、適切な治療、寝具環境の見直しなどを組み合わせることが重要です。。閉経後の女性は特に注意しましょう。

 

まとめ:女性のいびきは「恥ずかしい音」ではなく、身体からの大切なサイン

女性のいびきは珍しくありません。原因は、骨格・鼻づまり・生活習慣に加え、ライフステージ(特に妊娠、更年期・閉経)で変化します。セルフケア(横向き寝、食生活や運動習慣の改善、飲酒制限、寝具の見直しなど)で改善することも多い一方、呼吸が止まっている指摘や日中の眠気などがある場合は、耳鼻咽喉科や睡眠外来での相談が重要です。。

いびきを自己否定の対象としてではなく、健康を守るための身体からの大切なサインとして活用していきましょう。

【参考文献】

  1. 日本呼吸器学会 | 睡眠時無呼吸症候群 (閲覧日:2025年1月20日
  2. 日本呼吸器学会 | 睡眠時無呼吸症候群(SAS) の診療ガイドライン2020
  3. 厚生労働省 | 健康づくりのための睡眠ガイド 2023
  4. Dong JY et al.Obstructive sleep apnea and cardiovascular risk: a meta-analysis of prospective cohort studies. Atherosclerosis. 2013
  5. Yaggi HK, et al. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med. 2005

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