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監修者

森田 麻里子
医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家
2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016
「最近、夜眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝方に目が覚めてしまい、そのまま眠れない」──。そんな悩みを抱える40〜50代の女性は少なくありません。
厚生労働省の調査(令和5年国民健康・栄養調査)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の女性は40代で47.8%、50代で59.1%。更年期世代の約半数が慢性的な睡眠不足の状態にあると報告されています。さらに、経済産業省採択の実証研究(2024年)では、働く更年期世代女性の約70%が不眠の症状を有する可能性があることが判明し、更年期症状が重い人ほど不眠の程度も強く、両者の間には中程度の関連性が認められました。
しかし、同研究では、セルフケアや専門家のカウンセリングを取り入れた女性の93%が不眠症状の改善を実感しているという、希望が持てるデータもあります。
この記事では、更年期による不眠の原因をわかりやすく解説し、今夜からできる5つの具体的な改善法を紹介します。眠れない夜を我慢せず、自分の体と向き合うきっかけにしてみてください。
更年期に眠れなくなる3つの原因とメカニズム

7割もの女性が更年期に不眠症状を感じている原因はなんでしょうか。更年期に訪れるエストロゲンの低下による自律神経の乱れ、ホットフラッシュなどの血管運動神経症状による中途覚醒、心理的ストレスが主な原因と考えられています。それぞれのメカニズムを説明します。
1. エストロゲン減少が引き起こす睡眠リズムの乱れ
閉経前後5年間(いわゆる更年期)には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大きく揺らぎながら低下します。エストロゲンは自律神経を安定させ、深い睡眠を促す役割を持っているため、エストロゲンの分泌が乱れ、減ることで自律神経に影響し「入眠しにくい」「眠りが浅い」「夜中に何度も目が覚める」といった不眠症状が現れやすくなるという説があります。
2. ホットフラッシュが夜間覚醒を繰り返す理由
「寝ているのに突然ほてって汗が止まらない」「顔や首が熱くて目が覚める」──これが更年期特有のホットフラッシュ(血管運動神経症状)です。エストロゲンの低下によって自律神経が乱れると、体温調整がうまくいかず、体が必要以上に熱を放出しようとして発汗が起こります。
ホットフラッシュは、日中だけでなく夜間にも起こりやすいのが特徴です。発汗によって一度覚醒すると、体温が下がるまで再び眠りに戻るのが難しくなり、結果として中途覚醒を繰り返してしまいます。さらに寝具が汗で湿ることも不快感を生み、深い睡眠を妨げやすくなるのです。
3. 環境変化とストレスが不眠を悪化させる仕組み
更年期にはうつや不安を訴える女性が増加することが知られています。体調の変化に加えて、子どもの受験や独立、親の介護、職場での責任増加など、生活環境の変化によって心身にストレスを感じやすい時期です。こうしたストレスはうつや不安の一因になりますし、またうつや不安は不眠のリスクとなります。
厚生労働省の調査では、更年期症状を自覚していても医療機関を受診していない女性が40代で81.7%、50代で78.9%に上ることが明らかになりました(※1)。
「病院に行くほどではない」と我慢する人が多い一方で、実際にはストレスや不安が症状を悪化させるケースが少なくありません。
更年期の不眠タイプ別チェックリスト
更年期の不眠は「眠れない」という共通点があっても、原因や症状の出方は人それぞれです。主に以下の4つのタイプに分かれるので、自分の傾向をチェックしてみましょう。
入眠障害型:なかなか寝つけない
布団に入っても30分以上眠れないタイプです。ホルモンバランスの乱れで体温調整が難しくなり、脳が「眠る準備」に入れません。うつや糞の影響で、寝つきにくくなることもあります。
中途覚醒型:夜中に何度も目が覚める
ホットフラッシュや発汗、トイレの回数増加や心理的なストレス、緊張などが原因で、夜中に目が覚めるタイプです。睡眠の連続性が途切れることで「寝ても疲れる」感覚を覚えます。
早朝覚醒型:朝早く目覚めてしまう
起床予定時間よりも早く起きてしまい、そのまま眠れないタイプです。加齢による体内時計の前倒しも関係しますが、更年期ではホルモン変動やホットフラッシュによる不快感が、うつや不安の症状が影響していることが多いです。
熟眠障害型:ぐっすり眠れた感じがしない
睡眠時間は確保できているのに、朝スッキリしない、疲れが取れないタイプです。浅い睡眠が続くことで、日中の倦怠感や集中力低下が現れます。
今夜から実践できる5つの睡眠改善法

更年期に感じる不眠症状は生活習慣や睡眠環境を整える工夫をすることで、前述した調査のように十分に睡眠改善の見込みがあります。一つずつ確認していきましょう。
1. 睡眠リズムを整える規則正しい生活習慣
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることが最も重要です。朝起きたらすぐにカーテンを開けて朝日を浴びることで体内時計をリセットしましょう。週末の「寝だめ」は逆効果で、体内時計がずれてしまいますから、2時間以内に抑えるとよいでしょう。
理想は、7時間前後の睡眠を確保することですが、眠れないのに無理に布団に入るのはよくありません。眠くなってから布団に入ることを心がけましょう。
2. 適度な運動で深い眠りを促す
軽い運動は睡眠の質を高める効果があり、特にヨガやウォーキングがおすすめです。夕方の軽い運動は体温を一時的に上げ、寝る頃に自然と下がることでスムーズに入眠できます。
運動は毎日でなくても大丈夫です。週1回よりも複数回行うことが理想ですが、まずは運動習慣を作るところから始めましょう。
3. 寝室環境を整える温度・湿度・光の調整
寝室は温度18〜26度、湿度50〜60%が理想です。ホットフラッシュがある人は特に通気性のよい寝具を選びましょう。また、就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控え、ブルーライトを避けることが大切です。
寝具は、体圧を分散できるマットレスや清潔な寝具で快適な睡眠環境を整えましょう。
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4. リラクゼーション法で心身をリラックス
就寝前に深呼吸や筋弛緩法を取り入れると、副交感神経が優位になり眠りやすくなります。また、アロマテラピー(ラベンダーやベルガモットなど)も心の安定に効果的です。お気に入りの香りを寝室に取り入れて、眠る前の“リラックスタイム”を習慣にしましょう。
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5. 食事と入浴のタイミング最適化
夕食は就寝3時間前までに済ませ、脂っこい食事は避けましょう。入浴は就寝1〜2時間前に完了、38〜40℃のぬるめのお湯に15分ほどが理想的です。体温が緩やかに下がることで、自然な眠気を促します。
また、カフェインやアルコールは睡眠の質を下げるため、カフェインは15時ごろまでとし、アルコールの摂取は極力控えましょう。
医療機関での治療が必要な症状の見極め方

こんな症状があれば婦人科受診を
セルフケアをしても改善しない場合や、日常生活に支障を感じる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。特に次のような症状がある場合は、婦人科などへの相談が推奨されます。
- 2週間以上、不眠が続いている
- 強い不安感や抑うつ気分がある
- 日中の倦怠感や集中力低下が顕著
- ホットフラッシュや発汗で生活に支障がある
また、簡略更年期指数(SMI)を使用したセルフチェックも有効です。
ホルモン補充療法(HRT)の効果と適応
HRTは、減少したエストロゲンを補う治療法で、ホットフラッシュや不眠を改善する効果があります。医師の判断のもと、適応・禁忌を確認して行われます。日本産婦人科医会によると治療期間は一般的に5年程度が目安です。
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一般社団法人日本女性医学学会 ホルモン補充療法の正しい理解を進めるために
更年期不眠に効果的な漢方薬3選
体質に合わせて選ぶことで、心身のバランスを整えます。以下の3つが、更年期症状に対して処方される代表的な漢方薬です。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):不眠や不安を感じるタイプに
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):貧血や冷え、倦怠感があるタイプに
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):のぼせやほてりが強いタイプに
更年期不眠に関するよくある質問

多くの方が抱きやすい疑問について、Q&A形式で回答します。
Q1. 更年期の不眠はいつまで続きますか?
個人差はありますが、更年期は閉経の前後5年間といわれています。ただし、生活習慣を整えることで、症状の期間を短縮したり、症状を軽くしたりできます。
Q2. 市販の睡眠改善薬は使っても大丈夫?
ドラッグストアで購入できる睡眠改善薬は、一時的な不眠には有効ですが、長期使用は避けましょう。症状が続く場合は、婦人科や睡眠外来で根本原因を調べ、医師の診断を受けることが大切です。
Q3. 家族はどうサポートすればいい?
更年期の不眠は「気の持ちよう」ではなく、ホルモン変化による生理的現象です。家族が理解を示し、家事の分担や受診の後押しをすることで、本人のストレスが軽減されます。温かいサポートが、回復への大きな支えになります。
まとめ|更年期の不眠は改善できる|今日から始める第一歩
更年期の不眠は、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、ストレスなど複数の要因が関係しています。しかし、セルフケアを取り入れることで93%の女性が改善を実感したというデータもあります。
今日からできる第一歩は、「更年期に起こる身体の変化を正しく理解し、生活習慣を整えること」。まずは朝の光を浴び、深呼吸をして一日をリセットしてみましょう。少しずつ生活習慣と睡眠環境を整えることで、眠りのリズムは改善しやすくなります。
参考




