寒い季節になると足先の冷えが辛く、寝る前から布団の中でも靴下を履きたくなる読者の皆様も多いことでしょう…。慢性の冷え性に悩む方は、夏場でも足元のひんやりが気になり、通年で靴下を手放せないケースも少なくありません。足先の冷えは入眠時の体温調整を妨げ、寝つきの悪化や夜間の中途覚醒の原因にもなり得るため、靴下を履くことで一時的に温かさは得られると思いがちです。しかし、靴下を履いて寝ると体温のコントロールが上手くできず、かえって睡眠の質を下げるリスクがあるのをご存じでしょうか?本記事では冷え性の方必見!体温調節と睡眠の仕組みから靴下を履いて寝る是非、そして知って得する代替策まで詳しくご紹介します。
目次
そもそも寝る時に靴下を履く人は多い?

実際に靴下を履いた状態で寝る人はどれくらいいるのでしょうか?2019年のアンケート調査によると「冬に寝る時に靴下を履きますか?」という質問に対して、約3割が寝るときに靴下を履くと答えています。男女比は男性が25%、女性が34%と男性よりも女性の方が靴下を履いて寝る割合が高いことが伺えます。※1
靴下を履いたまま寝るのは足部や足先の冷えが主な理由ですが、実際にこの足先の冷えと睡眠に関してはどのような関係があるのでしょうか?ただ足先が冷たくて眠れない!という主観的なものだけでなく、身体的な理由についても見ていきましょう。
冷えは睡眠に悪い?睡眠と体温調節について
人体の手足には毛細血管が豊富に張り巡らされており、入眠時には「深部体温」と呼ばれる体の内部の熱を外へ逃がす働きを担っています。赤ちゃんの手足が眠くなるとポカポカするのは、体温が上がっているわけではなく、皮膚の毛細血管から熱を放出して深部体温を下げているためです。この過程で手足が冷えると、血行不良によって熱が外に出にくくなり、寝つきが悪くなることもあります。では、この血行不良を防ぐために靴下を履くのは最適な方法でしょうか?実は、睡眠中に靴下を履くことは必ずしもベストではなく、むしろNGとされていることが多いようです。なぜ冷えの傾向があっても靴下を履くのがベストではないのか、4つに分けて解説します。
靴下を履いて寝ることがNGとされる3つの理由
では、靴下を履くと睡眠を妨げてしまう主な3つの理由を解説します。
理由1:深部体温が下がりにくくなり、入眠を妨げる
上述した通り、靴下を履いたまま寝ると、深部体温を下げるために毛細血管から熱が外に逃げる仕組みを妨げてしまう恐れがあります。足先は温まっても、体内の熱が外に逃げずに深部体温が下がらないため、入眠を妨げたり起床時の熟睡感を妨げたりする可能性があります。
理由2:血液循環が悪化し、足先の冷えを助長する
深部体温以外にも、靴下による圧迫が血液循環の悪化につながりかねないという理由があげられます。通常の靴下では足の指を自由に動かしにくく、血液循環が滞ってしまうことでむしろ冷えてしまう可能性が高いのです。
理由3:蒸れによる不快感や肌トラブルのリスク
靴下を履くことによって熱がこもってしまうと、足先が蒸れやすくなります。蒸れによる不快感で安眠しにくい、長期的には水虫などの肌トラブルが起きやすいといったリスクが高いです。
どれも科学的な根拠は乏しい
理論上は、靴下を履いたまま寝てしまうと上手く深部体温の調整ができず、血流の悪化や蒸れなどにより睡眠の質が低下してしまうという話になります。しかし、「靴下を履いていない人よりも履いて寝た人の方が睡眠の質が悪い」という研究もほとんどないため、科学的な根拠があるとは言い切れきません。
寝る時の靴下が良いという研究もある
寝る時の靴下が睡眠の質を下げるリスクの科学的な根拠が乏しいと言われる一方で、逆に靴下を履いて寝た方がいいという話もあります。ベッドソックスと呼ばれる就寝用の靴下をはいたことで、入眠潜時の短縮や総睡眠時間の延長などがみられ、睡眠の質を改善したという研究結果があるのです。※2
この研究で利用されたベッドソックスとは、通常の靴下よりも少し締め付けが弱く、ゆったりとした形状で保温性の高いものでした。また、研究対象者は6名と少なく、対象者が冷え性に悩んでいたかどうかなどの条件は設定されていません。これらを踏まえると、睡眠時に「足先・足元を温める」ことは非常に重要ですが、それが「靴下」で良いかどうかは別途検討する必要があります。靴下以外で足先を温めるのがベストということになるでしょう。
締め付けの強い靴下や通気性の悪い素材は、熱放散を妨げて睡眠の質を低下させるおそれがあります。一方、保温性が高くゆったりとした「ベッドソックス」は入眠潜時を短縮するという報告もあります。
冷え性が強い場合は、靴下よりも足湯・レッグウォーマー・室温調整などで末梢循環を整えることが理想的です。根本的には運動・代謝・自律神経の安定を通じて「冷えにくい体質づくり」を目指すことが、質の高い睡眠と健康維持につながります。
どうしても足が冷えて眠れない…正しい対処法とは
「靴下を履いて寝ることは良くなさそうだが足先は温めたい、どうしたらいいの?」という疑問が出てきたと思います。今日からできる簡単な対策から、おすすめのアイテムまでご紹介しましょう。
対処法1:入浴や足湯で足先をじんわり温める
冷えの原因である血行不良に関しての有効な対策としてまず考えられるのは入浴です。入浴で足先から身体をゆっくりと温めることで血行が促進され、冷えをやわらげます。しかし入浴は時間を要しますし、場合によっては億劫な方もいるでしょう。その場合におすすめしたいのが足湯(足浴)です。足湯は冷え性の対策として有効なことが幾つかの研究からもわかっています。冷え性の若年女性を対象とした研究では、41℃のお湯で足首まで15分温めた直後に足指と手の皮膚温が有意に上昇したという報告がされており、有効な冷え対策と感がられます。※3
対処法2:ストレッチや運動を取り入れる
血行を良くするためにはストレッチや軽い運動などもとても効果的です。冷え性の若年女性を対象とした研究の中で、2週間の有酸素運動介入後に足先の暖かさや快適さが増し、指先や足先の冷え症状が有意に改善されたという報告もあります。また、これにより睡眠の改善も見られ起床時の熟睡感が向上するなどの改善結果も得られています。15分程度のジョギングや、少しハードルが高い方は普段よりも5000歩くらい多く歩いてみるなど取り組みやすいところから始めると良いでしょう。※4
対処法3:セルフマッサージをする
血流を促進するのにはマッサージをすることも重要です。足部のマッサージは自分でも簡単にすることができるので、セルフマッサージの習慣を取り入れると良いでしょう。健常成人を対象とした研究では、5分間の下腿マッサージを行った側の皮膚血流が有意に増加したという研究もあります。セルフマッサージの良いところは、男女差がなく短時間の簡単なマッサージでも全身の血流の循環に影響を及ぼすことです。※5
対処法4:レッグウォーマーや足先が開いた靴下を活用
レッグウォーマーや足先が開いた靴下を着用することで改善した臨床データはそれほどありませんが、足先の放熱を妨げないようにしつつ、足部を温めるという意味では対象方法としては検討しても良いでしょう。ヒーター機能がついているものもありますが、足部を温めるだけでなく、熱をしっかり逃すように足先は覆わないというポイントを押さえておくことが大切です。
対処法5:寝具や室温を最適に整える
寒い時期になると、身体の対策だけではなく環境の対策も非常に重要です。特に寒い室内であれば身体も冷えてしまいます。快適な冬場の室温環境は18℃〜22℃と言われており、エアコンや暖房を活用しながら室温調整しましょう。また、寝床内温度と呼ばれる布団の中の環境の温度も大変重要です。最適な温度は33℃程度と言われており、33℃を下回る場合は寝具を見直してみてください。
寝る前までに冷えを防ぐためのライフスタイル
冷え対策は寝る直前だけでなく、普段から血行を良くすることも大切です。生活習慣の見直しやちょっとした意識で冷え性の根本的な改善に対するアプローチになります。生活習慣の改善として3つポイントを紹介します。
自律神経のバランス調整と血流改善
自律神経のバランスは根本的な改善につながります。ストレスや生活習慣の乱れにより、自律神経のバランスが乱れると冷えの原因になりかねません。自律神経を整えるために、なるべくストレスを溜めすぎないこと、リラックスしなが自律神経を整える習慣をつけることなどが根本的な血行不良の改善につながるでしょう。
筋肉量・代謝の向上で運動で血行を促進する
冷えをなくすためには、基礎代謝を向上させることもポイントです。基礎代謝が高いほど血流がしっかりと届きやすくなるため、日頃から簡単な筋力トレーニングなどを行いながら習慣化してみましょう。スクワットなど手軽に始められる運動や、大きい筋肉を動かす筋力トレーニングを習慣化させるのもおすすめです。
食事や飲み物で内側から温める工夫
飲み物で体を温めるということも、日常的な習慣の中に取り入れてみると良いかもしれません。体を温めやすいショウガを使った飲み物やハーブティーなどでリラックスする習慣を取り入れると効果的です。ただし、カフェインを含む飲み物はカフェインによる覚醒作用で入眠が妨げられること、そして血管を収縮させ冷えにつながりやすいことを踏まえて、飲む時間帯や量をコントロールしてください。
まとめ:多角的なアプローチを組み合わせることが重要
冷え性対策として靴下を履いて寝る方法には、一時的な温かさを得られる一方で睡眠の質を低下させるリスクがあることがわかりました。深部体温を適切に下げる仕組みを妨げ、血行不良や蒸れによる不快感を招く可能性があるため、靴下だけに頼るのは避けたいところです。しかし、足先の冷え自体を無視するわけにもいきません。そこで最も効果的なのは、ひとつの対策に固執せず、多角的にアプローチすることです。
・運動をなるべく取り入れて基礎代謝をあげながら、そのケアもかねてマッサージやストレッチで足を重点的にほぐす
・ゆっくりと入浴する時間は取れないが、足湯をしながらハーブティを飲んでリラックスする習慣を取り入れる
といったように、自分に合った対策を取り入れながら根本的な解決を目指すことが重要です。
実践すれば、靴下だけに頼るよりも効果的な冷え性対策が可能です。睡眠の質向上は一朝一夕では叶いませんが、これらの方法を少しずつ取り入れて習慣化していけば、快眠への近道となるでしょう。ぜひ今夜から自分に合った対策を試してみて“冷えに困らない快眠”の実現を目指しましょう!
参考
- ※1 ウェザーニュース「寝るときに靴下を履いて良いのか、悪いのか?」
https://weathernews.jp/s/topics/202001/290155/
- ※2 Yelin Ko 1, Joo-Young Lee J Physiol Anthropol. 2018
Effects of feet warming using bed socks on sleep quality and thermoregulatory responses in a cool environment
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29699592/
- ※3 Kaori Kono et al . 2023
※参考文献:The impact of a foot bath for peripheral circulation in young women with Hiesho, a cold-sensitivity constitution
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vascfail/7/1/7_29/_pdf
- ※4 Fumio Yamazaki et al.2023
A two-week exercise intervention improves cold symptoms and sleep condition in cold-sensitive women
- ※5 Luis Monteiro Rodrigues et al . 2020
Lower limb massage in humans increases local perfusion and impacts systemic hemodynamics










