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監修者

田中 貫平
医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター
2013年英国シェフィールド大学医学部卒。
手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。
「あと5分だけ」とスマートフォンを見続け、気づけば目が冴えて眠れなくなる。そんな経験は多くの現代人に共通しています。。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査によると、日本人の約4割が6時間未満の睡眠であると報告されています。1)
早く眠るために重要なのは、根性でスマホを断つことよりも、身体が休息モードへ切り替わるメカニズムを理解することです。スマホが睡眠に与える影響を整理し、無理なく続けられる対策をお伝えします。。
寝る前スマホが睡眠に影響する理由は3つ
スマートフォンが睡眠の質を低下させる理由は「光」「情報による脳への刺激」「就寝時刻の後ろ倒し」の3つです。
光の影響:画面が夜のスイッチを遅らせる
就寝前の光は、入眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。2) 特に短波長光(いわゆるブルーライト)は、体内時計に影響を与えやすいとされています。
ただし重要なのは色だけでなく光の強さ(照度)です。一般に室内光(100ルクス前後)程度の光でもメラトニン分泌を抑制する可能性があるとされ、明るい画面を至近距離で見る行為は影響を受けやすいと考えられます。3)
情報の影響:情報が脳を興奮させる
画面の光だけでなく、「内容による覚醒」が寝つきに影響します。SNSでの反応確認や動画視聴、仕事の連絡などは心理的覚醒を高め、自律神経のうち、活動や興奮をつかさどる交感神経を優位にします。
時間の影響:就寝が後ろ倒しになる
多くの場合、起床時間は決まっています。スマホを見続けることで、本来確保すべき睡眠時間そのものが削られます。「もうあと少し」が習慣化すると慢性的な睡眠不足につながります。特に思春期は体内時計が後ろにずれやすく、夜間のスマホ使用が睡眠不足を助長しやすいことが報告されています。4) 若年層ほど影響を受けやすい点は注意が必要です。
何分前にやめるべきか
理想は就寝の1〜2時間前とされていますが、生活スタイルに合わせた段階的な設計が現実的です。 まずは30分前から始め、慣れたら1時間前へのばします。重要なのは「完璧」より「継続」です。
夜型を改善するための優先順位
朝の光を浴びることが最優先になりますので、起床後はすぐにカーテンを開けましょう。5)
朝の光は体内時計をリセットし、脳内セロトニンの神経活動を高めてくれます。セロトニンは夜間にメラトニンに変換される前駆物質でもあり、このメラトニンは体内時計のリズムを整え入眠を促します。まずは一日の光のメリハリをつけることが、早寝への近道となります。
やめられない人のための設定と環境対策
完全にスマホを断てない場合でも、今夜からできるスマホの設定面での工夫で影響を軽減することができます。
設定で1. 刺激を抑える
- 画面の輝度を落とす。
- ナイトモードやブルーライトカット機能を有効にする。
- ダークモードを選択する。
- 就寝前はおやすみモードなどを活用し通知を自動で制限する。
このようにスマホの機能を活用し、光量と情報の刺激をコントロールすることで脳の平穏を守ります。
2. 充電場所を変える
寝床から手が届かない位置にスマホを置きます。カーテンの側に置けば、カーテンを開ける行動とセットにもできます。
ベッドでスマホを使う習慣は、脳に「ベッド=覚醒の場所」と学習させてしまいます。これは不眠の認知行動療法(CBT-I)でも重視されるポイントで、ベッドは「眠る場所」に限定することが重要です。
また、寝室環境を整え、寝具や室温を快適に保つことは、入眠をスムーズにし、結果として寝床でスマホを触る時間を減らす助けになります。5)
就寝先延ばしを防ぐ習慣化のコツ
寝るべき時間なのに、準備をせずにスマホなど見たりしてしまう就寝先延ばし。これは、意志の弱さではなく、心理的メカニズムによるものです。
If-Thenルールで行動を固定する
「22時になったらスマホを充電器に置く」「布団に入ったらスマホは触らない」といった単純なルールを決めます。週に数回から始めることで、無理なく習慣を定着させることができます。
代替行動で脳を落ち着かせる
スマホを置いた後の手持ち無沙汰を、別の心地よい行動で満たします。
- 数ページの読書
- 軽いストレッチや深呼吸
- 画面を見ない音声コンテンツ
視覚刺激を少なくすることが鍵です。
影響が出ているサイン
1週間の様子を振り返ってみましょう。以下のような兆候がある場合、寝る前のスマホ習慣が関わっている可能性があります。
- 布団に入ってから15分以上、目が冴えて眠れない
- 夜中に目が覚めた際、ついスマホを見てしまう
- 朝の身体のだるさや頭の重さを感じる
数週間環境を改善しても不調が続く場合、他の要因が隠れているかもしれません。その場合には睡眠外来や心療内科の受診も検討しましょう。
よくある誤解:ブルーライトだけ対策すれば十分か
ブルーライトカット製品だけ使っていれば安心、というわけではありません。
ブルーライトは確かに体内時計に作用しますが、画面を眺め続けることによる情報の刺激や、就寝時間の遅れによる影響も同等に大きいものです。 光量・刺激・時間管理の3つをセットで考えることが重要です。
まとめ:光・刺激・時間を減らせば睡眠は変わる
寝る前のスマホが睡眠に与える悪影響は「光」「刺激」「時間」の3つです。まずは就寝の30分前にはスマホを手放すところから始めましょう。
通知制限・画面調整・充電場所の変更を組み合わせ、朝の光で体内時計を整えれば、夜は自然に眠りやすくなっていきます。数週間取り組んでも不調が続くときは、一人で抱え込まず専門家に相談しながら、あなたに合う睡眠習慣を作っていきましょう。
参考
- 厚生労働省 | 令和5年 国民健康・栄養調査報告
- Chang AM et al.Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. PNAS. 2015.
- 厚生労働省 | 環境要因と睡眠に関する先行疫学研究の整理
- LeBourgeois, M et al. Digital media and sleep in childhood and adolescence. PEDIATRICS. 2017
- 厚生労働省 | 健康づくりのための睡眠ガイド 2023










