睡眠コラム by 松岡 雄治2025年10月27日読了目安時間: 6

【医師監修】寝言の原因を徹底解説!ストレスから病気まで原因別の対策法

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

「最近、寝言が増えたみたい」「昨夜も大声で何かしゃべっていたとパートナーから指摘されて恥ずかしい」「病気のサインではないかと不安」。そんなお悩みを抱えていませんか。

寝言は、ノルウェーの研究で約67%が一生のうちに一度は経験するという結果も出ています。1)
しかし、寝言の頻度が増えたり、はっきりしゃべったり、時には叫ぶような場合もあり、睡眠の質や健康状態が心配になります。寝言には、日常のストレスから睡眠環境、さらには隠れた睡眠障害など、さまざまな原因が潜んでいます。

この記事では、寝言が発生する主な原因とメカニズム、対策を科学的な知見に基づいて詳しく解説します。また、医療機関を受診する目安もまとめています。寝言への不安から解放されて、安心して眠れる夜を取り戻しましょう。

寝言が起こる5つの主な原因

いわゆるはっきりと聞き取れるような寝言は、睡眠が浅いときや、脳が活発に活動しているときに起こりやすい現象です。主な5つの原因(ストレス、睡眠のトラブル、生活習慣、年齢、病気)について解説します。

1. ストレス・心理的要因による寝言

寝言の最も一般的な原因は、日常のストレスと不安です。ストレスや不安が解消されないまま睡眠に入ると、脳が休息できず興奮した状態が続いてしまいます。私たちがはっきりとした夢を見るのが、「レム睡眠」です。2)夢は日常の記憶と紐づいているため、夢の中でも怒ったり、仕事上のトラブルに悩まされたりすることもあります

PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病の症状として悪夢を頻繁に見る場合もあります。このような場合には、ストレス体験が悪夢によって再現されることがあります。ストレスと夢は密接に関わっているのです。ただし、大人ではレム睡眠中は筋肉が弛緩し、夢を見ながら身体が動くことは通常ありません。多少の寝言は大人でもありますが、増えていくようなら要注意です。

2. 睡眠の質・睡眠環境の問題

睡眠の質の低下や睡眠環境の問題は、睡眠を浅くすることで寝言の原因になります。浅い眠りのとき、寝言が出やすくなります。寝言は睡眠の質が低いサインかもしれません。

3. 生活習慣(アルコール・カフェイン摂取)

不規則な生活や特定の飲食物は、睡眠の質を低下させ、寝言を誘発します。寝る前のアルコールいわゆる「寝酒」は寝つきを良くしますが、アルコールが代謝されてアセトアルデヒドに変化すると、覚醒作用が生じて睡眠が浅くなり、寝言が出やすくなります。カフェインも同様に覚醒作用により睡眠が浅くなります。さらに、どちらも尿意による中途覚醒のリスクもあるため、就寝前の摂取は控えましょう。

4. 年齢による要因(子ども・高齢者)

寝言の発生には年齢も関係します。子どもはレム睡眠の時間の割合が多く、レム睡眠中に筋肉を弛緩させる働きがまだ十分に発達していないので、寝言を言いやすいことが知られています。2) 3歳から10歳の子どもの約50%が年1回以上寝言を言うというデータがあり、脳の発達段階において一般的な現象です。3)多くは成長と共に減少するため、心配することはありません。

一方、高齢者でもレム睡眠行動障害の症状として寝言が増える場合があります。

5. 潜在的な病気のサイン

寝言が連日続いたり、大声や体動を伴ったりする場合は、睡眠障害のサインである可能性があります。寝言の経験がある人は、ない人に比べて脳卒中を起こすリスクが30%高まるという2024年の最新研究も発表されており、そのメカニズムについては今後の研究が待たれます6)

レム睡眠行動障害

レム睡眠中に本来弛緩するはずの筋肉が弛緩せず、夢の内容に連動して体が動いてしまう病気です。大声を出したり、手足を動かしたりします。4)パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患の初期症状として現れることがあります。

睡眠時無呼吸症候群

寝ている間に、呼吸が停止することで脳が覚醒する無呼吸発作を繰り返します。5)無呼吸状態から抜け出す際に声が出て寝言のように感じられたり、また睡眠が浅くなることで寝言が増える可能性もあります。

 

レム睡眠・ノンレム睡眠と寝言の関係

寝言と睡眠段階の関係を理解することで、原因や対策が見えてきます。ある研究で、寝言の20-25%はレム睡眠と関連し、75-80%がノンレム睡眠と関連しているとの報告があります。7)

レム睡眠中の寝言の特徴

レム睡眠は、夢を見ることが多い段階です。レム睡眠中の人を起こすと80%以上が夢を見ていたと話します。見ていた夢は、長く鮮明で感情を伴うものが多いです。8)レム睡眠中の寝言は夢を反映して、感情豊かな内容や会話形式の寝言が多く、「はっきりとしゃべる」傾向があるとも言われています。

ノンレム睡眠中の寝言の特徴

ノンレム睡眠は「深い眠り」の段階です。ノンレム睡眠中の人を起こした場合に夢を見ていたと話すのは10%以下という説もあり、レム睡眠に比べると格段にその割合が下がります。現実的な内容の夢を見ていることが多いといわれています。8)ノンレム睡眠中は、うなり声のようなものやむにゃむにゃとして聞き取りにくいものが多いようです。

 

寝言を改善する5つの実践的な方法

寝言をなくすための決定打となる方法は確立されていませんが、原因となるストレスや睡眠不足を解消することで、寝言の頻度を大幅に減らせる可能性があります

1. ストレス管理とリラックス法

寝言の最大の原因であるストレスを解消しましょう。就寝前に心身の緊張を解き、リラックスを促すことが大切です。深呼吸、瞑想、ぬるめのお風呂(入浴)などが効果的です。

2. 睡眠環境の最適化

睡眠の質は睡眠環境で決まるといっても過言ではありません。寝言を減らすための快適な寝室を作りましょう。

  • 温度・湿度: 快適な温度と湿度を保ちましょう。寝具内の環境が特に重要で、温度は33℃前後、湿度は50%程度の状態が最適です。9)
  • 寝具: 通気性の悪いマットレスは温度や湿度の観点から寝苦しくなるほか、体圧分散がうまくいかないと気道が狭くなって息苦しさを感じたり、寝返りを妨げるなどしてストレスとなります。通気性と体圧分散性に優れたマットレスを選ぶことが、質の良い睡眠への近道です。

3. 規則正しい睡眠リズムの確立

規則正しい生活は、睡眠の質を改善する基本です。毎日同じ時間に寝起きし、体内時計を整えましょう。成人は6-8時間の睡眠時間を確保することが理想的です。10)

4. アルコール・カフェインの制限

就寝前のアルコールやカフェインの摂取は、睡眠を浅くし、寝言の原因となります。夕方からは摂取を控え、ノンカフェインの飲み物に置き換えましょう。10)

5. 適度な運動習慣

日中の適度な運動は、夜の睡眠を深くします。有酸素運動や筋トレを習慣づけることで寝つきが良くなり、寝言を減らすことにもつながると考えられます。ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経が活発になって睡眠の質を低下させてしまうため避けましょう。

 

医療機関を受診すべき寝言の特徴

寝言のほとんどは自然になくなるため心配ありませんが、体動を伴ったりする激しい寝言は病気のサインかもしれません。受診の目安を確認しておきましょう。

危険な寝言のサイン

以下の症状がある場合は、睡眠専門医への相談をおすすめします。

  • 大声で叫ぶ、怒鳴るなど、激しい寝言が連日続く。
  • 夢の内容に合わせて手足を動かす、または暴力的な行動を伴う。
  • 日中の眠気や集中力の低下など体調に支障が出ている。

睡眠専門医への相談方法

寝言の状態は自分では分からないため、パートナーに協力してもらい、寝言の内容や頻度、体動の有無を記録しましょう。スマートフォンの録音アプリを活用する方法も有効です。

 

まとめ:寝言の原因を理解して適切な対策を

寝言はストレスや睡眠の質が低下しているサインのことがあります。そのような場合の多くは、生活習慣の見直しで改善が期待できます。しかし、その寝言の背景には病気が潜んでいたり、また脳卒中のリスクになるという説も出てきているため見過ごすことはできません。

寝言を減らすための基本は、十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を向上させることです。 

FAQ

Q.寝言に返事をしてはいけないのは本当ですか?

A. 本当です。寝言は浅い眠りの間に多く起こります。このタイミングで寝言に返事をしてしまうと、寝ていた人が覚醒してしまい寝不足の原因となる可能性があります。静かに見守り、動く場合には優しく体を元の位置に戻してあげましょう。

Q.大人になってもはっきりした寝言を言う場合は何科を受診すべきですか?

A.必ずしも受診は必要ではありませんが、寝言とともに身体も大きく動いたり、寝言の程度が激しい、頻度が高いなど気になる場合には、睡眠の専門的な診察が受けられる「睡眠外来」や「精神科」を受診するとよいでしょう。はっきりした寝言は良くないと言われることがありますが、レム睡眠中には、大人であってもはっきりとした寝言を言うことがあり、それだけでは病気とはいえません。

Q.寝言を減らすために今日からできる対策はありますか?

A. 夕方以降はアルコールやカフェインを控え、ぬるめのお風呂に入るなどしてリラックスする時間を作りましょう。日中のストレスを溜め込まないことが最も大切です。

 

参考文献

1)Bjorvatn B., Grønli J., Pallesen S. Prevalence of different parasomnias in the general population. Sleep Med. 2010;11(10):1031–1034.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21093361/

2)厚生労働省 レム睡眠

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-069

3)Reimão R. N., Lefévre A. B. (1980). Prevalence of sleep-talking in childhood. Brain Dev. 2, 353–357.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7224091/

4)厚生労働省 レム睡眠行動障害

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-070

5)厚生労働省 睡眠時無呼吸症候群

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-026

6)Prospective Study of Sleep Talking and Risk of Stroke

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.124.035813

7)Arkin et al. The frequency of sleep talking in the laboratory among chronic sleep talkers and good dream recallers. J Nerv Ment Dis. 1970;151:369-74.

https://journals.lww.com/jonmd/Abstract/1970/12000/THE_FREQUENCY_OF_SLEEP_TALKING_IN_THE_LABORATORY.2.aspx

8)日本睡眠学会 睡眠と夢

https://www.jssr.jp/sleepandsociety3

9)厚生労働省 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003

10)健康づくりのための睡眠ガイド2023

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf