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監修者

栗山 宏美 医師
【経歴】麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 栄養学専門獣医師として栄養指導・手作りごはんのレシピ設計を行うろろの犬猫食堂を運営/フレッシュフード『わんこ想い』監修者
朝、ソファの上で丸くなって眠り続ける愛犬を見て、「こんなに寝ていて大丈夫なのかな」と思ったことがあります。かと思えば、夜中に突然起き出して部屋を歩き回り、「ちゃんと眠れていないのでは」と不安になることもありました。
犬の睡眠は人より長いと聞いていても、年齢や犬種によって違いがあるのか、寝すぎや寝不足は体調のサインなのか、はっきり分からないまま過ごしている飼い主さんは少なくないでしょう。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、犬の睡眠時間の目安を年齢別・犬種別に整理しながら、睡眠の質と健康の関係、そして今日から見直せる睡眠環境のポイントまでを丁寧に解説します。愛犬が安心して眠れる毎日を支えるために、まずは「犬の睡眠」を正しく理解するところから始めてみましょう。
犬の平均睡眠時間はどれくらい?年齢別の目安

犬が一日にどれくらい眠るかは、年齢によって大きく異なります。一般的に「犬はよく寝る動物」と言われますが、その背景には成長段階や体の使い方の違いがあります。成犬・子犬・老犬それぞれの睡眠時間を整理し、「正常な範囲」と「注意したい変化」を見極めるための考え方を解説します。
成犬の睡眠時間
成犬の場合、日本の飼い主400名を対象にした調査では、多くの犬が1日およそ12〜15時間眠っているという結果が出ました※1。人のように夜にまとめて長時間眠るわけではなく、夜の睡眠に加えて日中に何度も短い休息を挟むのが犬の一般的な生活リズムです。散歩や遊びでよく体を動かした日は少し長めに眠り、雨の日や運動量が少ない日はうたた寝が増えるなど、日ごとの変動があるのも自然なことです。毎日の生活の中で「この子はだいたいこのくらい眠る」という基準を把握しておくと、体調変化に気づきやすくなります。
子犬の睡眠時間
子犬は成犬よりもはるかに多くのエネルギーを成長に使っています。脳や神経、筋肉が急速に発達する時期であるため、一日に18時間前後眠ることも珍しくありません※2。起きている時間が短く、「遊んではすぐ寝る」を繰り返す様子を見て、寝すぎではないかと心配になる飼い主も多いですが、十分な睡眠は健やかな成長に欠かせない要素です。食欲があり、起きているときに元気に動いているのであれば、長時間眠っていても基本的には問題ありません。
老犬の睡眠時間
老犬になると、基礎代謝の低下や体力の衰えにより、再び睡眠時間が長くなる傾向が見られます。子犬と同様に18時間近く眠るケースもあり、日中にウトウトして過ごす時間が増えること自体は自然な変化です※2。ただし、これまでと比べて急激に睡眠時間が伸びた場合や、呼びかけへの反応が鈍くなった場合には注意が必要です。加齢に伴う変化だけでなく、痛みや病気が隠れている可能性もあるため、気になる様子が続くときは動物病院に相談すると安心です。
犬種によって睡眠時間は変わる?小型犬〜大型犬の違い

犬の睡眠時間を考えるとき、年齢だけでなく体の大きさや犬種のルーツも重要な視点になります。もともと猟犬として活動してきた犬種なのか、人と暮らす愛玩犬として改良されてきた犬種なのかによって、起きている時間の使い方や疲労のたまり方が異なるからです。その結果として、必要とする睡眠の長さや眠り方にも傾向の違いが生まれます。
小型犬・中型犬・大型犬に分けて、それぞれの睡眠傾向を整理していきます。
小型犬の睡眠傾向
小型犬は、比較的長めに眠る傾向があるとされています※1。トイプードルやチワワのような犬種は、室内で暮らすことが多く、物音や人の動きなどの刺激に敏感に反応しやすい特徴があります。そのため一回の睡眠は短くても、細かく目を覚ましながら休息を重ね、結果として一日の総睡眠時間が長くなりやすいのです。活発に見えても体が小さい分エネルギー消費が早く、こまめな回復が必要になる点も、小型犬の睡眠が長くなる理由の一つと考えられています。
中型犬の睡眠傾向
中型犬は、小型犬と比べると睡眠時間がやや短めになることがあります※1。柴犬やビーグルのような犬種は、もともと作業犬や猟犬としてのルーツを持ち、起きている間の集中力が高い傾向があります。活動している時間と休む時間のメリハリがはっきりしており、日中に十分な運動ができている場合、睡眠リズムは比較的安定しやすいといえます。ただし運動量が不足すると、昼間にうたた寝が増え、夜の眠りが浅くなることもあるため、生活環境とのバランスが重要です。
大型犬の睡眠傾向
大型犬は体重が重く、体を維持するためのエネルギー消費が大きいため、回復に時間がかかりやすい特徴があります。その結果として、睡眠時間は小型犬や中型犬と同程度、あるいはやや長くなる傾向が見られます※1。ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーのような大型犬は、運動後にしっかり休むことで筋肉や関節の負担を回復させています。長く眠っているからといって必ずしも運動不足とは限りません。体を回復させるための睡眠であるケースも多いことを理解しておくことが大切です。
食事やサプリメントは犬ごとに最適解がことなり、同じ犬でも年齢毎に変わるため、答えを見つけることがとても難しいです。ですが愛犬が安心して快適に過ごせる場所を提供し、良質な睡眠をとってもらうことは、わたし達飼い主ができるいちばん簡単な方法だと言えます。
わたしも我が家のわんこがお腹を出してぐっすり寝ている姿を見ると幸せそうだなぁ、わたしも幸せだなぁと感じます。
良質な睡眠で、愛犬も飼い主さまも一緒に幸せに過ごしてもらいたいなと思います。
犬の睡眠の質と健康:寝すぎ・寝ないときのサイン

犬の睡眠を考えるとき、単に「何時間寝ているか」だけを見るのは十分とは言えません。実は犬の眠りは、人と同じように浅い眠りと深い眠りに分かれており、そのバランスが健康状態に大きく関わっています。
犬の睡眠の大部分は浅いレム睡眠で構成されており、全体の約8割を占めるともいわれています。このレム睡眠中は、目を閉じていても周囲の音や気配に反応しやすく、いわば「うたた寝」に近い状態です。そのため、しっかりと体を回復させるためには、短時間でも質の良いノンレム睡眠を確保できているかが重要になります。
睡眠の質と健康の関係については、獣医学の分野でも注目されています。日本大学の獣医学部教授による解説では、睡眠の質が低下すると免疫機能が落ちやすくなり、感染症にかかりやすくなるだけでなく、胃腸の不調など全身のコンディションにも影響が及ぶ可能性があると指摘されています※3。つまり、睡眠は単なる休息ではなく、犬の体を内側から守るための基盤だといえます。
寝すぎのサイン
普段より明らかに眠っている時間が長く、起きているときも動きが鈍い状態が続く場合、体のどこかに負担がかかっている可能性があります。心臓や呼吸器の病気があると、少し動くだけでも疲れやすくなり、結果として眠っている時間が増えることがあります。また、関節の痛みや違和感があると、動くこと自体がつらくなり、横になって過ごす時間が長くなるケースも見られます。単なる「よく寝る子」との違いは、起きたときの表情や反応の鈍さに表れやすいため、日常の様子を丁寧に観察することが大切です。
寝ないときのサイン
反対に、なかなか眠れず落ち着かない様子が続く場合には、睡眠の質が下がっている可能性があります。環境の変化や騒音、留守番の増加などによるストレスや不安が原因で、リラックスできない状態に陥っていることも少なくありません。また、体のどこかに痛みや不快感があると、横になっても熟睡できず、何度も起きてしまうことがあります。夜間にうろうろ歩き回ったり、寝床を頻繁に変えたりする行動は、睡眠不足のサインとして注意が必要です。
行動の変化で分かるポイント
睡眠時間そのものに加えて、日中や夜間の行動の変化にも目を向けると、体調の異変に気づきやすくなります。たとえば、以前より元気がなく遊びへの反応が弱くなったり、夜鳴きが増えたりする場合は、睡眠の質が落ちている可能性があります。こうした変化が一時的なものであれば様子を見る選択もありますが、数日以上続く場合やほかの症状を伴う場合には、早めに動物病院で相談してみてください。
犬が快適に眠るための睡眠環境づくり

愛犬がぐっすり眠れるかどうかは、睡眠時間だけでなく、眠る環境の整え方によって大きく左右されます。
犬は人よりも体温調節が得意ではなく、周囲の音や明るさにも敏感です。そのため、飼い主が「少し涼しいかな」と感じる程度の空間を用意してあげることが、質の良い睡眠につながります。
ここでは温度や湿度の考え方と、寝床選びのポイントを順に見ていきます。
温度・湿度の考え方
犬が快適に眠りやすいとされる室内環境は、室温が26℃前後、湿度が50%前後を目安とした状態です※3。被毛に覆われた体を持つ犬は、暑さがこもりやすく、寝ている間に体温が上がりすぎると眠りが浅くなります。夏場はエアコンで室温を下げ、冬場は暖房による乾燥を防ぐために加湿を意識すると、呼吸もしやすくなります。季節に応じて空調を調整し、「暑すぎない」「乾燥しすぎない」環境を保つことが重要です。
関連記事:【医師監修】寝室の湿度は何%が理想?睡眠の質を高める湿度管理方法
寝床(ベッド)の選び方
犬は本能的に、安心できる場所で眠ろうとします。そのため、寝床は部屋の中央よりも、人の行き来が少ない隅やケージの中など、落ち着いて過ごせる位置に置くと安心感が高まります。明るすぎる場所やテレビの音が常に聞こえる場所では、浅い眠りが続きやすいため避けてください。
ベッドの硬さについては、体を優しく支えつつ、沈み込みすぎないものが向いています。柔らかすぎる寝具は体勢が安定せず、特に関節に負担がかかりやすい犬では疲れが取れにくくなることがあります。適度に反発力があり、体圧を分散してくれる素材を選ぶと、寝返りもしやすいでしょう。
清潔さも睡眠の質に直結します。犬の寝床は抜け毛や皮脂、よだれなどで汚れやすく、においが残ると落ち着いて眠れなくなることがあります。カバーを外して洗えるタイプのベッドを選び、定期的に洗濯することで、衛生面だけでなく快適さも保ちやすくなります。
飼い主の生活スタイルと犬の睡眠

最近の調査では、日本の飼い主の約8割が愛犬と同じ部屋で寝ているという結果が出ています※4。
飼い主の生活スタイルと犬の睡眠との関係について解説します。
同室睡眠のメリット・デメリット
犬の睡眠は、年齢や犬種だけで決まるものではなく、飼い主の生活スタイルとも密接に関係しています。とくに就寝時の過ごし方は、犬の安心感や睡眠の質に影響を与えやすい要素です。近年の調査では、日本の飼い主の多くが愛犬と同じ部屋で眠っている実態が明らかになっており、理想論だけでは語れない現実的な飼育環境が見えてきます。
同室で寝る家庭の割合
ドッグフード情報サイトによる調査では、日本の飼い主の約8割が犬と同じ部屋で就寝していると報告されています※4。この結果から分かるのは、「犬は別室で寝かせるべき」という考え方が必ずしも一般的ではないという点です。多くの家庭では、限られた住環境の中で、犬と生活空間を共有しながら睡眠を取っています。そのため、犬の睡眠を考える際には、現実的な暮らしに即した工夫が欠かせません。
同室睡眠のメリットとデメリット
犬と同室で眠ることには、いくつかの利点があります。まず、飼い主の気配を感じられることで犬に安心感が生まれ、分離不安の軽減につながりやすくなります。また、夜間に体調の異変やトラブルが起きた場合でも、すぐに気づける点は大きな安心材料です。
一方で、同室睡眠には注意すべき側面もあります。飼い主の寝返りや物音によって犬が目を覚ましやすくなり、浅い眠りが続く可能性があります。逆に、犬の動きやいびき、夜鳴きによって飼い主の睡眠が妨げられ、お互いに睡眠不足に陥るケースも考えられます。安心感と睡眠の質のバランスをどう取るかが、同室睡眠のポイントです。
夜間トラブルへの向き合い方
夜鳴きや吠えが見られる場合、単なる癖ではなく、不安や環境への不満、体調不良が背景にあることもあります。同室で寝ているからこそ、こうした変化に気づきやすい反面、対応を誤ると行動が固定化してしまいかねません。寝る直前まで強い刺激を与えない、就寝前のトイレや軽い運動で気持ちを落ち着かせるなど、夜に向けた生活リズムを整えてください。飼い主のベッドのすぐ横に犬専用のベッドを置く方法は、距離の近さによる安心感を保ちつつ、それぞれの眠りを守りやすい現実的な選択肢といえるでしょう。
まとめ:犬の睡眠時間は「量」と「質」の両方が大切
犬の睡眠は、単に長く寝ていればよいものではなく、年齢や犬種、生活環境に合った「量」と「質」がそろってこそ健康を支える力になります。成犬では一日12〜15時間、子犬や老犬では18時間前後を目安としつつ、その子なりのリズムを把握することが大切です。犬種による傾向や個体差を理解し、室温26℃前後、湿度50%前後の環境を意識することで、深い眠りをサポートしやすくなります。
また、寝すぎている、あるいはなかなか眠れないといった変化は、体調不良のサインとして現れることがあります。日々の寝顔や行動を観察し、小さな違和感に気づけることが、愛犬の健康を守る第一歩です。今日からぜひ、愛犬がどのような表情で眠っているかに目を向け、その子にとって心地よい眠りの環境を見直してみてください。
参考
※1 犬・猫の睡眠に関する飼い主調査 | ドッグフード情報サイト
※2 犬と猫にとって睡眠が大切な理由 | ぬまた動物病院
※3 犬が快適に眠るための環境づくり | ベネッセ いぬのきもち
※4 犬と飼い主の睡眠に関する調査 | ドッグフードの神様




