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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
「寝る時になると息苦しい」「横になると呼吸がしづらい」「眠りかけると苦しくて目が覚める」。毎晩のように苦しさが続くと心身の負担も大きく、何か重い病気ではないかと不安になりますよね。
原因は心臓や呼吸器の病気だけでなく、寝姿勢や枕の高さ、ストレスによる自律神経の乱れなど、身近な生活要因が関係していることもあります。自己判断で済ませず、原因から考えてみましょう。
この記事では、寝る時に息苦しくなる主な原因を整理し、自宅ですぐ試しやすい対処法を解説します。あわせて、早急に医療機関へ相談すべき危険なサインも整理しました。原因の見極め方と、今できる改善策を一緒に確認していきましょう。
寝る時に息苦しいと感じる主な原因
寝る時に息苦しいと感じる原因として、大きく病気と生活要因があります。夜間や早朝に呼吸が苦しくなるのは、睡眠中の自律神経、ホルモンの変化、体位などが関与していると考えられます。ご自身の症状がどのパターンに近いかを確認してください。
原因1. 睡眠時無呼吸症候群
眠っている間に気道が塞がれ、呼吸が止まる・浅くなる状態です。本人が気づきにくいのが特徴です。
- いびきをかき、途中で呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 息苦しさ(窒息感)で中途覚醒し、眠りかけると目が覚める感覚がある
- 十分寝たはずなのに、日中の強い眠気や起床時のだるさが続く
原因2. 呼吸器疾患|気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
夜間から早朝にかけて、気道が収縮しやすくなるため症状が悪化します。
- 夜間は体を休める「副交感神経」が優位になり、気管支が狭くなる
- 「ぜいぜい」「ひゅーひゅー」という喘鳴(ぜんめい)を伴う(気道が狭くなっているサイン)
- 咳が止まらず、息を吐き出すのが苦しいという特徴がある
原因3. 循環器疾患|心不全など
寝た時に息苦しいと感じるのは、心不全のサインの一つです。
- 心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液をうまく送り出せない状態である
- 横になったときに、下半身の血液や水分が肺に溜まりやすくなる
- 横になると息苦しく、起き上がって座ると少し楽になる(起坐呼吸)
原因4. 自律神経の乱れ・ストレス
眠り際の息苦しさの背景に、神経が過敏になった状態があるかもしれません。
- 緊張をつかさどる交感神経が過剰に働き、体が休まらない
- 入眠時に動悸や胸のざわつき、息苦しさを感じやすくなる
- 眠れないことへのプレッシャーがさらに神経を過敏にする
原因5. 鼻詰まり・アレルギー
口呼吸になることで、気道への直接的な刺激が生じます。
- 鼻づまり、副鼻腔炎、花粉症やハウスダストなどのアレルギーがある
- 睡眠中に口呼吸となり、喉が乾燥して違和感や息苦しさにつながる
原因6. 寝姿勢や寝室環境があっていない
病気ではなく、物理的な負担や寝室の環境が呼吸を妨げているケースです。
- 仰向け寝によって舌の付け根が落ち込み、気道が狭くなっている
- 枕の高さが合わず、首が反ったりあごが引けたりして気道に負担がかかっている
- 寝室の換気不足や極端な乾燥、ほこりによって呼吸がしにくくなっている
危険な症状と受診の目安
「病院へ行くべきか」の判断基準を知っておくことも大切です。症状の組み合わせに注目し、サインを見逃さないようにしてください。心不全やCOPDが悪化すると命に関わることもあるため、目安を知っておきましょう。
すぐ救急要請を考えたい症状
以下の症状は、命に関わる緊急性の高いサインです。ためらわずに救急車を呼んでください。
- 急な息切れ、突然の激しい呼吸困難がある
- 会話しづらいほどの息苦しさや、胸の中央が締め付けられるような胸痛を伴っている
- 意識がもうろうとする、唇や爪の色が紫色になっている(チアノーゼ)
早めに受診したい症状
救急車を呼ぶほどではなくても、以下のような状態が続く場合は放置しないでください。
- 横になると毎晩苦しく、体を起こして座ると少し楽になる(起坐呼吸)
- 足の甲やすねに強いむくみがある
- ここ数日〜1週間で2〜3kgの急激な体重増加がある
- 家族からいびきや無呼吸を指摘された、日中の眠気が強い
受診先に迷った時の考え方
症状の中心がどこにあるかを知ることで、適切な診療科を選択できます。
- 咳や喘鳴など呼吸器症状が中心なら「呼吸器内科」
- 横になると苦しい、むくみや胸痛を伴う場合は「循環器内科」
- 睡眠中のいびきや無呼吸が疑わしければ「睡眠外来」や「耳鼻咽喉科」
- 判断に迷う場合は、まず身近な「内科(かかりつけ医)」を受診して相談する
【自宅でできる】息苦しいときの対処法
救急や早急な受診の目安に当てはまらない場合、今夜から試せるセルフケアがあります。体位の工夫や環境調整は、呼吸の負担を減らす効果が期待できます。睡眠中の神経過敏を和らげるためにも、環境を整えてください。
対処1. 横向き寝や上半身を少し起こす
体位を工夫することで、気道の確保と肺への水分貯留の軽減を図ります。
- 仰向けで苦しさが出やすい場合は、「横向き寝」をして気道の確保を試みる
- クッションや丸めたタオルを背中に当て、上半身を少し起こして寝る
- 上半身を起こすことで、気道も通りやすくなり呼吸が楽になる
対処2. 枕の高さと寝具環境を見直す
寝具由来の物理的な圧迫を取り除くことで、気道をまっすぐに保ちます。
- 枕が高すぎるとあごが下がり、首が曲がって気道が圧迫され、いびきの原因になる
- 逆に低すぎても、あごが上がり口呼吸になりやすい
- 「枕の高さが合わない時の見分け方」や「横向き寝しやすい寝具の選び方」を参考に、寝姿勢を見直す
対処3. 換気や湿度を整えて呼吸しやすくする
寝室の空気環境を整え、気道への刺激を減らします。
- 寝る前に寝室をしっかり換気し、こもった空気やほこりを逃がす
- エアコンの風が直接当たらないようにし、加湿器で適切な湿度(40〜60%)を保つ
- 口呼吸による喉の乾燥を防ぐため、就寝前の水分補給や就寝時用マスクの着用を試す
寝る時の息苦しさに関するよくある質問
寝る時の息苦しさに関連する、よくある疑問に対する考え方と仕組みについて回答します。
Q1. 心不全はどのような症状がありますか?
心臓の機能低下により、全身の血液循環が停滞することが特徴です。
- 横になると呼吸が苦しくなり、起き上がって座ると楽になる(起坐呼吸)
- 足の甲やすねを指で押すと戻らないような強いむくみが出る
- 短期間(数日〜1週間程度)で急激に体重が増加する
- 坂道や階段を上るなど、軽い動作でも息切れが起こる
Q2. 睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状は?
睡眠中の気道閉塞により、睡眠の質が著しく低下する疾患です。
- 大きないびきをかき、途中で呼吸が止まる
- 十分寝たはずなのに残る起床時のだるさや頭痛がある
- 日中の強い眠気や集中力の低下を感じる
- 日本睡眠学会の基準でも、在宅での簡易検査で呼吸イベント(無呼吸など)を測定し、診断・治療へつなげることが推奨されています
Q3. 妊娠中に寝ると息苦しいのはなぜ?
体の構造的な変化とホルモンの影響が主な原因です。
- 大きくなった子宮が横隔膜を押し上げ、肺が圧迫される
- 妊娠によるエストロゲンやプロゲステロン(女性ホルモン)の分泌増加に伴い、気道にむくみが生じやすくなる
Q4. 逆流性食道炎でも寝るときに息苦しくなりますか?
胃酸の逆流が気道周辺を刺激することがあります。
- 逆流性食道炎があると、横になったときに胃酸が食道や喉に上がりやすくなる
- 胃酸の刺激により、胸やけや喉の違和感が生じる
- その刺激が気管支に及ぶと、夜間や早朝の咳・息苦しさ(気管支喘息の悪化など)の原因になる場合がある
寝る時の息苦しさは原因を切り分けて早めに対処しよう
寝る時の息苦しさは、心臓や呼吸器の疾患だけでなく、寝姿勢や寝室環境、自律神経の乱れなど様々な原因で起こります。
まずはご自身の症状を観察し、仰向け寝を避けたり、寝室の換気を行ったりと、今夜できる体位調整や環境改善を試してください。
しかし、 急な呼吸困難や胸の中央の痛み、足のむくみや急激な体重増加を伴う息苦しさがある場合には、放置しないようにしましょう。また、睡眠中の無呼吸などがある場合には検査も検討してください。関連記事も参考にして、安全で快適な睡眠環境を整えていきましょう。




